ドラゴンの生贄にされた口数少ない乙女は、知識も胆力もなくてもダンジョンを踏破する

　貴族令嬢ティア＝アン・ケーナは、魯鈍で愚鈍、おまけに体が弱く、家族からも見放されるようなぼんやり娘だ。これまでに三度婚約に失敗し、当人も結婚を諦めている。死の床にある祖父の話し相手をし、幼い頃短い期間過ごした山でのことを夢に見、植物ならば誰に気兼ねすることもないのにと空想する日々だった。
　そこへ、公爵・ノウェスパルがあらわれる。彼は宮廷から遣わされていた。なんと、聡明で美男子と噂も高い王子が、ティア＝アンを妻に迎えたいといっているのだという。
　美貌もなく、家柄もたいしたことはなく、いったいなぜ自分がと戸惑う彼女だったが、断れずに宮廷へ参じた。そこでは王子・カイが待っていて、彼女は王族や宮廷人達からあたたかく歓迎される。
　だが、この結婚には裏があった。彼女は王家の象徴でもあるドラゴンへの、生贄だったのだ。





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