関係者席という無遠慮な張り紙
「俺の高座100人も入ったことないわ。銀行口座でも1万は入ってないな」
サチと行動を共にすることになったアケビ。
どうやらサチも政治利用され、忙殺されるイヴをなんとか救い出したいと考えていた。
「じゃあ早よイヴに会わせてや」
とアケビが頼むも、それは難しいようであった。周辺の警備は万全で、サチでさえ、常にIDを身につけていなければならないほどだと言う。
ほな無理ですやん。と、ため息をつき、すかした屁をこいた。
サチに変装しようにも背丈が違う。強引に突破しようものなら、監獄行きだろう。そんなことになってしまっては命の保証もない。
そもそもアケビは腕っぷしに自信がなかった。弁舌をふるうことが唯一の世界に対抗する術だったのだ。
これはちと作戦が要りますなあと、アケビは頭をひねった。
「僕もできる限りの協力はしたいのですが、どうにも」
イヴの付き人をやっている手前、サチが派手に動くことは憚られた。イヴの処遇に影響を与えかねないからだ。
「そういえば、サチはイヴの付き人やってるんやんな」
アケビが問う。
「そうですね。イヴ様が言語再生特別職に擁立されて以来はそばに仕えています」
「イヴの高座って人気なんよね」
「はい。それはもう。チケットを取ることも難しくなっていて、裏では高値で取引されているとの噂もあります」
「そのチケットさ、一枚くらい用意できたりする?」
アケビはにやりとしながら言った。真意を分かりかねるサチは、
「まあ一枚くらいなら……、関係者席を用意するくらいわけないですが」
と少し渋りながらも答えた。
「じゃあちょっともらってもええかな。極力良い席で頼むわ」
アケビはそう言ってサチに微笑みかけた。




