親友と幼馴染
その週末、翔太から突然呼び出された。
「なあ蒼、お前、最近美咲と仲良いよな」
公園のベンチに座るなり、翔太が切り出した。
「まあ、図書室でたまに話すくらいだけど」
「それで十分だよ。美咲、すげえ嬉しそうだって真昼が言ってた」
「真昼が?」
「真昼は美咲の親友だろ。で、俺は真昼と、まあそのなんだ」
翔太が急に言いよどむ。
「なんだよ」
「付き合ってんだよ、俺たち」
「は?」
思わず大声が出た。
「お前、真昼と付き合ってんの?」
「わり、言うタイミング逃してた」
翔太が頭をかく。
「で、その真昼から聞いたんだけどさ」
翔太は少し真面目な顔になって言った。
「美咲、ずっと前から蒼のこと好きだったんだって」
「……は?」
今度こそ声が出なかった。
「一年のときからずっと。いや、もっと前からかも。真昼が言うには中学の頃かららしい」
「そんなわけ……」
「あるんだよ。でも蒼があまりにも美咲を避けるから、嫌われてるのかと思ってたらしい」
避けてた。それは確かだ。でもそれは好きすぎて近づけなかっただけで、嫌いなわけがなかった。
「美咲、結構悩んでたんだぜ。自分に魅力がないのかなって」
「そんなわけないだろ」
「だろうな。でも蒼が自分から話しかけてこないから、そう思ってたらしい」
翔太は空を見上げて言った。
「お前さ、自分に自信なさすぎなんだよ」
返す言葉がなかった。
「美咲は確かに美人で頭もいいけど、普通の女の子なんだよ。好きな人の前では緊張するし話しかけてもらえなくて落ち込んだりする、普通の」
俺は、美咲の何を見ていたんだろう。
幼い頃からずっと一緒にいたのに、いつからか俺は彼女を遠い存在だと思うようになっていた。それは美咲が変わったからじゃない。俺が勝手にそう思い込んでいただけだ。
「……それで、その『好きな人』ってのは」
「お前以外に誰がいるんだよ」
翔太が呆れたように言う。
「図書室で隣に座ってるやつが誰だと思ってんだ。美咲が他のやつにあんなに話しかけるかよ」
言われてみれば、確かにそうだ。美咲は普段あまり男子と話さない。というか、話しかけられても素っ気ない対応をすることが多い。
「ついでに言うと、美咲が星の話をするのもお前だけだってよ」
「星の話?」
「ああ。美咲にとって星は特別なんだろ。それを共有できる相手は、本当に信頼してる人だけなんだと」
そういえば、小学校の頃、美咲が初めて俺を秘密の星見スポットに連れて行ってくれたときのことを思い出した。
「ここはね、蒼くんだけに教えるんだから」
あのときの彼女の言葉の意味を、今になってようやく理解した気がした。




