拘置所生活 初日4
拘置所は暇だ。やる事が限られている。
娯楽はお菓子、筋トレ、そして本だ。
雑居房なら囚人同士の会話も入るかな。
テレビはなくラジオしかない。長い期間入ると、流行とか、話題のニュースとか、流行りの芸人とか一般社会の流行に全くついていけなくなる。
だから、外の世界の流行を知る為に本は結構大事だ。毎週週刊誌を買ってる奴も多かった。
でも一人で買うには限度がある。
村山さんが、入所時に俺の持ってきた本を確認したのもそういう理由だろう。
俺が私物を整理したり棚に置いたりしていると、部屋の皆が自分の机を入口側に持っていって並べ始めた。
何だ?何が始まるんだ?と思っていると、松山さんが近寄ってきた。
「これから昼御飯です。
机を持ってきて下さい」
時刻は11時50分だった。
遠くてガコンガコンと慌ただしい音もする。
これは雑役が昼御飯を準備している音だった。
拘置所には雑役と呼ばれる囚人がいる。
拘置所生活では欠かせない存在だから説明しておこう。
有罪判決が確定した囚人は未決囚から確定囚となる。確定囚は受刑者。
つまり刑務所で服役しなくてはいけない。
ただし、品行方正が良いこと、頭が良いこと、信頼ができることなどを基準にして受刑者の一部を選び、拘置所で服役させることがある。
これが雑役だ。
名前の通り、拘置所で雑務を行う。
留置所では、洗濯とか食事とか掃除も全て警察官がしていた。
でも拘置所は違う。
囚人エリアでの雑務はほとんど雑役が行う。
刑務官はそれを管理する立場なんだ。
だから、廊下を掃除したり洗濯物を干したりする囚人を独房から眺めることができる。
もちろん、会話は禁止なんだがな。
会話したことが分かれば懲罰になる程だ。
俺が机を持ってくると松山さんが机をふきんで拭き始めた。吉富さんは洗面所にあった箸とコップを持ってきて席順に並べている。そのコップに林さんがコップにお茶を注いでいる。非常に手際が良い。
「伊達さんにも仕事がありますよ。
伊達さんは今週はお茶とトイレ当番ですね。
後で林さんに教わって下さい」
村山さんはそう言いながら机に座って本を読んでいた。相田さんも漫画を読んでいる。
あんたらに仕事はないのか?
俺はそう思ったが口には出さない。
部屋には部屋のルールがある。
この部屋は食事の際は当番を3つに分けてローテーションしていた。ふきん当番、お茶当番、洗い物当番だ。毎週当番が変わる訳で、当番がなければ仕事がない。村山さんと相田さんは今週は仕事なし。ただ、それだけだ。
ちなみに部屋のルールは一番席によって変わる。
村山さんが言うには、他の部屋では下っ端の番席が全てしないといけない所もあるらしい。
ハズレの部屋に来たら最初はキツいだろう。
この部屋は当たりだと言える。
そう思っていると皆が席に座り始めた。
どうやら食事の準備が終わったようだ。




