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【改稿版】戦国幻獣物語 〜目指せ、戦国ひきこもりモフモフ生活! 八百万の幻獣をモフって今日も生き抜くぞ、おぉーーっ!〜   作者: 蒼葵美
14XX年 本作戦をモフシマ作戦と呼称します

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112/112

0112. 初めての鎧と神々のお節介

 私の特注武具がついに完成した。

 昨日、試し着した際はその「着せられてる感」がひどく、どこぞの武者行列に参加させられた子供のようだったが、皆が気を使って褒めてくれたので、よしとしよう。

 そして今日。いよいよ、この鎧を纏っての初鍛錬の日。


 天堂の入り口でたきと氏兼に手伝われ、私は生まれて初めて本物の鎧兜をしっかりとその身に纏った。一つ一つの部品が取り付けられ、紐が締め上げられるたびにずしりとした重みが四歳児の小さな体にのしかかる。

 鏡はない。だが、自分の小さな手足を覆う、分不相応に立派な籠手や脛当てを見下ろすだけで、そのちぐはぐな姿は容易に想像できた。


「おお、なんと、凛々しい……! まるで五月人形の豆雛の武者飾りのようでございますな!」

 氏兼の悪気のない、しかし全く嬉しくない感想。


「まあ……。おいたわしい。このような、重たいものを……。ですが、本当にお強そうでございますよ、琴音様」

 たきの心配と愛情が入り混じった複雑な声。


《……ぷっ》

 私のすぐそばで水蓮くんが必死で笑いを堪えている気配がする。


《似合っているぞ、琴ちゃん。まるで小さな愛らしい団子虫のようだ》

 狐火ちゃんの全くフォローになっていない真面目な感想。


《かわいい! 琴ちゃん、とってもかわいいですわ! 団子虫さんも丸くてかわいいですよ!》

 花梨ちゃんだけが純粋に目を輝かせていた。


 私はぷるぷると震えを堪える水蓮くんと真顔で私を観察する狐火ちゃん、そして、一人だけキラキラした目で見つめてくる花梨ちゃんのそのあまりに正直な反応に少しだけ頬を膨らませた。

(……あなた達ねぇ)


「皆、行ってくるわ。今日はこの武具に慣れるための軽い鍛錬だけだから。一刻か二刻ぐらいで帰ってくるから、安心してね」

 私がそう言って天堂の扉に向かって、最初の一歩を踏み出した、その時。


「ぐぎっ……!」

 思わず情けない声が出た。一歩進むだけで全身が軋む。まるでぎっくり腰をやってしまったおじいちゃんのようだ。

(これはまず身体強化からだな……)


 なんとか待合室を抜け、私は再現された自室のドアを開け、その内側へと転がり込んだ。

 バタンと扉が閉まる。

「――ふぅぅううううっ……!」


 私はその場にへたり込んだまま、すぐさま【身体強化】のスキルを発動させた。

 体の中から力が湧き上がり、あれほど重かった鎧が、まるでただの衣のように軽くなる。


「よし!」

 私はすっくと立ち上がると、武器の置き場所と定めたベランダへと向かった。

(……あれ? このベランダ、こんなに広かったかしら)

 前世の洗濯物を干すのがやっとだった、あの狭いベランダとは明らかに違う。四、五人は余裕で槍の素振りができそうな広さだ。


(……待って。この間、バッテリーを確認した時も引っ越し作業で武具の置き場所を考えた時もこんなに広くはなかったはず。……あの神々、私の思考を読んで、リアルタイムで増改築してない!? プライバシーはどこ!?)


《おお、本当だ。広くなっておる》

《琴ちゃんが槍を振り回しても、壁にぶつからないようにとの神々の配慮であろうな》

《……お節介とも言う》


 私は愛槍――相馬が打った、片鎌槍を構える。

 身体強化のおかげで体は軽い。その切っ先で狐火ちゃんが楽しそうに生み出す、小さな炎の玉を次々と正確に突いていく。鎧をものともせず、軽やかに舞う。

 一刻(約二時間)ほど汗を流すと私はすっかり満足していた。


「ふぅ、良い汗をかいたわ。……そうだ、シャワーを浴びていきましょう」

 ……そして、これが致命的な間違いだった。

 さっぱりして風呂から上がったものの、一人ではあの複雑な鎧を元通りに着ることができない。


「ええと……この脇の紐は肩の金具に通してから、背中のこっちの輪っかに……あれ? 違うわね。じゃあ、先に腰の草摺くさずりから着けるのかしら? うーん、さっきより変な感じになったわ……。右の籠手をはめたいのに左の袖が邪魔!」


《……琴ちゃん、格闘しておられますな》

《さっき人間たちが着せていた時と明らかに順番が違うわ》

《放っておけ。あれも琴ちゃんにとっては、良い〝鍛錬〟であろう》


 悪戦苦闘の末、なんとか形だけは繕ったが、あちこち紐の結び方が違うのが自分でも分かった。

「お待たせ。今日も無事に鍛錬を終えたわ」


 私がしたり顔で天堂から出てくると待ち構えていた氏兼が、私の姿を見てぴたりと固まった。

 そして、私の鎧の腹当てのあたりをじっと見つめてくる。

「……琴音様。その腹当てが少しズレておられますが……。もしや、一度お脱ぎになられましたか?」


(……バレた!)

 この男の鷹のような目はごまかせないか!

「え、ええ! 少し御使い様たちと激しい鍛錬をしたら、ズレてしまってね! だから、一度脱いで安全を確認したのよ!」


「左様でございましたか。……しかし、お一人でお着付けを? ご無理なさいませぬよう」


「う、うん……。まだ少し着け方が上手くなくて……」

 私のしどろもどろの答えに氏兼はにやりと笑った。

 その顔には「全て、お見通しですよ」と書いてあった気がする。


「承知いたしました。ならば今後、琴音様がお一人でも完璧に着付けができるようになりまするまで、この氏兼が毎日、お稽古をお付けいたしましょう」


「え……」


《あちゃー。琴ちゃん、墓穴を掘ったわね》

《これで明日から、また面倒な〝お稽古〟が増えるな》

《だが、琴ちゃんのためだ。良きことではないか》


 こうして、私の日課に氏兼による厳しい「鎧の着付けレッスン」が追加された。

 ダンジョンに潜る日はまだ少し遠いらしい。

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