兄弟衝突
姉王に向けて氷の矢が飛来する。
しかし、スティエラは避けようともしていなかった。
彼女は自分自身の命を彼女に任せていたから。
彼女──青髪の少女がスティエラの前に立つ。そして、細身の剣で氷の矢を残らず叩き落とした。
氷の飛沫をあげながら、少女は剣を振り上げ声をあげた。
「反逆の蛮族ども! 私はマナ、王家を守る青のシラルガン! 女王への危害、交渉は決裂と見た!
ならば殺す! 来るがいい、全力で迎え撃とう!」
当然だ、とアルゼリータは呟く。
「あいつは青だといったな?」
「んだ。戦闘でいえば赤の下で緑の上だな。
マナ・ブラウ・シラルガン。もしかしたら……」
ロゼイルの言葉はそこで途切れた。
前方から迎え撃ってるくる騎馬隊が見えたからだ。
そして、そのなかには
「お兄様ーッ!」
「マルイスかッ!」
次の言葉より先に剣が衝突した。
後陣も続けて戦闘に入る。
「久しぶりですね。お元気そうで」
「あぁ、こうして剣を交えるくらい元気さ」
キリキリと音をたてる剣。
「夢でした。こうして戦うこと。そしてバカなお兄様。どちらにせよ、死ぬのは変わりないのに」
「だからこそ、お前を突破する」
剣を弾き、マルイスの腕を氷で固める。
氷結し動かなくなった腕を剣で刺し貫く。
「ヴぅぁぁァァァァァーーーッ!」
痛みで苦悶する。が、氷のおかげで出血は少ない。
「精霊のちからなんて…ズルいです…」
「これがお前達が捨てた力だ。お前の敗因は…そうだな、剣を教えたのはオレだということ。オレを敵に回したことだ」
脱力するマルイス。先程の勇ましい面影はない。
そんな様子に、もう用済みだ、とマルイスにとどめを刺す。
首目掛けて剣を振りおろし、マルイスは「ギッ」と小さく声をだして絶命した。
その姿は生前の可愛らしい王子の顔ではなく、目を見開き苦しみに満ちた戦士の顔だった。
「王子の首、ここに討ち取った!後は城に進むのみさぁ進めぇ!」
アルゼリータの軍は士気そのままに進軍する。
が、討ち取った本人はその場にとどまりマルイスの首をみつめた。
「オレは学ではなく剣を教えた。もし、その学も教えていたのなら、きっとこんな結末にはならなかったかもな」
マルイスはそもそも王家に向いていない。むしろ平民としての生活の方が、ありきたりな人並みの幸せを掴めたのでは、と殺してから思うのだ。
「弟の死なのに涙なんか出てきやしないよ」
眠りにつかせるように、マルイスの瞼をそっとおろした。




