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漆黒のレコードキーパー  作者: 辻村深月
9/17

レコード9

すっかり日が暮れた頃。

結局かくまって貰う事になった俺達三人はアキツ姉さんの妹、紫乃さんに案内され見晴らしのいい部屋で寛いでいた。


「良かったーベットで寝れるし」


異世界巡りと聞いた時は野宿を覚悟していたが、まさか最初からこんなに俺の所に近い文化だとはラッキーだ。

鈴羅緒や柏木さんみたいな例もあるものだから、実を言うとかなり不安だった。

そう言えば鈴羅緒からどうやって情報を貰うのか聞いていなかった。

俺はアキツ姉さんから解放された後、直ぐに姿を消した二人を探しに、建物の上へと足を向けた。

案の定、暫く行くと二人の声が聞こえて来たので、俺は声をかけようと手を挙げる。


「二人共、そこで何して…」

「どう思いますか雅、彼女の話」


話かけようとしたが、途中で俺は歩みを止めた。

取り込み中だったらしい。


「どうもこうも無い、デタラメだらけだ」


雅のその回答に柏木さんは肩を落とす。

一体誰の話をしているのか。

興味が湧いた俺は、そっと物陰に身を隠し様子を見る。


「彼にも伝えておいた方が良いのではないでしょうか」

「あいつにか?話してどうなる、ありゃー家に帰りたいだけだろ。気楽でいいよな」


ヤバイ、出るに出れなくなった。

どう考えても俺のことを言っているらしい二人を見ながら、冷や汗がじわじわと溢れてくる。


「どうかされましたか?」


二人に気を取られていた俺は、声をかけられるまで紫乃さんが近くにいた事に気づかなかった。


「あっ、いや別に」

「お加減はどうですか?お姉ちゃんたまに没頭すると周りが見えない時あるんで」

「ハハハ…」


アキツ姉さんはどうやら、表向きは画家をしていると言うことにしているらしい。

ぶっちゃけレコードキーパーです何て名乗っても何する人かさっぱりだしな。

今でも俺は良くわかってないけど。


「モデルさんが三人も来てくれて本当に良かった。お姉ちゃん、最近また怖い顔して何か悩んでたから」

「…そうなんだ」


こっちもこっちで何かありそうだなと思っていると、柏木さん達が戻って来るのが目に入った。


「ごめん、俺もう寝るから」

「そうでしたか、おやすみなさい」


その夜は、昼間よりなんとなく柏木さんや雅が遠い存在に思えた。

もともと出会って間もないし、当たり前だが、アレだけ世話を焼いた後だったので、いつの間にか俺の方の親近感が強くなっていたらしい。

てゆーか、よく考えたら柏木さんって俺のこと元の世界に送れるんじゃね?

俺は幸せそうに寝ている柏木さんをなんとなく恨みがましく見ながら、後日掛け合ってみることを決意した。






翌日。


「えー、帰っちゃうんですか?」

「いや、帰りたいんでどうにか送ってもらいたいって話しなんスが…」


柏木さんに早速掛け合ってみたが、どうにも本人にその気を感じない。

むしろワザとその話題を避けたりしているような節もある。


「そこをなんとか、お願い出来ませんかね、柏木さん」

「うーん…なんと申しましょうか。あの手の移動は私のポテンシャルにも関係しまして」


本当かよと思いながら、柏木さんの話を半信半疑で聞く。


「何?あんたレコードキーパーなのに何も出来ないの?」


アキツ姉さんが、どこまで話を聞いていたのか横から加わって来た。

しかしこの感じは、悪くするれば俺にとって不利な方向に傾きそうな加わり方だ。


「俺はそもそも、一般人の筈なんですよ」

「…そう、そうなんだ。そんな子も居るのね」


なるべくナチュラルに俺が答えると、意外にもあっさりアキツ姉さんは引いていった。

もっと掘り下げられると思っていた俺はなんだか拍子抜けだ。


「あたしと同じ…」


その一言を聞くまでは。


「アキツ姉さん?」

「ん?…あぁ、いいの、忘れて」


アキツ姉さんは顔を押さえながら何か考え込んでいるようだった。

そんな時、外壁から嫌な騒音が建物の中に響きわたった。


「なんだ!?」


雅の姿がない。

柏木さんとアキツ姉さんが駆け出したのでついて行くと、紫乃さんを抱えて血を流している雅と、謎の少女に似たトラジマのタテガミを持った男が立っていた。


「やっと見つかったー、レコードキーパーのお嬢ちゃん。きみ気配無さ過ぎて探すの苦労したわー」

「…なっ?あんた何言ってるんだ?レコードキーパー紫乃さんじゃなくてアキツ姉さんだろ!?」


俺がそう言うと、男は瞳孔を開いたまま微笑し、ケラケラと俺を見て笑った。


「それ違うよ、少年。ホンマもんはこのお嬢ちゃんでしょ?てゆーかお前ら何?俺様の邪魔しくさったら、何するかわからんよ!!」


柏木さんが杖を出し身構えた。

アキツ姉さんも銃を構える。

俺には何が出来るか、その答えを俺はまだ出せずにいる。


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