146. 何でも答える
絶対にウルフと話してはいけない。
間違いなく自分の正体を探るような質問をしてくるだろう。自分はあまり心理戦は得意ではない。もし、口を滑らせて自分の正体を明かしてしまったら間違いなく自分の命が危ない。
無視するしかないだろう。視線を逸らして口をしっかりと閉じる。
ウルフの性格から考えて、気付かない内に質問で自分の事を話すように誘導してきそうだ。とりあえず、無視して何とかこの場を凌ぐしかない。
「あれ? いいのか?」
「……」
半目のまま徹底的に無視をする。
「質問があるなら"何でも答えてやろう"と思ったんだけど」
「!」
思わず逸らしていた視線をウルフに向ける。何でも答えると言った事に反応してしまった。自分にはどうしても聞きたい事があるからだ。
〈何故、TBのデアを狙っているのか……何でもって事はそれも答えるって事だよな〉
ウルフを見る目付きが鋭くなっていく。
TBが好きと言っておきながら連れ去ると発言するウルフが許せなかった。本当に好きならば連れ去るような事はしない筈だ。そして、何故そんな事をするのか。
「何だよその目は? 語るつもりは無いんだろ?」
本当は話すつもりなんて全く無かったが、仕方がない。何でも答えるという今しかもう聞けるチャンスはないだろう。
自分の質問になった途端に、また黙ればいい。
「あのぅ……じゃあ、一個だけ質問したいんですけどぉ〜いいですかぁ?」
ウルフは小さな笑みを浮かべている。何か嫌な予感はするが……。
「構わないが、俺もヤングに質問するぞ。いいな?」
やはり、そう来ると思っていた。この流れは、もう既に誘導されていないだろうか? 警戒しながら話をしていくしかない。
〈野郎……まるでオレが質問をしてくる事を分かっていたかのようじゃねえか〉
ウルフの質問は全て適当に答えよう。
「良いですよぉ。何の質問かは分かりませんけど……」
「はは、そんなに警戒するなよ。大した質問じゃないからな。んじゃ、質問どうぞ」
「TB大好きと言ってましたよねぇ? 何でデアを連れ去ろうとしているんですか?」
固唾を呑みながら返答を待つ。
ウルフは笑いながら首を傾げていた。何がおかしいのだろうか。
「それを聞いてどうするんだ? 助けるのか? 連れ去る俺達にもきちんとした理由があるんだ。分かれよ、ヤング」
誘拐等は保安雇人に捕まれば重い刑が処せられる。だが、ウルフは捕まらない自信があるようだ。
分かれよ、と言う事は"黙っていろ"という意味なのだろう。
人を連れ去る事なんてやって良い筈がない。
怒りから、いつの間にか震えた拳を握りしめていた。
「分かるわけないじゃないですか。何をしようとしてんのか、お前こそ分かってんのか?」




