第三十一話
「やった、倒した」
月明かりの下、魔王が蒸発したのを見届けたオルスとテッドは、勇者と賢者の方へと駆け寄った。勇者から離れた所に、右足が転がっている。兵士が数名囲んでおり、医療を行った。
「勇者」
オルスが割って入った。
「あいつは、もうだめか……」
静かに横たわる賢者を、勇者はじっと見ていた。
「足を縛ります。テッド、すぐに冷やして」
テッドは切られた右足を、アイスで固めた。
「目を閉じさせてやれ」
「はい」
テッドは言われた通り、賢者の目を閉じさせた。勇者は、階段からやってきた衛兵によって、担架で運ばれていく。賢者も、白い布を被せられ、担架で運ばれていった。
「もう少し、賢者様といたかった。様々な魔法を教えてもらった」
賢者が使っていた杖を胸に抱き、瞼をギュッと閉じる。オルスは、優しく肩を抱いた。
「おい、誰か来てくれ」
一人の兵士が叫んでいる。声は部屋の奥から聞こえた。松明を持ち、大きく手を振っている。二人は、そちらへと向かった。
「これ、扉じゃないか?」
そこには、複雑な形をした、紋章が描かれている。そして、大きな窪みがあった。
テッドはライトをいくつも使い、周囲を明るくした。何か仕掛けがないか、数人で探していく。
「おい、レバーがあったぞ」
「引いてみよう」
「また、魔物が出てこないよな。一旦、隊長に相談した方がよくないか?」
「魔王は死んだんだ。出てくるはずがない」
オルスはレバーを引いた。紋章が二つに割れていく。大きな扉が引かれる音がする。暗闇で何も見えない。ライオードを放った。人がすれ違える程の狭さで、一本道になっている。
「どうする?」
テッドが聞いた。
「行こう」
オルスはロングソードを持ち、中へと入っていく。テッドは、ライオードで照らすようにした。
気配は一切ない。下は敷き詰められた石ではなく。土だった。
「魔物が掘ったのか。でも、どうして?」
「答えは、奥にあるのだろう」
長かった。二人は歩く速度を速めた。前に、小さな光が見えてくる。テッドは明かりを消した。小さな光が、だんだんと大きくなっていく。
二人は息を殺し、足音を消した。
「外だ」
そこは広場だった。
「これは……」
「どういう事だ」
そこには、石板があった。そして。何かが刻まれている。横四十個。縦二十個。文字のようなものが、均等に刻まれていた。
「文字なのか。あいつら、読み書きができるのか」
「そんなわけない。そこまで、頭が良いなんて……」
二人は石板を見て回る。何が書かれてあるのか、見当がつかない。
「おい」
そこに隊長と、数人の兵士が、通路から現れた。二人と同様、石板に驚いている。
「魔方陣だ」
下には、巨大な魔方陣が書かれてあった。まだ。薄く青く光っている。
「これは、魔物が作ったのか?」
「わかりません。できれば、この石板を他の国と一緒に、解読していきたいのですが」
「なぜだ?」
「これを解読すれば、魔物の事がわかるかもしれません。ですが、私達だけでは時間がかかります。他の国々の英知が必要です。一日でも早く解明したいんです」
「わかった。許可をしよう。上には私が掛け合う」
「ありがとうございます」
「さあ、帰ろう。凱旋だ。すでに、魔法のバードで、国王に報告が行っているだろう。後は私達が、直々に報告をするだけだ」
隊長と数人の兵士は出て行った。それに続き、オルスとテッドも出ていく。
ふと、オルスは反射的にロングソードを手に取り、振り返った。
「どうした?」
「いや、気配を感じたんだ」
だが、誰もいなかった。
「疲れかな」
「きっとそうだろう」
オルスはロングソードを鞘にしまい、二人は出て行った。
これにて、「魔王討伐編」は終わりです。楽しんでいただけたでしょうか。
以前にも書かれたように、JRPGを元にした話になっております。
そこに少しだけ神話を混ぜて……物語の原点は、神話ですからね。
さて、次回からは、ガラリと変わります。登場人物は変わりませんが、内容が180度違います。
魔物がいなくなった世界には、どんな事が起きるのでしょうか。
明日から、投稿します。お楽しみに!




