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喋ったら、死ぬかも知れない。だから俺は、喋りまくる。  作者: 中田翔子
政治と保護

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大きなイヴ

タオは関所の前に立つと、息をすぅと吸い込んで、短く吐いた。


扉を開けると、窓越しに関守の姿が見える。


なにやら書き物をしているらしい。報告せねばならないことなどが溜まっているのだろう。


「オー手洗い、オー手洗いはどこだったかしらねえ」


タオは大きな独り言を発しながら建物の中を歩いた。


当然関守はタオの存在に気がつき、ちらと見た。


「えーとこっちだったかしら。いや、こっちかもしれない」


大袈裟すぎる声でアピールする。


関守は、可愛いなあと思っていた。


「そうそう、アケビに教えてもらった落語の練習しなくっちゃ。えーと。ひい、ふう、みい、よう……。あら、こんなところに扉があるわ。お手洗いかもしれない。この扉開けるのは何時でい? 今でしょ〜」


そう言い放ち、タオは全速力で駆けた。我ながら名演技だったとタオは思った。


タオは脚には自信があった。無論スタイルではなく脚力である。幼き頃から、何度も転び、転びながら走り続けて来たのだ。


アケビを探しに行く。三千里でもなんでも訪ねてやろうではないか。



ここで困ったのは関守だった。今までなんの抜かりもなくこなしてきた業務に、初めて支障を来したのだ。


脱走者がでたとなれば、中央への復帰はさらに遠のくことになるだろう。そしてその脱走者というのが、恋い焦がれてきたあのタオなのだ。咎め立てたり、追跡して捕縛したりといった手荒な真似したくない。


ここで一つある考えが関守の中で浮かぶ。


中央へ戻れないのであれば、いっそタオを追えばよいのだと。娘1人では生きて行くのにたいそう窮するだろう。その点関守には使い所なく貯まっていった蓄えがある。これを使って彼女を保護、さらには生涯添っていくことさえ可能ではないかと。


童貞の発想である。


関守は止まらない。ガタリと席を立つと、手をつけていた書類に大きく不可と書き、扉の外へ出た。


新たな人生へ。タオの行ったであろう方向へと歩み始めた。





タオが帰ってこないとあって、八百屋では大きな騒ぎをおっさん1人で起こしていた。


商店街中を駆け回り、同時に関守まで消えたという噂も相まって、人々は様々な憶測を飛ばした。


関守がタオを誘拐した

タオと関守が駆け落ちした

関守がタオと心中した


何にしても気分がよくないゴトウは、関守がいないことを良いことに、関所から勢いよく外の世界へと出ていった。実に12年ぶりとなる外の世界だった。


イヴをアケビが追い、アケビをタオが追い、タオを関守が追い、関守をゴトウが追う。なんだこれは。まるで大きなかぶではないか。

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