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と言うわけで、金髪ちゃんが私に弟子入りした。わからん――こともない。


あの決闘の後、レビンと共に金髪ちゃんを医務室に連れて行き、彼女が目覚めるまで医務室で時間を潰していたのだ。

「――わたくしは、まけましたのね」

それが、金髪ちゃんの第一声。

とりあえずレビンに声を掛けさせ、次いで私が前に出る。

「やぁ」

「――あなたですの」

黙って金髪ちゃんの前に立つ。一応レビンをその場から一時撤退させ、この会話は二人だけの物、と言うことにした。

「なんですの。敗者を笑いに――まぁ、あなたはそういう人間でも無いでしょうが……」

言って自重する金髪ちゃん。そういうネガティブ思考は病人にはあまり良くないのだが。

まぁ、だからといって、負けて落ち込むな、なんて酷な事はいえない。負けたら落ち込み、次ぎえの闘志とするのが一番いいのだから。

「報酬」

「あぁ、それですの。それなら後から――」

「変更を要求する」

「はい?」

うん。だって、金貨十枚っていっても、実は此方もお金持ちだ。その程度の端金……と言うような額でもないが、ソレよりももっと面白そうな物を見つけたのだから。

「此方に師事しろ」

「――はぁ?」

何を言っているのか分らない、と言うような表情の金髪ちゃん。

「金貨十枚分、一月」

「……それは、一月自分の訓練に付き合え、ということですの?」

まぁ、大体そんな感じだろう。首を縦に振って肯定する。

「――後半の戦術は、見事」

「えっ?」

「磨けば、無双」

少なくとも、魔物との前線国家にでも行かない限りは、金髪ちゃんを害するに至る物が無い、と言う程度までにはなるだろう。

然しこのままでは駄目だ。慢心は神をも殺す。今のままでは剣魔共に中途半端なのだ。

そんなことを、簡単に金髪ちゃんに伝えると、金髪ちゃんは少し嬉しそうに頬を染めて微笑んだ。

「それは――寧ろ此方からお願いしたい事ですが――あなたの技量は、私もじかに見せていただきましたので」

「――一ヶ月、レビンに会う暇も、無いかもしれないが」

「っ!?」

少し身を強張らせる金髪ちゃん。

「――まぁ、その一月で、あのハーレムを上回らせて見せるが」

悩む金髪ちゃんの耳元で、そう小さく囁く。

途端にピクンと身体を跳ねさせる金髪ちゃん。

「それは――本当ですの?」

「無論」

何せあの面子は、基本的に特化型の集まりだ。

見た限り、精霊魔術中心、加護持ちの剣士型、属性特化型など。

魔法剣士型のスタイルは扱いが難しいが、然しその分最終的なステータスは他の大半を圧倒する。

故に。彼女は間違いなく伸びる。

そんなことを、再び簡単に彼女に告げる。

金髪ちゃんは少し悩んだように目を閉じると、小さく、けれども確かに頷いて見せた。

「――改めて自己紹介させていただきますわね」

と、金髪ちゃんが、それを切欠とするかのようにそんな事を言い出した。

そういえば、金髪ちゃんの本名しらねぇ。

「私、フェルミ王国が公爵、ゴールディー公爵が第4子、シルヴィア・ヴァン・フュム・ゴールディーと申します。シルヴィア、と及びくださいな」

「……アイン・セラフ・フレシュテ・ド・ガレリア」

正式な名乗りをされた以上、此方も正式な名乗りを返さねばなるまい。コレ、万国の貴族の共通認識。

で、名乗った途端に金髪ちゃん――もとい、シルヴィアがあれっ? という表情になった。

「ガレリア?」

「内緒で」

言う。どうも名前から関連した情報を思い出したらしく、一瞬シルヴィアの血の気が引いていた。が、まぁ問題あるまい。

「……では、これからよろしくお願いしますわね」

少しして落ち着いた様子のシルヴィア。

そんな彼女と手を差し出しあって、握手をした。


「……因みに、ロイ様とあなたの関係は……」

「昔の師弟関係」

「……本当に?」

「それ以上を期待されても、どうしろと?」


如何でも良いが、金髪ちゃんなのにシルヴィア(銀)なのだなー、とか思ったり。

まぁ、ゴールディー(金)だけど。寧ろ脳金(筋)か。







で、気付けばいつの間にかシルヴィアと本格的に師弟関係を結んでいたりして。

「先生、行ってまいります!」

「ん」

乗りはどこぞのスポ根。シルヴィアが鮎川こずえなら、此方は安西先生なキャラだけど。

で、本日は久々にシルヴィアがレビンに顔を合わせに行く日だ。

少し前に現地実習が発表され、それにレビンが我々を誘いに来たのだ。

此方としてはシルヴィアとの契約期間の終わりだったので、丁度良しとシルヴィア一人を送り出した。

「師匠も着ませんか?」

などと渋られたが、残念ながら私にも用事がある。別口で狙いたい獲物がいたのだ。




で、その三日後。帰ってきたら、ロイハーレムの面々から詰め寄られた。

簡単に略すると、「私も弟子にしろ」と。

いや、それ人にモノを頼む態度じゃない、なんて言葉は誰にも聞き入れられない。何せ全員有力者の娘。揃って敵に回せば国とも戦える。

もう色々面倒になって逃げ出したのだが、どうもシルヴィアが一月で優秀になりすぎたのが原因らしい。で、その理由をさらっと喋っちゃったのだとか。

ついでに、我がもう一人の弟子も、先生の弟子ならしょうがない、なんて馬鹿な助長をしたものだからもう。お前の言葉なら、お前のハーレムの面々は拡大解釈してしまうだろうに。

シルヴィアェ……。ついでにレビンェ……。

女の子に追い回されるのは……まぁ、野郎に負いまわされるよりは眼にいい。

が、どうやら、静かな学園生活と言うのは、もうすでに此処で終わりらしかった。


「ソレが青春だよ、青春!」

マロンェ……。



こうして、このことを切欠に、私はロイ・ハーレムの巻き起こすトラブルに巻き込まれる事になる。

それがたまに、世界を滅ぼしかねない大惨事だったり、逆に結果的に世界を救うなんて大事になったりもするのだが。

――ことの気は未だ、そんなことに成るなどとは露も思わず。

只管、離れていった平穏な日常を思って、ほろりと小さく涙するのだった。



以上で終わり。

皆様、良いお年を!!

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