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リコメディント・スカイ  作者: ポテッ党
第三章 王都での災典
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第三章 第二十七話 手放したモノ 手にしたモノ

「君を疑ったことを全面的に謝罪しよう。本当にすまなかった」

『謝罪を受け取ります。そして感謝を。貴方がたが動いてくださらなければ、死者が出ているところでした』


 場所はビットー王国首都 バルレシアの中心、半壊していた王城である。

 建築スキル持ちの大工の手によって半壊から四半壊程度にまで修復された王城の小部屋にて、二人の男と一人の少年が会話をしていた。

 クロード団長とアカツキ、そしてこの国の王であるアカツキに問いを投げる。


「それで本当に良いのか、勲章を受け取らないで」

『はい。私がこの国の人々を巻き込んだような物ですし、戦いの余波で色々な物を壊してしまいましたから。報酬を受け取らないというよりは、その修理費と相殺していただきたいです』

「確かに君の体の問題で大々的に表彰するというのは難しいかもしれんが。君が事前に王城が砲撃されるという情報を我々に寄越していなければ、事前に王城内部の人員を地下牢などに避難させることも、治癒術師たちを集めておくことも、騎士団を集結させておくことも難しかったのだぞ」


 アカツキは『神権教団』のテロの情報を事前に三か所にリークしていた。

 一人はアカリ・カンバラ、現地の潜入捜査官と連携を取るために。

 もう一人はウェイザック・バーボン枢機卿。『聖人教会』から戦力を派遣してもらうために。

 最後が目の前の二人、王家の人間だ。

 その情報のおかげで、王国内部で起きた数々の事件に割り振るはずだった戦力を王都に集中させることで、死者ゼロという脅威的な被害の少なさを記録することができたのだ。


 アカツキの功績をすべて明らかにした場合、彼こそが救国の英雄として称えられるだろう。

 しかしアカツキは二人の申し出に難色を示した。


『私も地球の方で、色々とやるべきことがありますし、この活動が露見した段階で不利益を被りかねないぐらいデリケートな立場ですので、遠慮させていただきます。勝手な都合で申し訳ありません』

「むぅ……」

「ま、そこまでいうならやめておくさ」


 こうしてアカツキのイグノーテラでの会話は終わり、その場から地球へと帰還する。



 □



 場所は変わって地球、都市級戦艦の艦橋部分に、アカツキの【電霊体】――ホログラム――は存在していた。

 その内の椅子の一つに腰掛けて、教義よりも親であることを優先した裏切者と会話していた。


『ありがとうございます、何から何まで……!』

「別にアンタのためじゃない。子供たちのためだ。それにこれは温情とかじゃなく、取引の一環だ。アンタらの当座の生活資金を用意したのも、『保安機構』の監視が薄い地域に下ろしたのもな。金が無いからって理由で犯罪者に戻られたら、わざわざ助けた意味がない」


 場所は都市級戦艦の艦橋、そこでアカツキは外部と通信を行っていた。

 相手は今回の事件の発端ともいうべき、『神権教団』の内通者だ。

 彼女を含めて、『教団』には構成員の一割を超える離反者がおり、そんな彼らにアカツキは資金供与を含めたアフターケアを行っていたのだった。


『それでも、貴方のおかげで私たちの子供は普通の暮らしをすることができます』

「…………真っ当な暮らしをしてくれよ。自分が助けた相手がもう一度悪党になった瞬間ほどやりきれないことはないからな」

『もちろんです』


 彼らが離反した理由はただ一つ。

 自分たちの子供に普通の、健やかな暮らしをしたいがためだ。


「俺ができるのは明日の暮らしを保証するための一時的な資金供与とかぐらいだ。その先の暮らしは親として、アンタらが自分の手で切り開いてくれ。それじゃ、通信を切るぞ」


 相手の返事を待たずに、アカツキは通信を切った。

 彼らには偽造した身分と数か月は問題なく暮らせるだけの資金を与えてある。

 これで孤児である子供たちには『聖人教会』の保護を、親がいる子供たちには教団に頼らない新たな暮らしを提供することができた。


「今回は運が良かっただけだ。……もっと強くならなくちゃな」


 王都襲撃において死者は出なかったという事実は、アカツキの心にこれ以上ない安らぎを与えていたが、その事実は薄氷の上を歩むように奇跡的なものであるということも正しく認識できていた。

 だからこそアカツキは決意を新たにする。


「まずはこの都市級戦艦を根城に、勢力を拡大していこうか。ネットワークへの進入を開始」


 

 □



『アース01より通達。都市級戦艦の演算能力と秘匿回線を用いて、各種人格との会合を行う。手の空いている者は参加を。手が空いていないモノは後日議事録を参照されたし。なお参加しない者は現在の作業をアース01に開示すること』


 都市級戦艦のスーパーコンピューターを用いて作り出された電脳空間に一人の少年が現れる。

 しかし一人だけではなかった。


『ゴースト01から通達。銃器使いと商談は成立。会議に参加する』


 一人は黒フードを目深にかぶり、椅子に腰かけている。


『スチューデント01から通達。会議に参加する』


 一人は既に座っていた。

 ただ、出席している者ばかりだけではない。


『マーケット01から04より通達。株式市場の操作から参加は見送る。詳細は添付資料を確認されたし』


 アカツキの財政面を担う班は身柄の代わりに今回の一連の事件における、経費を紙の束でその場に残した。


『アナライザー01から07は、都市級戦艦の戦力分析及び【ゼノギフト】への分析から参加を見送る。必要情報は即時開示する。連絡を待つ』


『ではゴースト、スチューデント、アースの三人で会合を行う』


 電脳空間と言えど、アカツキが、それも三人が向き合っているのは円卓だ。

 アース01と呼ばれた統括知能が口火を切る。


「アナライザーたちから開示された情報に依れば、俺の【ゼノギフト】は【異界内包(アナザースカイ)】型と呼称される系統らしい」


「【内界改変(インナーチェンジ)】、【外界作用(アウターエフェクト)】、【他界介入(オザーフォース)】、【境界掌握(ボーダードミネイト)】、【現界自律(オルタースタンド)】に次ぐ、六つ目の系列か。それはどこの情報だ?」


「アナライザーたちから聞くに、『神権教団』からの情報だ。曲がりなりにもかつて世界を相手どった彼らの記録からだ。確度は高いだろう」


「なるほど。確かに内界改変にしては肉体強度が低く、外界作用にしては射程が短く、他界介入にしては自己強化の比率が高く、しかし境界掌握にしては他者への作用が多く、現界自律にしては人格が多すぎると考えていたが、新しい系統ならば納得でき「俺には納得できないことがある。俺の【ゼノギフト】の系統なんかよりも」


 途中で遮ったのはスチューデント01、つまりソウヤ・アカツキの死霊として――厳密には【電霊体】という規格――異世界へ降り立った者だ。


「何だ? 渡した事前情報の量も質も既にそちらとこちらで差異はないはずだぞ」

「なぜ学園をあのような形で去る必要があった? あのまま学園生活を全うすることはできなかったのか?」


 溜息をついたのはゴースト01、黒フードの銃器使いを【電染】していた個体だ。


「既に学院内部の情報端末からあらかたのデータをコピーした後だ。学院内の指導レベルから鑑みても、既に俺たちは不適格だ。何せ通信教育で既に大学院レベルの知識を手にしているからな」


「けどそれはあくまで知識だ。こんな博打みたいな真似をせず、学院に戻る選択もまだあるはずだ」


「いいやないね」「なぜそう言い切れる」


「だってまだ、シャルにも、エイトにも、何の事情も話せて――」


「かつての俺もそう思考していた。しかし今は彼らとの接触を断つべきだと考えている。それは都市級戦艦の演算能力を用いても答えは変わらなかった」


 答えたのはアース01だ。

 スチューデント01は顔をしかめながら続けた。


「一人で、最強への道を探究するべきだと?」


「ああ。すでに分かっていることだろうが、俺の【ゼノギフト】は過大だ。その完全な制御は莫大な恩恵を俺たちにもたらす。がソレを狙う組織も今後多く出てくるだろう。そのたびに学院を巻き込むのは、俺の判断として間違っている。故に『死亡』という形を取って、出ていくことにしたんだ。そのための下準備は既に整っている」


「別れの言葉もいえないのか」


「そういう【チカラ】を授かってしまったんだよ。理解をしてくれ。共感しろとまでは言わないから」


「…………分かった」


 ふう、とため息をつくアース01。

 弛緩した空気が三人の間に流れた。

 その直後、けたたましいアラートが鳴り響く。


「シップ01より通達! 接近反応あり!」


「モニター写せ!」


 ホロウィンドウが立ち上がり、都市級戦艦の外部を映し出す。

 そこには。

 見慣れた、そしてもう見ることはできないであろうと考えていた自らの親友の顔があった。

 

「シャル!?」

「嘘だろ!?」

「あ……駄目だこれは」


 明らかにブチギレている、般若のような少女の顔が。

 三人仲良くガチビビりをすることとなった。

これにて三章は完結です。


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