160. ガメバの若者
二人はお互いの顔を見合わせると、首を横に振った。
見ていない?
いなかったなんてあり得ない。確かに人の影はドアの窓に映っていた。だが、よく考えたら確かにおかしい……彼等の話し声が聞こえてから数秒でドアの前からいなくなるなんて事は出来ない筈だ。
「ちょっと待て。君達が来た時にドアの前には誰も……いなかったのか?」
「うん、廊下にも誰もいなかったですよ」
血の気が引いていくのが分かる。やはり、何か変な感じはしていたが……。二人はガメバの街の住人なのだろうか? もしかしたら、この廃墟について何か知っているかもしれない。
「す、凄いですね、左目。あと、て、手錠? 何かあったんですか?」
怖がる様子も無く、二人は目を輝かせながらこちらをジッと見ていた。左目を見られたのは仕方がないとして、手錠については言わない方がいいだろう。もし、ウルフ達にバレてしまったら彼等も危険な目に遭ってしまうかもしれない。
「左目は生まれつき、この色でね。手錠は……盗みがバレてしまって保安雇人にかけられたんだ」
「えええーー⁉︎」
二人は驚くと一歩後ろに後退りしていた。
極悪人だと思われてしまったのだろうか。さすがに、この言い方ではまずかったかもしれない。
「何でビビる? 君達には何もしない。それより、この建物は何なんだ? 何で君達もこんな廃墟なんかに来てるんだよ?」
二人は再び顔を見合わせていた。よく見るとライトを持っている手が震えている。
〈何でビビってんだよ……〉
呆れて半目で二人を見ていた。
「ほ、本当に何もしないですか?」
大きく頷く。
「ほ、本当に?」
眉間に皺を寄せながら、大きく頷く。
「ほ、本当……」
「しつこいぞ。何回聞くんだよ」
思わず睨んでしまった。
「あわわわわ」
ますます怖がらせてしまったようだ。面倒くさいなぁ、と思いながら手の平を前に向け胡座をかいて座り込んだ。
「はーい、何もしませーん。今なら君達がオレを殴り放題出来るけど? これでも安心出来ないか?」
そもそも、手錠もかけられている状態で彼等に何かするわけがないのだが。
二人は少し安心したのか、手の震えは止まっていた。
自分も安心していた。警戒されてしまったら、この廃墟について教えてくれなくなるかもしれないと内心焦っていたからだ。
「で! 話は変わって、この建物は何なんだ?」
「お兄さん、知ってて来たんじゃないの? あっ、鍵がかけられていたけど……」
「気付いたら、この部屋で倒れててオレもよく分かんないんだよ」
ウルフ達の名前は絶対に出してはいけない。自分も分からないという事にしておこう。
「そ、そうなんですか? ここは"ガメバ第一ホテル"という建物だったんです」




