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玉龍とのこと


[シャミセンのレベルが上昇しました]

[セイフウのレベルが上昇しました]

[メイゲツのレベルが上昇しました]

[レイドボスクリアアイテム[メダルのかけら]を手に入れました]

[SRアイテム[玉龍(ぎょくりゅう)の髪飾り]を手に入れました]

[ステージクリア特典として、パーティーのHPとMPを全回復。5000Nがプレイヤーそれぞれに与えられます]



 インフォメーションと同時に、ゴウコウがいた場所にメダルのかけらが3つと、髪飾りが現れた。



 メダルのかけらは形が同じものだった。複雑な形だった。

 もうひとつの[玉龍の髪飾り]っていうのは?

 それを手に取って鑑定してみた。



 [玉龍の髪飾り] I+30 L+20 ランクSR

 通常攻撃のさい、モンスターにマヒ効果を与えることができる。

 ■■■■■■■



 説明の割にステータス増加がいいんですが?

 しかもなんかほかにも効果がありそうだ。



「シャ、シャミセンさん? な、何だったんですか? 今の……」


 双子が目を見開いてオレを見てる。


「えっと、あれなぁ」


 正直言って、あれって魔法なのか?

 チャージと違って、魔法取得のアナウンスもなかったし。

 とりあえず図鑑には載っているだろうから調べてみよう。



 まずは[紫雲の法衣]と一緒に手に入れた[ライティング・ブラスト]について……。



 [ライティング・ブラスト] 属性・陽

 ライトニングの変異魔法。

 最初はちいさく弱いが、ダメージにクリティカルが追加されると、ふたたび光の矢が作り出され攻撃を繰り返し、クリティカルが続くほどダメージが蓄積される。。

 その攻撃はクリティカルダメージがなくなるまで、永遠に繰り返される。



 なんかすごい複雑な魔法だった。


「えっと、つまりクリティカルが続くと、その回数だけダメージが増加するってことですか?」


 セイフウが首をかしげる。


「あ~っと、なんかそういう、似たような昔話があったような気が……」


「あれじゃないですかね? 最初に一粒の米粒をもらって、翌日は前日の倍の米粒をもらうっていう」


 そうそうそれそれ。メイゲツが喉に引っかかった魚の骨を取ってくれた。

 ようするに最初は1しかないダメージでも、クリティカルが続くごとに、二回目は2、三回目が4……8、16、32、64、128、256、512、1024、2048……。

 と、ダメージが倍々になっていくというわけだ。



 さて、もうひとつの、[ワンチュエン]というやつ。

 魔法図鑑には載っていなかったので、体現スキルの方にも目を通してみたが……どういうわけか、どこにも載っていなかった。


「あぁっと……」


 オレはセイエイにチャットをかけてみた。



「もしもし……シャミセン?」


「あぁ、忙しいのにゴメンな」


「それは大丈夫。まだボス部屋見つけてないから……それでなんの用事?」


 オレはセイエイにゴウコウを倒したことと、その戦闘中に装備品が変化したこと。

 そして[ワンチュエン]について説明した。



「……なにそれ?」


 意外な反応だった。

 電話先のセイエイがいつもの淡々とした声とは違って、本当におどろいた声を上げている。


「えっ? 聞いたことない? 装備品が変化する? そんなことあるの? わたし初期のころからやってるけど、そんなこと一回も起きたことない。もしかして熟練値とか条件関係してる? それに[ワンチュエン]ってなに?」


 こっちが聞きたいことを逆に、捲し立てるように聞き返された。


「えっと、セイエイさんも知らないってことですか?」


「知らない以前に、シャミセン、[チャージ]を使う時の魔法詠唱をさらに伸ばしたの? 普通そんなことしないし、しかもそんな状況で?」


 これはまぁあれだね。[紫雲の法衣]の効果がなかったら絶対してなかった。

 本当に一秒の差だったものなぁ。

 ただ、もしソロでやっていたらそんな自殺行為はしていない。

 これはあれだ。チャージを取得する時、周りでビコウたちがオレを守ってくれたのと同じように、双子がオレを守ってくれると信じていたからできた。



「クエストが終わったらフチンとおねえちゃんに聞いてみる」


「頼んだ」


 相談相手が、この事態の理由がわからない以上、これ以上聞くことはできない。


「……やっぱりシャミセンってぜったいおかしい。なんかLUKとかじゃなくて、それ以上のなにかがある気がする」


 愚痴っぽいことを言いながら、セイエイは電話を切った。


「白状したほうがいいですよ。データを改造してるとか」


 双子がジッとオレを凝視する。

 してないから。というか、そこまでプログラミングの知識ないから。

 わけのわからないスキルを手に入れてしまい、オレは頭を抱えるしかなかった。



「あっ、これありがとうございました」


 メイゲツが羽織っていた[玉兎の法衣]をオレに渡す。

 咄嗟に法衣を羽織らしたが、どうやらかぶっていると、元々の装備に重なるようだ。

 両方ともというのは虫のいい話で、一番上の装備が優先されるとのこと。


「新しい装備を手に入れたし、こっちはLUKで体力が増加するみたいだからなぁ」


 常時HP回復は捨てがたいが、それよりも先に、いつもどおりレベルアップのポイントをすべてLUKに振り分けてみた。

 これでLUKの合計値は185になって、VITは基礎の9に55増加される。

 ということは合計で64になるから、計算するとHPが768になるわけだ。



「それで、この[玉龍の髪飾り]は誰が持ちます?」


 セイフウがオレにたずねる。


「ゴウコウを倒したのはシャミセンさんの[ライティング・ブラスト]ですから、シャミセンさんが装備するべきだと思いますよ」


 メイゲツが目でセイフウに訴えた。


「うーん、オレもそれには賛成だけど、あの妙なバグが気になるなぁ。なんか呪われそうな気がする」


 セイフウが視線をオレに向け、そう言い放つ。

 保険ですか? もしもの時の保険ですか?


「でもセイフウにもいいかもしれんぞ?」


 別に喧嘩する気はないが、売り言葉に買い言葉だ。


「どういうことですか?」


「ほら攻撃するとマヒ効果を与えられるから、猟にいい」


 あぁなるほどと、セイフウは納得した表情で手を叩いた。


「でもオレもシャミセンさんがいいと思います」


 頑固だねぇ。まぁもらえるならもらうけどさ。



 さて、その[玉龍の髪飾り]を装備すると、LUKが20増えるわけだから、合計が205になって、その30%……61がVITに増加する。

 ということは、70だから――HPの最大値は840になる。

 ついでに言うとINTの合計値は100だから、MPの最大値は1150……

 なんかすごいことになってる。

 [紫雲の法衣]のもうひとつの効果である、モンスターからの魔法効果を無効化できる確率は60%超えになった。



 [64:24]



 クエストの残り時間を確認してみると、開始してから十時間近く経とうとしていた。


「そういえばなにも食べていませんでしたね」


 メイゲツの言葉で、オレとセイフウのお腹が鳴った。

 それに気付いてか、それとも気付かないふりか、メイゲツはアイテム欄からランチボックスとシートを取り出し、シートを床に敷くと、ランチボックスをひろげた。


「シャミセンさんの分もありますよ」


 何故に? と思ったら作り過ぎたらしい。

 ゲームの中で料理ができるというのは、前の、隠しダンジョンでのバカンスで知ったが、重箱はちょっとやり過ぎじゃないかね?

 とりあえずボス部屋を見渡したが、セーフスポットらしく、モンスターの出現もなさそうだ。

 ……だいたい一時間くらいで食事を済ませた。


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