150. 見抜けなかった
唖然とした表情でウルフを見上げていた。
誰が? とはどういう意味なのだろうか。目の前にはナノンしかいない筈、意味が分からずウルフとナノンを交互に見ていた。
……自分の目がおかしいのだろうか?
視線をナノンに向ける。低い身長に、幼い顔、高い声、ラッコのぬいぐるみを抱いている。
〈いや、どう見ても子供……だよな?〉
「何ジロジロ見てるなの? 変態」
〈へ、変態⁉︎〉
自分の視線に気付いたナノンが冷たい視線でこちらを見ていた。何故か変態呼ばわりされた事に驚く。
「ガキんちょなんか興味あるかぁあ‼︎」
思わず大きな声を上げてしまった。全くそんなつもりで見ていたわけでは無いのだが。
自分の右腕を踏ん付けているまま、ウルフは笑い出していた。痛みがまだ治らず、笑う前に早く退けてほしいと思いながら再び鋭い目付きで睨む。いつ足を退けてくれるのだろうか。
「あっはっは! ヤング、ナノンはやめておけ、あいつはヤバい女だぞ。近付いた瞬間切られるからな」
「いや、あの、別に、オレは何も」
〈ん? 待てよ〉
今、ウルフは"女"と言っていた。
まさか……ナノンは子供ではない?
驚いた表情のまま、思わず無言になっていた。自分は何かを見抜いたりするのは得意だと思っていたが、ナノンが成人の女性だという事は全く見抜けなかった。
〈嘘だろ……全然、分かんねえって!〉
ナノンは強くラッコのぬいぐるみを抱いていた。つぶらな瞳に、手には貝殻を持っているラッコのぬいぐるみだ。だが、何故ラッコのぬいぐるみなんか持っているのだろうか。
「ガキじゃないなの。私の事はいいから、こいつをどうするか……」
──ポポン、ポポン
再びウルフのライトフォンが鳴り出した。
何か嫌な予感がする……もしかしたら、この場にいないジェネレーという男性からの着信ではないだろうか。再び耳を澄ましてライトフォンから聞こえる会話を聞く事にした。
「おーい、おっせぇよ二人共! あと一時間でデアの誕生日パーティーが始まるぞ。まだザンベールって奴を仲間にするのか決めてないのかよ?」
この声は、先程も聞いた声だ。やはり、ジェネレーのようだが、ウルフ達を呼んでデアを連れ去りに行くつもりなのだろうか。
「まだ決まっていないけど、俺がロウシティに連れて行く。ナノンじゃダメだ、ボスに判断してもらう」
慌てて首を横に振る。ロウシティなんかに連れて行かれたら、もう逃げられる僅かな希望さえもないだろう。
「いやいやいや、行くつもりないですぅ‼︎」
──ミシッ
「いってぇええええ‼︎」
足に力を入れて更に踏み付けてくる。足を退かさない理由が分かった……否定的な事を言った瞬間に何度も踏んでくるつもりだ。




