初心者用ダンジョン攻略してみた6
突然周りが森の中の風景になる。
イスタは慌てて後ろに行くが穴があった場所よりも遠くに行けてしまった。
「……やばいかも」
「確か、自界だっけ? こういうの」
「いや、これはただの空間魔法。でも、こういうのを使うモンスターはもれなく強い。最低でもB級4人程度で固めたパーティが倒せるぐらいの強さ」
なーにそれ。
B級レベルうちには2人しかいねぇぞ。
俺達が慌ててると大木はミキミキと音を立てて根っこを地面に出す。
とてつもない威圧感が俺達を襲う。
(大丈夫か、これ?)
(おい、絶対に死ぬなよ)
(赤スパしてやるからイスタとミュールだけは生かせ)
(バカ、ユウヤいなくなったら誰が俺達にミュールちゃんを見せてくれるんだ)
(猫耳信者、それだとイスタが)
視聴者達も心配している。
ダメだ、視聴者さん達を心配させるのは。
視聴者さんにはこれはただのエンタメと思ってもらいたい。
放送事故なんてただの運だ。
それで人気になってもその人自身が面白くないとチャンネルは続かない
「いやぁ、イスタ。相手強そうだな」
「え? 強そうってか、強いんだよアイツ」
イスタは少し慌てた様子で話す。
「イスタ、死んだフリだ。死んだフリを思い出せ」
「……まさか、ユウヤに言われるとはね」
イスタは落ち着きを取り戻し呼吸を整える。
ミュールはもうすでに構えている。
ミュールはこういう時にほんと頼りになる。
何とかなりそうだ。
「ミュール、行くよ」
「ん、私がズバーンってするからイスタはピュンピュン」
やっぱ、ダメそう。
ミュールはドーンと加速し大木の近くに行く。
イスタは綺麗に加速しながら大木の近くに行く。
あいつの特性をちゃっと調べよう。
俺はモンスター図鑑の動画を開きこいつについて調べる。
「名前はフォレストプリンス。火に弱い木みたいな魔法生物。その樹皮は非常に固く基本的には魔法攻撃で傷をつけなければならない。この木になる果実は非常に美味」
なるほど、魔法攻撃で傷をつけないとなのかぁ。
……
「ケンケン、魔法頼んだー!」
ケンケンならいい感じに強い魔法打ってくれるだろ。
「無理やー」
ケンケンはミュールに激しく振られながら返事をする。
……へ?
「え、だってお前インテリジェンスウェポンじゃん。魔法使うのが主な目的だろ?」
「ワイ、魔法の勉強一切してないねん。ミュールがさせてくれへんからやねんけど。だから、簡単なやつしか使えん」
「ファーー!?」
俺は大声で戸惑い叫ぶ。
そういや、ケンケンが使う魔法ってあんま強かったイメージねぇ。
てか、まず使ってるイメージねぇ。
(ユウヤ、さっきまでかっこよかったのに)
(見損なったぞ)
(ユウヤの株、ジェットコースターみたいに大忙し)
ど、ど、どうしよう。
俺が慌ててるとフォレストプリンスは口のようなものを開く。
そこから魔法陣を展開し風が激しく吹いたと思うと木の葉が激しく舞う。
イスタの皮膚が軽く切れる。
ミュールは無傷だが少し痛そうだ。
効かなくても使うか。
俺は詠唱し火魔法を使う。
ボワーと燃える火を投げるが魔法で出された風で消える。
(強すぎだろ)
(死ぬな、絶対に)
(頑張れ)
俺の体に少し力が出てくるがその力をぶつけても意味が無い。
フォレストプリンスは根っこをムチのようにしならせイスタ達に攻撃する。
イスタは避けて流して近付き、ミュールは根っこを切り落としたり片手で受け止めたりで近づく。
イスタ達が剣を振るがそれはフォレストプリンスにとってはさほど痛手になっていない。
フォレストプリンスは根っこを地面に埋め口のようなものを開き大きく空気を吸う。
これ、ゲームとかじゃ大技が来るタイプのタメだ。
2人がまずい。
俺はひたすら走って2人の所に行き地面に手を着く。
「俺の後ろに!」
「ありがとう」
「助かる」
俺は詠唱し土の壁をドドドと出す。
クソっ、魔力を出そうとしても全然出ない。
穴が詰まったシャワーヘッドみたいだ。
でも、出さないと。
俺はひたすら魔力を出すことだけを考え土の壁を強化し続ける。
「ブォァァァァァァ!」
俺達の方にフォレストプリンスは木々を吹き飛ばすほどの息を吹きかける。
そして、木の葉が一面に舞う。
木の葉はカッターのようにキラリと鋭く光り辺りの木々を切り刻む。
土の壁も徐々に傷つけられボロボロと欠けていく。
もっと、魔力を出し続けないと。
カッターのような木の葉は辺りの木々を切り落とす。
木の葉攻撃が止みもう終わりかと思うと今度は根っこが地中から出てきて、倒した木を掴み、俺達に向かって槍のように投げつける。
投げられた木はミュールがケンケンでかっ飛ばしたりイスタが蹴って軌道を逸らしたりするが、土の壁に何回も当たる。
外側からも木を投げられ内側からも木を投げられる。
土の壁は形を保てなくなりボロボロと崩れる。
フォレストプリンスは木を投げるのは終わり、根っこを全て引き抜く。
「一旦下がるぞ」
俺達は後ろへと下がる。
(ユウヤ、落ち着いて今できること考えて)
(お前は死ぬんじゃねぇぞ)
俺に今できることなんてない。
あぁ、もうどうすればいいんだ。
「ユウヤ、魔力の流れ変」
ミュールは俺に向かって言う。
魔力の流れ?
魔法打てるし間違ってはないと思うんだけど。
「イスタは変だけど強い。でも、ユウヤは変だし弱い」
「酷いな」
「ユウヤは初心者だし仕方ないよ。ミュールのは慣れてからじゃないと難しいし」
なんだ?
何の話をしてるんだ?
いや、何の話とかどうでもいい。
今、俺がしないといけないのはミュールがいう俺の変な魔力の使い方を正すことだ。
「ここで何とかしないといけないのは俺の方だ。ミュール、教えてくれ。俺のどこが変だ?」
「言い方」
ミュールはうーんと考える。
「本当はギューってやってドバーなんだけどユウヤはドバーってしようとしてチョロって感じ」
「なるほど、分からん」
解説求む。
(ミュールちゃんは感覚派だね)
(魔力の使い方とかそもそも俺らには分かんね)
俺はうるうるとした瞳でイスタを見る。
「えぇっと、ユウヤ。ミュールが言ったことを簡単に言うとね。ユウヤは魔力を使う時に無理やり出そうとしてるからちょびっとしか出ないの。魔力を出す時や流す時は基本圧縮して出すのが普通なんだよ」
圧縮?
俺が圧縮について悩んでいると根っこが俺らがいるところの木をなぎ倒す。
やばい、フォレストプリンスが近づいてきた。
「ミュール、とりあえず、私達にできることしよ」
「ケンケン、火」
「ユウヤのですら無理やったのにワイのはさらに無理や」
「ないよりマシ」
「分かった分かった」
2人はそう言ってフォレストプリンスに向かって走り出す。
大事なのは圧縮すること。
……魔力を圧縮って何?
いや、意味は分かるよ。
でも、魔力って目に見えないし俺、自分の体の中にあるポカポカ程度の認識だから圧縮しようにも出来ねぇよ。
……いや、出来ないじゃないよな。
出来なきゃダメなんだ。
こんな所で死んでたまるか。
俺は座禅を組んで座り精神を統一させる。
俺の中に眠る魔力を支配しろ。




