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3 アウリオンラジオ

 


「みなさん、こんばんは! アウリオンラジオ夜の部のお時間です! いぇーい!」


「お、おー」


「光の日の今夜のパーソナリティは、謎のシスター・バブルスと!」


「記憶喪失の異世界人ツバサです……」


「声がかたーい。まだ緊張してるんですか? もう半年も続けてるのにー」


「いや、ムリでしょ。一生慣れる自信ないね。てか、あり得ねぇもん! なんでオレは異世界トリップした先でラジオに出てるんだ……! うぅ……!」


「あ、また悩み始めちゃった。ちょっと放っておきましょうかねー。おほんっ、この番組はラジオ魔法の発見によって始まった国営ラジオ放送です。王都とその周辺地域のみなさん、改めましてこんばんは! 今夜も耳よりな情報とリスナーさんの声をお届けしていきますよ。よろしくお願いします!」


「はぁ……よろしくお願いします! 異世界への帰還方法を知ってる方、あとニホンを知ってる同じ境遇の方がいたら連絡ください! ここの人たちはみんな優しいけど、やっぱり寂しいんで! あはは!」


「無理やりテンション高めてきましたね」


「一応、この仕事で生活保障してもらってるから、ちゃんと働かなきゃ」


「ツバサくんの謎のプロ意識が発揮されたところで、さっそくお便りの紹介! ラジオネーム“花柄のシーラ”さんの投稿です。『バブルスさん、ツバサくん、こんばんは。いつも楽しくラジオを拝聴してます』」


「こんばんは、ありがとうございます」


「『昨日お友達に誘われて、十年ぶりに王立学院の入学の儀を観戦に行きました。ここ何年かは観ていて心が痛む試合ばかりで足が遠のいていたのですが、今年は話題になっていたので怖いもの見たさで足を運びました。結果、行って良かったです! あんな凄まじい剣の打ち合いも、あんな綺麗な魔法も初めて観ました! 今まで見た入学の儀とは全然違って……大・興・奮っ!』」


「文章から熱狂ぶりが伝わってくるね」


「ですねぇ。『しかし儀礼試合なのに本気で戦っているように見えたのですが、何故今年はあんなことになったのでしょう。情報通のバブルスさん、何かご存じですか? また、ツバサくんの目にはあの戦いはどう映りましたか? ぜひ感想を聞かせて下さい』……とのことです。今週は似た内容のお便りがたくさん届いてますよー!」


「すごかったもんなぁ。オレも闘技場で観戦してたんだけど、『何あいつら。人間?』 って感じだったよ」


「まずは何も知らないリスナーさんのために説明しますね。王立学院の入学の儀で、今年はちょっと珍しい光景が見られました。例年、七回以下の打ち合いで終わる勇者役と魔王役の儀礼試合が、今年はなんと伝承通りに七十七回の打ち合いが行われたんです。しかもかなり熱い戦いだったんですよ。入試トップの勇者役のご令嬢と、魔王役の平民の男の子が互角の戦いを繰り広げて、あわや勇者が負けるかもっていうハラハラドキドキな試合運びだったんです! 最終的に、これまた伝承通りに勇者役の七属性魔法で終わるという劇的な幕切れでした!」


「本当はお芝居というか、魔王役の負けが決まってる試合なんだよね?」


「そうです。先に裏話をしちゃいますと、どうやら魔王役の男の子は地方出身で入学の儀について詳しく知らなかったそうです。彼に学院の教師に扮した何者かが『勇者に勝ったら平民の新入生全員に賞金百万ツェンを与える』って嘘の情報を教えて……結果、あのような大熱戦になったんですって」


「えぇ? 教師に扮した奴は何がしたかったんだろう?」


「貴族社会の陰謀の匂いがしますねぇ。うーん、どぅろっどろ」


「言い方。でもそっか。魔王役は騙されてたのか。正直女の子相手によくあんな思い切り攻撃できるなぁってドン引きしてたんだけど、そういう催しだと思っちゃったわけね。勝手に勘違いしてごめんな」


「謀反かって一部関係者席は大騒動だったらしいですよ」


「いやいや、一部じゃなくてみんなびっくりしてたよ。何より驚いたのは、勇者役の子がすげー強かったこと! 彼女からすれば不意打ちだったわけでしょう? よく咄嗟に反応できたね」


「ツバサくんにはそう見えましたかー。でもでも、実は魔王役の子の方がすごいんですよ。だって彼は魔法や精霊の力を使わずに戦ってましたからね。生身であれだけ戦えるって、ヤバすぎです! ここだけの話、貴族の方々は戦慄したんじゃないでしょうか?」


「ここだけの話って、公共の電波に乗ってるんだけど……まぁいいや。うん。魔王役もすごかった! ナイスファイト!」


「もちろん勇者役のご令嬢も素晴らしかったですよ。あの年齢で七属性魔法を使えることがあり得ないし、対人剣術にも目を見張るものがありました。貴族のご令嬢が、どこで誰に教えを乞えば、あんな風に戦えるようになるんでしょうかね。とにかくここ数年の勇者役の中でも、指折りの実力者と言っていいでしょう。全く、あの子ったら……」


「あれ? バブルスさん知り合い? なんとなく上から目線だし、まさか」


「うっふっふ。内緒でーす」


「思わせぶりなこと言って、気になるなぁ。バブルスさんの正体。学院で勇者役の子に聞いたら分かるかな?」


「坊や、迂闊にあたしのことを探ると火傷するわよ? その覚悟はできて?」


「バブルスさんのキャラが掴めない。絶対本物のシスターじゃないことは分かるけど」


「そんなことはさておき、ツバサくん、学院に通うんですってね?」


「うん。魔法とか精霊とか、この世界のことちゃんと勉強したくってさ。王様にお願いしたら特別に入学させてもらえた……あれ、これって裏口入学か? なんかすみません」


「いいんじゃないですかねぇー。お礼に異世界研究に協力すれば」


「う、うん。だから勇者役と魔王役の二人とは同級生? 同期生? になるんだ。仲良くなれるといいけど」


「ほうほう。それはそれは、話題性たっぷりの学年ですねぇ」


「でも、あんな奴らと同じこと習うとかムリゲーだよ。死ぬ自信がある」


「だいじょーぶ。そういう死線を潜り抜けて絆が深まるんですよ。いいなぁ、学生! 青春! 流した汗と血の数だけきらめく思い出!」


「オレの知ってる青春と違う」


「好きな子ができたらこっそり教えてくださいね!」


「絶対言わねぇ。ラジオでばらされる流れじゃん」


「純粋に応援してあげるのにー。王立学院の新入生のみなさん、そういうわけでツバサくんをよろしくお願いしますねー!」


「お、お手柔らかにお願いします」


「はーい、ではそろそろ次のお便りに行きましょうか。ラジオネーム“ニンジン大嫌い”さん――」





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