第十五話
「テッド、久しぶり」
オルスは自然と笑みが溢れる。だがテッドは、暗い表情だった。
「今な、石板の事で聞いていたんだよ」
「なあ、オルス。俺がいない間に、この国はどうなったんだ」
「天候が原因だ。作物が育たない。土砂崩れは起きる。食料の値段が上がる。俺たちの給料は減る。良いことが全くない」
「俺が一番知りたいのは、石板の解読がいきなり中止になった事だ。他の国々が、一斉に手を引いた」
オルスは少し言葉につまったものの、テッドの目をしっかり見ながら、話した。
「クレチア王国が、戦争を仕掛けようとしているかもしれない」
「やっと、半分くらい、解読できたのに」
テッドは肩をガックリと落とす。
「お前はどうしてここに来た?」
「賢者様の家に行って、文献を借りてきたんだ。生きていた頃から、お邪魔していてね。俺だけでも、解読しようと思ってさ」
オルスは家に帰ってきた。今日も、スープだけだった。広い家に三人、ただ黙々と啜るだけだった。
「これじゃあ、本当に飢え死にしてしまう」
ドアを叩く音がした。父親が出ると、そこに、親子が立っていた。
「親分、すまねえ。食料が……」
「言わなくてもいい。待ってろ」
戸棚から、パンを一斤出すと、その親子に分けた。
「こんなに・・・・・・ありがとうございます」
「息子の仕事先は、決まったか?」
親は悲しそうに首を振る。
「こんなに食料の値段が上がっちゃあ、何も買えません。それだけじゃない。他の生活品も、税金も払わなくてはならない。どこにも金がないんです。新聞にはこの先、天候は良くなるとは書いてありました。我慢するしかないんです」
その言葉に、オルスのスプーンは止まり、親子の方を向いた。
「すみません。どういうことですか?」
「悪いな。うちはまだ新聞を聞いてないんだ。まあ、もう少しの辛抱だ」
「ありがとうございました」
親子はドアを閉めた。オルスは、すぐに新聞を見た。
「オルス、新聞にはなんて書いてある。聞かせてくれ」
「魔法研究所の所長によると、天気はこれから一か月後あたりには、良くなるとの予想。それまでの辛抱……」
オルスの言葉は、だんだんと弱くなっていく。何度も読み直す。オルスは黙ったまま、細かな文字も読んだ。
「あれだろ。いつもの通りに戻るんだろ。まあ、もう少しの辛抱だ」
「……」
オルスは飛び出した。すぐテッドの家のドアをたたいた。
「どちらさんで?」
「オルスです。テッドはいますか?」
「ちょっと待っててね」
すぐにテッドが出てきた。
「新聞、見たか」
「いや、夕食を終えたら見ようとした」
オルスは新聞を見せた。テッドは目を見開く。
「昼に所長と話したけど、こんな事、一言も言ってないぞ」
城に向かった。二人は裏から入っていく。
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