表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿版】戦国幻獣物語 〜目指せ、戦国ひきこもりモフモフ生活! 八百万の幻獣をモフって今日も生き抜くぞ、おぉーーっ!〜   作者: 蒼葵美
14XX年 モフってたら生活基盤ができました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/89

0089. 気づかぬうちに引越し準備完了

「父上、母上。琴にございます」

 部屋に入るなり、私は先手必勝とばかりに畳み掛けた。

「お呼びとの事ですが、いかようなご用件で? 先日の、お庭で〝御使い様〟がちょっと興奮して穴を掘ってしまった件なら、弁償は……いえ、私が責任をもって埋めます! それとも、この間発明したものの件ですか? 改良案なら、今、考えておりますので!」

 私のボケを交えた牽制に、父上は苦笑し、母上は「まあ」と優雅に微笑んだ。


「琴よ。今日はその話ではない。まあ、騒ぎはほどほどにしてくれると助かるがな」


「ええ。今日は以前から話していた、お社の件ですよ」

(やっぱり、社の話か)

 ちょっと軽い小ネタボケで、両親の緊張をほぐす作戦は不発に終わり、二人から小言を言われてしまったが、仕方ない。

 まぁ、やらかしてるのは、その通りなので、甘んじて受け入れよう。それに社の件もちゃんと確認したいしね。

 今は秋の収穫期。引っ越しは、早くても年明けくらいだろう。


「失礼いたしました。それで、社の件とは、引っ越しの時期についてでしょうか。私、まだ何も準備しておりませんので、早めにお知らせいただけると助かります」

 私は、さも当然のように言った。

 すると、母上が私の予想の斜め上を行く、とんでもない爆弾を投下した。


「そうなの。だから、急いで準備をしてほしいのよ。わらわ達は、再来週の秋祭りには、あなたが新しい社で民を祝福するのが良いと思っているのだけれど」


「――は?」

 聞き間違いだろうか。秋祭りって、あと10日くらいしかない。


「お、お待ちください、母上! さすがに急すぎます! お社の準備も、まだ完全に整ってはいないでしょうし……!」

 私の抗議に、今まで黙っていた父上が、実に楽しそうに口を開いた。


「琴よ。その社のことだが、先日、滞りなく完成したぞ。門前町や向こうでの水田、畑とそれと牧場じゃったか、それも小さいながら作ってある。

 社の方はあとは、竣工祭しゅんこうさいをして、琴が引越す際に清祓きよはらいをするだけだな」


「えっ」


「氏兼が監督した門前町も、儂が攻めても落とせるか分からぬほどの見事な出来栄えじゃ。ここ稲村の増築した後より守りがしっかりしておるぞ。

 あやつ、だいぶやつれておったから、今度なにか美味いものでも食べさせてやってくれ」

(叔父上、私のせいで過労に……)

一瞬、罪悪感がよぎる。だが、今はそれどころではない。


「で、ですが、お城や砦の建設は……!?」


「稲村城の増築は琴も知っておる通り、しっかりと土塁どるい堀切ほりきりの工事が完了している。

 香城は、平砂浦と稲村を繋ぐ重要な拠点、洲崎城は、海から上陸をいち早く見つけるための監視拠点とし、両方としっかりと築城して、ほぼ完成しておる。

 白浜と千倉の陣屋も、今年の冬、農閑期の終わりまでには終わる。周辺の上杉勢も少しづつ押し返しておるので、十分な状況で、何も問題ない」

 父上が、私の逃げ道を一つ、また一つと塞いでいく。


「し、しかし! 門前町に住む民の皆さんの準備が……!」


「それも問題ない。氏兼によれば、向こうの民は、そなたを迎えて秋祭りを行うのを、今か今かと待ちわびておるそうだ。

 これも琴の加護の力と稲荷様を信心しておる鞍馬衆、伊母呂一族の頑張りが大きいおかげだな」


「……わ、私の荷物が、まだ……」

 最後の砦である、私の準備不足を訴える。だが、父上はとどめを刺すように、にっこりと笑った。


「そなたの身の回りの物以外は、五日後までに社へ運び込む手筈になっておる。よって、琴、そなた自身は、七日後に社へ入れるよう、準備を整えよ」

 うぇ〜、……チェックメイトだ。

私が知らない間に、外堀も内堀も完全に埋められ、王手飛車角取りの状態で引越し準備が完了しているわ。

 はぁ……こんな状況では、断れないわね。しょうがない。突然過ぎて、ビックリしたけど、OKして頷くしかない。


「……承知いたしました。七日後にお社へ向かえるよう、準備いたします」

 私が観念したのを見て、父上は少し申し訳なさそうに言った。


「すまぬな、琴。そなたに知られると、何やかやと理由をつけて、引っ越しを引き延ばすと考えたのじゃ。騙すつもりは、なかった」

 その言葉に、少しだけ胸が温かくなる。


「いえ……。ところで、父上。その、私の行くお社の名前なのですが。そういえば、まだちゃんと伺っていなくて、稲荷神社だと思っていますが」

 すると、父上はとても誇らしげな顔で、その名を告げた。


「うむ!【安房稲荷大聖宮あわいなりたいせいぐう】じゃ!」


「……たいせいぐう?」


「左様。御稲荷様の姫御子様がおわす社が、ただの〝神社〟では外に対する権威が無い、威厳が足りぬと皆が言うてな。伊勢の〝神宮〟、出雲の〝大社〟に倣い、二つを合わせて〝大聖宮〟とすることにしたのよ」

(大聖宮……)

 なんというか、私の「静かなひきこもり生活」には、あまりに不釣り合いな、壮大で、ものものしい名前だった。


 私の新しい城は、どうやらとんでもなく〝公式〟で〝格式高い〟場所らしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ