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第十話

「どうだった。都市の方は」

「色々ありました。はじめ、演武だけでよかったのですが、ある都市で挑戦者が現れました」

「強かったか?」

「剣を持って、二年の兵士でした。体格は良かったのですが、まだまだです。そこからです。都市に行く度、手合わせしてほしいという者達が、続々と現れました」

「お前の名声も、すぐに広まったんだな」

「まあ、全て勝てました。ウラシュ様も喜んでいました」

「この周辺で、お前に勝てる奴は、そうはいない」


 二人は食事を終え、その後、剣術の話に入った。一段落終えた時、ふと、部屋の隅に鎧が飾られていた。手入れはされていない。脇腹の部分に穴が空いている。胸の辺りは、地面を擦ったような跡がある。


「あの鎧も、必要ないな」


 寄り添うように、今は亡き賢者の杖が置かれていた。


「あの杖、テッドにくれてやろうとしたのだが、丁重に断られたよ。私のような者が、滅相もないと。あいつは今、共同で研究しているのか?」

「ええ。周辺国の魔法使い達と、あの石版と魔方陣を解読しています。当分は帰ってこないでしょう。旅立つ前に、言ってましたよ。賢者様も一緒に連れて行きたかったって」


 勇者とオルスは、鎧と杖を見ながら、会話を続けた。


「それじゃあ、稽古するか。本当の目的は、それなんだろ?」

「ありがとうございます。お願いします」


 二人は外に出た。勇者は丸太に座り、オルスの剣さばきをじっと見ていた。


「なまってはいないようだな」

「はい。旅に出ている時も毎朝、基本はやっていました」

「そうか……」


 勇者はしばらく黙ったまま、地面を見つめていた。基本が終わった。オルスは何もできず、そんな姿をじっと見ている。


「オルス。お前は旅に出ろ」

「えっ」


 勇者を見つめる。一気に老けたように見えた。


「もう、私が教える事はない。若い頃の私と、今のお前と戦ったとして、勝てるかどうか、わからない」

「でも……」

「だがな。この世界ではお前よりも、もっと強い者がいる。そいつと戦え。負けたなら、頭を下げ、稽古させてもらえ。そうやって強くなれ。ひたすら、剣術を学べ。私はそうしたかった。だが、魔王と戦わなくてはいけない。そして、片足を失くしてしまった。今は魔王はいない。お前は自由だ。ここの兵士なんかやめて、剣術をつきつめろ」


 勇者の声は、次第に涙声になっていく。オルスも下を向いた。


「できません。できなんです」

「どうしてだ」

「クレチア王国が、不穏な動きをしています。もしかしたら、戦争になるかもしれません」

「馬鹿な事を……」

「平和なんてないんです。この先もないんです」


 オルスは再びロングソードを構えた。何度も同じ動作を繰り返す。初めて、勇者の嗚咽を聞いた。


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