2-8. 大きな壺
〈何で……!〉
中年の男性が見ている地面にはいくつかの足跡が残っている。そういえば、洞窟内の地面には所々に水溜まりがあった。気づかない内に水溜まりを踏んで部屋の中を歩いてしまっていたようだ。子供である自分の小さな足跡に気づいたのだろう。
〈ど、どうしよう、だってここにも足跡が……〉
隠れている大きな壺の近くにも自分の足跡が残っていた。
もし、気づかれたら……。
もう一人の中年の男性がドアの前に立ち、自分の足跡に気がついた中年の男性は部屋の中をゆっくりと歩き始める。ロングドレスを着た女性も辺りを見回し始めていた。
『子供かしら〜?』
『この足跡はガキだ。部屋から出た足跡がねぇなぁ、まだこの部屋の中にいるのは間違いねぇぞ』
『俺が入り口を見張っているから、さっさと捕まえろ』
三人は不気味な笑みを浮かべている。部屋から出ることができなくなってしまった。焦りで頭の中が真っ白だ。だが、何もせずに隠れているわけにもいかない……このままでは捕まってしまう。
〈何とかドアの前にいるおじさんを退かして、本気で走れば逃げられるかも〉
一か八か、部屋の中を走り回ってドアの前にいる中年の男性の注意を引くしかない。
〈行こう!〉
隠れていた大きな壺の後ろから勢いよく飛び出した。
『おい、ガキだ‼︎』
ドアの前に立つ中年の男性が飛び出した自分に気づき、こちらを指差したまま叫ぶ。歩き回っていた中年の男性は自分に目をつけると、ベルトに下げていたサバイバルナイフを右手に持った。
〈絶対に捕まるわけにはいかない!〉
全力で走りながら部屋の中を逃げ回る。サバイバルナイフを持っている中年の男性は自分を捕えようとするが、逃げる方向を変えてうまく躱わせていた。早く自分を捕える為に、ドアの前に立つ中年の男性も加勢するのかと思っていたが、動こうとする気配が全くない。退いてもらわないと部屋から出ることができないのだが……。
〈動いてしまうと、オレが部屋から出てしまうかもしれないって警戒してるんだ。だとしたら、どうすれば〉
36番力がうまく使えれば、宝飾品を浮かせて武器として使うことができた。まだ36番力を安定して使うことができない今は攻撃できる手段がない。大きめの宝飾品をドアの前に立つ中年の男性に投げつけるべきだろうか……だが、子供の力では怯ませることができないかもしれない。
〈ほ、ほほほ本当にどうしよう⁉︎〉
──ガッ!
〈しまっ……!〉
考え事をしていた所為で、地面に埋まっていた宝石に気づかず躓いてしまった。
『いったぁ……』
地面に右膝を突いてしまい擦りむいてしまったようだ。




