追跡2
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エスベー平原で一夜を明かした俺とウサ正宗は、朝食を簡単に済ませると、またストームドラゴンの探索を再開した。
昨日からエスベー平原では、あまりモンスターを見掛けなかった。
俺たちは木等の障害物が少なくて見通しの良い平原に居るハズなのに、そもそも生き物と遭遇しないのは少し異常であった。
どうやら、上位のモンスターであるストームドラゴンの存在に、ビビッて逃げ出してしまったようである。
俺達が傷付けた血の痕跡など特に見付かる訳でもなく、広い平原を闇雲に探しているのは非常に効率が悪かったのだが、他に手段が無かったのである。
ストームドラゴンはそれなりの巨体であるので、木々に隠れたとしても、完全にはなかなか隠れられないハズだ。
そういう隠れられそうな岩陰などのポイントを重点的に探索したのだが、空振りに終わった。
その日の午後からは捜索範囲を更に広げ、南に進んだが相変わらず何も見付からずでその日は終了した。
そして翌日、あまりにストームドラゴン発見に繋がる情報が見付からなかったので、どうやら既にここには居ない可能性が高くなっていた。
こういう時にこそ、冒険者ギルドの人員を投入したりしたら人海戦術であっという間に結果が分かりそうなのだが、ディナントの町の冒険者達はへタレたりして使えず、他の戦力は既にガタガタで町の守備に手一杯、俺達以外にこんな危険なストームドラゴンの追跡なんてやるヤツが居なかった。
「今更だが、出来れば探索だけでもサポートしてくれる人間くらい欲しかったな。」
「現状では、頼める人材がディナントの町には居ないのではありませんか?」
「そうなんだよな、それが分かっていたし、何よりも信頼出来そうに無いヤツしか居なかったんだよ。
そういや、Aランク冒険者のアーガイルとかはどうしたんだろ?
ヤツのパーティーならロックドラゴンの件でも頑張っていたから、他の冒険者に比べたらまだ信頼出来そうだが。
出発当日の情報収集の時も、ディナントの町で見かけなかったんだよな。」
「そういえば、そうでしたね。
冒険者ギルドも吹き飛んでしまい、冒険者達の動向はより掴みづらいのは感じていましたが、彼らがどうしていたのか情報がありませんでしたね。」
「そうだよ、仮にもAランク冒険者なんだからストームドラゴンと戦ったなら、もっと活躍したとか死亡したとかの情報なんかが入ってきても良さそうなんだが、特に何も無かったんだよな。」
「そもそも、ストームドラゴンと戦い活躍した冒険者は私達のみで、後は王都からやって来た隊長率いる部隊の皆さんが善戦されたくらいですね。
他の方は散発に攻撃して蹴散らされるか、逃げ惑う方が大半でしたので。」
うーん、初撃のブレスで即死してやられたか?
一応ロックドラゴン装備を着けていれば、それなりに防御出来そうだったが。
王都の盾兵士諸君は悲惨な状態になったが、ロックドラゴン装備の防御力なら防具だけでも無事に残りそうだし。
「まあなんにしろ、アーガイルがどうなっていようが、ディナントの町の再建は大変だな。
前回のロックドラゴンの被害に比べれば被害は圧倒的に少ないが、防壁を簡単に越えられてしまったしな。あのブレスの威力だ、安全な場所が町に存在しないといわれたも同然だ。
事後の対応やら防衛体制の見直しで忙しそうな時に、人手を貸してとはなかなか言えないのは仕方ない。」
「そうですね。
それに私達ほど準備に時間を掛けずに身軽に動けませんしね、なんとかストームドラゴンの傷が癒えない内に追い付きたいものです。」
その後は、黙々と足を動かして懸命にストームドラゴンの探索を続けたが、まるで足取りは掴めずに時間だけが過ぎていった。
時折上空にも気を配っていたのだが、これほど見付からないのであれば、このエスベー平原には既にいないものとして次の探索場所をウサ正宗と相談した。
地図を確認しながら、どういうルートで探索するかを決める。
「エスベー平原の北にはディナントの町、西にはそのまま平原が続いていて、東には林があってその奥に森林地帯、南が渓谷になっている。
ストームドラゴンが真っ直ぐ一直線に逃げたのならこの南の渓谷が一番怪しいが、体の傷を癒すならば食料が豊富な東の森林地帯も怪しい。距離も近いしな。
西は探索が楽だが、休憩するのに向いている地形が少ないので一番可能性が低そうだ。」
「そうですね、まずは順当に南の渓谷に行きましょうか。
渓谷の奥にはエデッサ山が有りますので、そこに竜の巣があったとしてもおかしくはないでしょう。」
「じゃあ、このまま南に向かってゴーゴーだ。」
そして半日ほど費やして、探索しながらテクテク移動してエスベー平原を抜け、翌日になってようやく目的地の渓谷までやってきた。
この渓谷はカヌーとかで川下りとかしたら、実に楽しそうな絶景ポイントがいくつもある場所であった。
幾つかの川の支流が合流したりして流れが変わったりしていたり、地形が結構複雑になっているので実際に川下りするなら事前の情報が必要そうだ。
要所要所で滝もあったので、コース設定をうまくしないと滝つぼに真っ逆さま。溺死コースもありそうな感じだった。
川を渡るには、そのまま切り立った崖のような場所から渓谷の川辺まで降りていって、浅くて流れが遅い所からジャブジャブ泳いで川を頑張って横断するか。それとも大木がそのまま切り出されて簡単に固定されただけの橋を渡るか。
後は自分でロープを向こう岸まで届かせてロープアクションをするか。
そのどれかしか無かったので、俺らは丸太橋を選んだ。
時間的にこちらの方が圧倒的に早いからである。
「うおおっ!!
なんか手すりも無いのに、こんな高さ60メートルクラスの丸太橋なんかを渡る事になるとは。
大自然を舐めていたぜ。」
「ご主人様、周囲も気をつけてください。
橋の上は辺りからよく見えますので、モンスターの襲撃があるかもしれません。」
おいおい、こんな落ちたら命の危険を感じる高さの、適当な作りの橋を渡るだけでもシンドイのに、モンスターも有りとかどんだけだよ。
丸太橋と言っても枝を打ち払って地面に固定しただけの大木であり、日本に居た時には存在しなかったあまりの適当な作りに呆れていたが、これしかないのだから仕方ない。木はかなりの大木だから重量はそんなに気にしなくてもいいんだが、丸太橋の上を移動していると微妙に動くのだ。
俺は震える小鹿の様に怯えながら、四つん這いで橋を渡っているのに、ウサ正宗は平然と二足歩行で丸太の上を歩く。
時折、渓谷から涼しい風が吹く。
俺には恐怖でしか無いのだが、まるでウサ正宗は動じない。
うーーん、度胸が違うというか格が違うというか。
情けなくなってくるが、俺には紐無しバンジーの方が嫌だ。
そんな風に、苦戦しながらも丸太橋を渡っていったのだが。
「後いくつあんだよ!!!」
「まだ渓谷の半分も抜けていませんから、丸太橋が続くでしょうね。」
この渓谷は本当に地続きで繋がっていない地形なので、この適当な丸太橋が至る所にあった。
例えば、洋菓子屋でホールケーキを買うと8等分位に切り分けるのが普通だ。だが、32等分にされたらどうだろうか。
32分の一のすんごい小さく薄いケーキになるが、この渓谷も32分割にされてしまったホールケーキと同じ様な地形なのである。
規模がデカイのと、切り分けられた間には川が流れていたりするくらいの差とがあるだけだ。
ちなみに丸太橋の傍には予備と思われる物も置いてある時があった。
やっぱ壊れたり、流されたりするんだろうか。
「キューーーー!!」
甲高い音を上げながら、丸太橋にいた俺達を襲ってくるモンスターもやはり現れた。
空を飛行するタイプのモンスターで、グレートアウルという大きな鳥である。
13羽あまりの群れで襲い掛かってきたが、襲ってきたタイミングが橋の真ん中付近だったので、その場で戦う事になった。
俺は橋の上での戦いにブルっていながらも、ボウガンで応戦していた。
大半はウサ正宗が投げナイフをひょいひょい投げて次々に墜落させていったので、なんとか撃退できた。
倒したグレートアウルの大半が、丸太橋の下の川に落下していったので、回収は不可能であった。
2羽ほどは橋の対岸に落ちてくれたので、それを回収した。
今夜のご飯は鶏肉になりそうだな。
その後は特にモンスターの襲撃も無く、渓谷を順調に進んでいった。
流石にこのあたりにはストームドラゴンの痕跡は皆無だったが、一応ストームドラゴンが襲ってくるかもしれないという前提で警戒して進んだので、時間がかかった。
そして、渓谷を半ばあたりまで進んだ所で日が沈んできたので、野営に適した場所を見つけてそこで夜を過ごすことになった。




