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感謝の在り方

 何言ってくれちゃってるの、このおっさんは。

 ギルドの中にいる冒険者達は一斉に静かになった。その視線が俺とウサ正宗に集まっている。


「今しばらくブラックウルフはここに置いておくからじっくり見てくれ。 

 俺からは以上だ。

 解散してくれ。」


 そういうと俺達の方にギルドマスターがやってきて。


 「報酬なんかの話しがある。

 悪いがもう一度さっきの部屋に来てくれ。」

 「おいおい、今のはなんだ?」

 「わかっておる。それも含めてだ。いいから来い。」


 そういわれて仕方なく先ほどの応接室に行く。

 この野郎、どうしてくれようか。


 「まずは、ブラックウルフの報酬についてだ。

 本来は冒険者一人頭の報酬はランク毎に報奨金を設定していたが、お前さん達だけで倒しちまったからな。

 特別報酬として、大金貨2枚出そう。2000000Gだ。

 これにはグレイウルフの分の報酬もまとめてある。」


 この金額が妥当なのかわからないが、初めて冒険者ギルドの仕事で大金が稼げたな。

 まあ、仮に討伐隊が結成されるほどの相手に対して、10000Gとかの報酬じゃ誰も仕事しなくなるわな。

 命を対価に掛けているのだからそれ相応じゃなきゃ話しにならない。


 「それとお前さんのギルドランクを上げる。

 これだけ大量の数のグレイウルフとボスのブラックウルフを狩ってきたんだ。

 Bランクでもいいくらいなんだが、ギルドの規則でな。

 Cランクまでしかギルドマスター権限でも上げられん。」

 「俺のギルドランクか。

 正直まるで魅力が無いな。むしろいらん。

 冒険者ギルドは基本的に冒険者同士の争いには不干渉なんだろ?

 今回のブラックウルフの件で、討伐隊に参加しなかった理由の一つは他の冒険者に後ろから刺されたくなかったからだ。

 はっきりいってCランク以下なんて足でまといになる上に、グレイウルフと戦っている最中にウサ正宗を狙って背中を攻撃されるかもしれないとか、どんだけ難易度高いんだよ。

 Cランクになれば緊急クエストの時に、ギルドの命令があれば強制参加させられる義務を負うんだろ?

 また同じようにウサ正宗を狙うバカ共と組まされる危険をわざわざ誰が好き好んで負うんだ?」

 「・・・・そうか、お前からしてみればギルドに評価されてランクが上がる事よりも、相棒のウサ正宗が大事なのか。

 昔の時代、お前の様な冒険者ばかりだったら、もしかしたらラビッター族もここまで数を減らさずに済んだのかもしれんな。」 


 なんだかギルドマスターはしんみりしてしまった。

 つーか、マジでギルドランクとかどうでもいい。


 「じゃが、ここの町でならそのランクでも通用するかもしれんが、他の町に行けば侮られてまた騒動の種になりかねないぞ。

 毎回ラビッター族目当ての輩を返り討ちにするつもりか?」

 「襲ってくるなら返り討ちにするだけだが。余裕があれば捕まえるが、無ければ殺す。

 それだけだ。」


 実際そうなるだろう。

 訓練している時も時折ちょっかい掛けてこようとした奴はいたからな。


 「だが、そんな事をしていたらその内お尋ね者になりかねんぞ?

 一応余計なちょっかいを掛ける冒険者の数を少しでも減らす為に、1階でお前達がブラックウルフを討伐した事を発表したんだからな。

 あれでこの町の冒険者達は少しは自粛してくれるだろ。」

 「おいおい、こちらからケンカを吹っかけているなら問題だろうが、相手から来るんだぜ?

 しかも俺達は常に被害者だ。

 そんなのおかしいだろ。」

 「どうであれ、お前さんの周りには騒動が絶えない。

 あまりに騒動が起きすぎると、町から追い出される事になっても仕方ないじゃろ。

 裏ギルドは厄介者扱いだったが、お前さん達も違う意味で厄介であるのは間違いないのだからな。」


 おいおい、苦労してブラックウルフを討伐してきた相手に対する態度かよ。

 確かに俺らは町中で戦ったりしたが、全部正当防衛だぜ。

 なんだかがっかりした。


 「おっさん、いい加減にしろよ。

 正直この町がどうなろうと俺には関係無かったのに、命がけでブラックウルフを討伐してきたんだぜ。

 それなのに、そんないいがかりを付けられるとはな。

 つくづくこのギルドには失望したよ。

 どうしても、俺を強制的にランクアップさせたいならギルドなんざ辞めてやらあ。」


 そういって机の上にあった報酬の袋を掴み、冒険者ギルドからさっさと出て行った。

 もちろん一階のブラックウルフの上半身も回収した。

 あのままギルドマスターとしゃべっていると怒りのあまり殺してしまいかねん。


 「あーーあ、なんだかなー。

 ブラックウルフを討伐したのは自分の為だ、って思っていたのに結構俺は周りの人間を大事に思っていたらしい。

 別に感謝されたくてやった訳じゃなかったはずなのに、なんだか悔しいぜ。」

 「そうですね、ご主人様はお優しいです。

 自分に襲いかかって来る相手は殺されても文句は無いはずです。

 なのに命の危険がなければなるべく生かそうとしています。

 それは誰からも責められないことです。

 しかし、あの冒険者ギルドのマスターはなんだかご主人様に私を手放すように仕向けている様な会話の流れでしたね。」

 「ん?そうだったか?

 なんだかいらついたのは事実だが。」

 「そうですね、まず私が居ることで騒動が起きているのは事実でしょう。

 ラビッター族そのものが希少価値があり、高値で取り引きされている事もあるとか。

 それで、私を狙う輩が居る訳ですが、そういう力で強引にどうにかしようとする輩に対して遠慮しなくてはならないなんて決まりはありません。

 実際ゴロツキ連中を森で倒してから門で報告した時にも尋ねましたが、なに一つ問題視していませんでした。

 それに水晶で犯罪の有無を詰め所で確認されましたが、こちらも問題ありません。

 むしろ、町の厄介者を倒してくれて感謝されてましたよね?」


 確かに当時の門にいた兵士たちは愛想が良かったな。


 「なので、返り討ちについては問題ないかと。

 そもそも襲ってくる相手は犯罪者なんですから、手加減しろとかナンセンスです。

 そして騒ぎが起きる原因であるからこの町を追放されるなんてのも現実的とはいえませんね。

 そんなのがまかり通るなら、さっさと裏ギルドとかのゴロツキ連中が排除されてなくてはおかしいでしょうに。

 別にラビッター族だからといって町に入るのを規制されている訳ではありませんしね。」


 確かにそうだ。

 優先順位としてはどうなるか分からないが、少なくとも俺らは正当防衛以外で自分から人間に攻撃を仕掛けた事は無い。そして水晶のチェックにも問題なかった。

 そんな人間よりも先にどうにかするべき相手はたくさんいるだろうに。

 まああんなクズの言う事は忘れて宿に帰るか。


 そして竜の息吹亭に辿り着き、一階の酒場のドアを開けて中に入ると


 「おーー、今日の英雄が帰ってきたぞーー。」

 「おっ、本当だ。」

 「ラビッター族連れているから、そうだろ。マジありがとなー。」

 「ありがとー、これで町の人達も安心するよ。」

 「うん、英雄に乾杯だ、はーーっはっは!」


 そういって既に酒を飲んで出来上がっている状態のおっさんやおばさんが絡んできた。

 どうやらここにいる人達は、俺達がブラックウルフを倒した事を知っているみたいだ。

 口々にありがとうと感謝の言葉を投げかけてくる。

 ミリーもありがとう、と一声。


 「ウサ正宗、どうやら俺は間違って無かった様だ。」

 「はい、ご主人様。」


 その日は1階で初めて食事を取ってみんなでワイワイ騒いだ。

 

 

お金や地位や資格よりも、たったひとつの感謝の言葉と気持ちが大事な時もある

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