朝
朝、わたしは自分の部屋の中のベッドで眼が覚めます。
そして身支度を済ませ、高校の制服に着替えて、一階のリビングに向かいます。
「おはよう」
わたしが声をかけると、
「おはようさん」
お祖母ちゃんだけが、返事を返してくれます。
同じ部屋にいるのに、お父さんもお母さんも兄さんも妹も、わたしを無視します。
まるでわたしの存在など、無いように…。
わたしは唇を噛みしめ、ソファーに座るお祖母ちゃんの隣に座りました。
「…今日も無視されちゃった」
アハハと苦笑しながら言うと、お祖母ちゃんは笑顔を曇らせました。
「美羽ちゃん…」
「んっ、でも良いの。朝食準備してくれるし」
お祖母ちゃんは歯が弱っているので、後から家族とは違う朝食を食べます。
挨拶を無視されても、朝食はいっつもわたしの席に用意されるのです。
「みんな、ご飯できたわよ」
お母さんが少し暗い顔でこちらを向きます。
「じゃあ食べてくるね」
「…ああ」
お祖母ちゃんをソファーに残して、イスに座ります。
今日はご飯に豆腐とワカメの味噌汁、目玉焼きにウインナーです。
「わあ! 今日はわたしの好きなメニューだね」
明るく言うも、家族のみんなは暗い表情で各々食べ始めてしまいました。
「えへへ…」
わたしは泣きそうになるのをこらえながら、朝食を食べ始めます。
朝から暗い顔をしてはダメです!
そして重い空気の中、朝食の時間は過ぎていきました。
カバンを持って、わたしは家族に「行ってきます」を言おうとしました。
けれど兄さんが、真剣な表情でお母さんに向き合っていました。
「母さん、こう言うのもなんだけど…もう美羽の食事、用意するの止めたら?」
「えっ…?」
兄さんの言葉を理解するのに、時間がかかりました。
その言葉の意味は、ジワジワと心に冷たく沁み渡ります。
「…っ! 何でそんなことを言うの?」
洗っていたお皿をぎゅっと握りしめ、お母さんは辛そうに俯きました。
「理由は分かっているはずだ。もういい加減にした方がいい」
「やめてっ!」
お母さんはお皿を手放し、両耳を塞いでしまいます。
「言わないで! どうしてもっ…作ってしまうんだから、しょうがないでしょう!」
「母さん…」
その場で蹲ってしまうお母さんと、立ち尽くす兄さん。
騒ぎを聞きつけ、お父さんと妹がリビングに駆けつけてきました。
わたしは居た堪れなくなって、家を飛び出してしまいました。
兄さんがあんなことを言い出すなんて…わたし、何かしたんでしょうか?




