147. ウルフの怒り
〈やっべ!〉
素の自分が出てしまっている。
小さく深呼吸をして、冷静さを取り戻す。怒りから思わず強気な話し方になっていた。ウルフもこちらをジッと見たまま、何故か黙ってしまった。
……何故、黙る?
沈黙している理由が分からなかった。ウルフの僅かな行動さえも、何かあるのではと警戒をしてしまう。
「分かっているからやるんだよ。俺達、奪略商はそれが仕事だ。お前も入るのなら……」
「入らない」
即答だった。
そんな仕事など自分に出来る筈がないし、やろうとも思わない。やはり、奪略商という組織は危険な組織なのだろう……連れ去った人物をどうするつもりなのだろうか。
「連れ去ってから……どうするんですか?」
絶対に教えてはくれないだろうが、聞いてみる事にした。
何処へ連れて行くのか、場所が分かれば助けに行けるだろう。
「はぁ、ヤング……変な事は考えるな。奪略商を敵に回すのはやめろ」
「オレは、クラムダータが凄い嫌いかもしれないですぅ〜。力になろうとも思わないですぅ」
このまま奪略商を放っておくと、もしかしたらエネゼナまで連れ去られてしまうかもしれない。はっきりと言ってやるべきだろう。
「!」
ウルフの目付きが変わった。
気が付くと、右側から鉄の状態になっているウルフの脚が座っている自分に向かってきていた。
〈これは、蹴……〉
慌てて両腕を上げて自分の右の顔を隠す。
──ガッ!
「!」
脚を止めた右腕に物凄い激痛が走り出すと同時に、衝撃で左側へと体ごと飛ばされた。どうやら、怒ったウルフが本気で蹴ってきたようだ。
〈ふざ……けんな、なんて力だ……化け物……かよ、本当に……〉
「ぐ……ぁ」
右腕は赤く腫れ上がり全く動かせず、手錠がかけられているので左手で腫れている部分を触る事も出来ない。ウルフは倒れている自分に近付くと、赤く腫れている右腕を足で踏み付けてきた。
「いっーーーー‼︎」
慌てて左手でウルフの足を掴んで持ち上げようとするが全く動かない。
「もう一度言ってみろ。お前を今すぐ殺してもいいんだぞ?」
「……」
まずい状況だ……どうすればいいのだろうか。
審判のコインを持っていないと、こんなにも無力だとは……。
──ミシ、ミシ
更に力を入れて踏み付けてくる。
「そ、それ以上……踏むなぁぁ……」
「教えてやるよ、デアを何で連れ去ろうとしているのか。彼女はとんでもない額の借金がある。売れている今でも全く払おうとしないから、恨んでいる奴が奪略商へ依頼をしてきた。なっ? 悪はどっちだ?」
歯を食いしばったまま、ウルフを睨んでいた。デアは何故、払おうとしないのだろうか。
──コンコン
ドアを叩く音が聞こえる。




