第4話
俺は桔梗と続けて囲碁を打ち続けていた。勝負は先程と同じく九子のハンデを貰っている。さっきは適当に石を置くだけだったが、今度は石を囲うことを考えながら打つようにしている。
「なんとなくだけど感じは掴んでいるのかしら?」
「これで良いのか分からないが宇宙、世界だっけ? とりあえず自分の場を作る事は意識してる」
どうやら正解に近かったのだろう、俺の答えを聞いた桔梗は笑みをこぼしながら石を打っていた。
まさかとは思うが俺を強くしようとしているのか。出来ればそれはごめん被りたい、俺はただ接待のつもりで石に触れているだけでこれから打ち続けるつもりはまったくないのだから。
このままだと駄目だ、何も考えずに打っていたら長引いてしまうだけだ。
俺は桔梗の白石がたくさん集まっている所にわざと黒石を置いた。これは相手の邪魔をする今まで打たなかった打ち方だ。
すると桔梗の手が止まった。少し無言だったが俺にここに話しかけてきた。
「なんでここに置いたの?」
桔梗は俺の黒石を指差して説明を求めた。置いてはいけない場所だったのだろうか。正直に話して良いのか分からないが、他に答えも見つからないのでそのまま話した。
「そこに白石が置かれる前に、ちょっと邪魔してみようかなって」
「……いい性格してるわね」
言葉とは裏腹に桔梗は俺に笑いかけていた。口には出さないが余計にそれが俺を不安にさせる。
しかし桔梗はそのまま俺の黒石が集まっている場所に白石を置いた。つまり俺がした事をそっくりそのまま返したのだ。
そして桔梗は俺に一言放った
「こうされたら縁史くんはどう思う?」
「……囲うのが面倒だなと思う」
しばらく考えたが俺は桔梗に先に囲われないように石を置いただけだから、そう答えるしか無かった。
「囲碁は一手一手と交代で打つのだから相手に打たれたら困る場所に先に置くだけで攻撃になって形になるの。それを説明せずに感覚で掴んだと言うことは……」
なんだろう意外と俺に囲碁の才能があったのだろうか。わざわざ接待なんてしなくてもよかったのだろうか。
「あなた性格の悪さがこの一手の強みになったのよ」
あまり嬉しくない結論だった。しかし勝負事や戦略としては褒められていると取っても良いのかもしれない。一度は拒絶仕掛けたがここは甘んじて受けよう。
「そういえば貴方、なんであの式神に名前を付けなかったの?」
桔梗が石を打ちながら俺に話しかけてきた。そっちは上級者だろうから会話と行動を同時に進行出来るのだろうけど、初心者のこっちはそうはいかないのですよ。
俺の思考は次の黒石を何処に置くから、なぜ名前を付けなかったに移行した。
「はっきり言ってしまえば付ける暇など無かった」
あいつは俺の言う事を全く聞かない上に腹を殴りやがった。俺はその場で戦闘不能になっていが、あいつを制御するために符術で仕方なく別世界に転移させた。
だけど何も考えずに転移させてしまったため何処の世界に飛ばしたのか分からなくなってしまった。
そしてたどり着いたのがこの世界だ。今は向かいにいる桔梗のせいで閉じ込められている状態だけどな。
「あいつを回収して向こうの世界に戻ったら適当に名前を付けていたと思うぞ」
桔梗は俺の話を聞いているのか聞いてないのか分からないような軽い返事をして話を続けた。
「でも迎えに来るなんて意外と責任感があるのね。式神なんてもう一体を作ればいいのに」
不敵な笑みを浮かべながら無慈悲な事を言っている。
しかし当たらずとも遠からず俺は正直に答えるか迷った。なぜなら桔梗の言っている事は半分正解だからである。
実は何度か式神をもう一体作ろうとしていたのだが、俺の符術の能力はまだまだ未熟であるため出来なかった。
仕方がないから何処で生きているのか分からない、あいつの居場所を探し続けた結果ここに辿り着いたのだ。
「まあ以外と俺は慈悲深い所があるんだよ」
俺は口からでまかせの言葉で流す事にした。
真意はどうあれ俺はあいつを連れ戻しに来たのは間違いない。本当か嘘かなんて自己申告だといったのは桔梗の方だから、ここはうやむやにしておこう。
「そうね、あの程度の式神を一体しか作れないだから大切にしなさいよ」
例えいろいろ企てたとしていても、それをすぐに見抜くような相手には意味が無いと改めて学んだ。




