心を隠し、武器を仕込む
紅茶の馨しい香りで、ミリエラは目を覚ました。アルゼリータから与えられた個人部屋は広いとは言えず殺風景であり、豪華な調度品に囲まれて育ったミリエラにとって、物足りないものであった。
「おはようございます。お嬢様」
「本日はカモミールティーをご準備しております」
壁際に控えていた双子の従者、ジレーガとジレーザは、起き抜けのミリエラに紅茶を差し出す。
「ありがとう。ちなみに、茶葉の残量は?」
「十分にございます。ただ、菓子のスコーンが少々足りなくなるかと」
「そう、ジレーザ! スコーン、様子見て作っておいて!」
「かしこまりました」
抑揚なく返事をすると、続けて身支度へと移り変わる。整髪の香油をオレンジ色のロングヘアーに馴染ませていく。
「お嬢様、髪が少々痛んでいるようです。今晩は髪を手入れした方がよろしいかと」
「あら、こんな生活しているからかしら? ジレーガ! 今晩よろしくね」
「かしこまりました」
主に、ジレーザは食事全般。ジレーガは身支度全般を担当していた。
どちらも忠実で、淡々と任をこなすコンフィートの従者。リラックスモード全開で、ミリエラは身を任せていた。
すると、ミリエラの様子が少し変わってきた。
「お嬢様?」
心配そうに声をかけると、ミリエラは目を擦りながら言った。
「ちょっと眠くなってきたみたい」
急激な眠気に襲われ、そのままこてん、と眠ってしまう。安らかな眠りについたミリエラを横抱きに抱えベッドへ移動させる。
寝息を立てて眠るミリエラを見て2人は呟く。
「お嬢様はどうかこのまま」
「全てが終わるまで、我々がお守り致します」
だから、どうか──
何も知らないままの、無垢なお嬢様でいて欲しい。
我々の『本当』を見ないで欲しい。
仕える時に決めたこと……。『守る』ことを今、果たさせて欲しい。
色んな感情が入り混じるなか、ジレーガとジレーザは行動を開始する。
「オレたちの目的は唯一つ」
「ロゼを……、根絶やしにすること……!」
確固たる目的を胸に、2人は風のように部屋を出た。その身体には、様々な武器が隠されている。
『暗器』
それは、ベルデが最も得意とする殺しの芸当だった。




