炎対加速
どうやって組織に潜入するのか?
治は高倉に接触を試みるが・・・・
ボボワーッ!!!ボボーッツ・・・・・ブオボワーッ・・・・・・
完全に炎に囲まれている。見渡せば治を中心に直径20mほどの火の輪が出来上がっていた。
『ァッチー・・・・誰だよ!組織に潜り込むチャンス!とか何とか・・・・』
『今そんな事を言っている場合か?!とにかくこの場から離れなければ骨まで灰にされるぞ!』
アースとの会話を脳で交わしながら、治はなんとか高倉の繰り出す炎から逃れるすべを探していた。
「どうした!!イレギュラー!!!もう逃げる場所などないぞ!!奥の手があるなら早く見せてみろ!!」
高倉はこちらに向かって挑発を続ける。
高倉の炎はガソリンなどの引火と違い、燃料や酸素がなくとも激しく燃え盛る、迷っている間に炎の壁は周りが見えぬ程(3メートル)に成長している。しかも、少しずつ炎の輪はせまくなってきているようだ・・・・・・
アースに『組織と接触しろ』と言われた治は、階堂の元に毎日のように通い、高倉のスケジュールを把握していった。ボクシングの試合の解説者という特殊な仕事の肩書きを持つ高倉は、タイトルマッチやテレビ中継がある場合だけ東京におり、その他は全国のジムで指導者としての顔も持っていた。昨日は博多で今日は大阪・・・・とにかく捕まらないのである。
やっと在京中の高倉の宿泊先が判ったのは、それから二週間も後の事だった。
階堂に調べて貰った高倉の携帯に電話をかける。
『・・・・どなたですか?』
『柴田治といいますが・・・』
『・・・・・なんだ?何の用だ?』
『会って話がしたいんだが・・・』
しばらく間が空いた。
『いいだろう。ここがどこかは・・・把握しているんだろう?』
『ああ、有明ベイホテルだろ?』
『ならいい・・・・このホテルから北に1キロほどいくと有明という駅がある。そこの前に広場があるの、判るか?』
『ああ、多分わかる』
『そこに30分後に一人で来い。』
それだけ告げると高倉は一方的に電話を切った。実はホテルの傍まで来ていた治である。ゆっくり約束の場所に歩いて行った。
時間はもう深夜1:00、誰の姿もない。もともと工場などの開発地区である。夜も遅くなるとカップルや酔っぱらいすらいない。話しをするにはお誂えむきである。いや話以外になったとしても・・・・・
今回は治一人で行動している。相手が高倉だけであれば、最悪限定解除すればヤラレル事はない。
そういって、香奈や階堂を説き伏せてきた。もし三人で来れば、高倉と戦闘になった場合、最後まで抵抗されて殺してしまうかもしれない。だが、れいの不思議な化け物を駆除できるのは、今のところ高倉の能力だけなのだ。できれば共闘したい。
一人でくれば殺さずに済むかもしれない・・・・治はそう思っていた。
周りを見渡して、何の変化もない事を確認した治に
『加速しろ!油断するな!!』
アースの声が響く。その瞬間、頭上20m程の高さから直径2メートル程はある火の玉がふりかかってきた!!!
とっさに加速した治は横移動でステップしながら高倉の場所を探す。
ズドーンッズドーンッ!!
二発続けて火の玉が落ちた。
周りを見渡しながら、次々と落下する巨大な火の玉を避ける。
いろんな方向から出現する炎の玉にかく乱されて、高倉の居場所が判らない。おなじ動作を何度もやってから、治は頭上に火の玉がある一瞬だけ限定解除する。
周りをぐるりと見渡せば・・・・・・いた!!駅の階段の中腹に高倉は潜んでいた。
確認を終えて、いったん炎の下に戻り通常加速に戻る。
そして、同じ動きを続けるふりをしながら、タクシー乗り場や、バス乗り場に近づき、ブロックや立て看板などを一か所に集めた。
高倉はと言えば、だいたい20秒間隔で大きな炎の玉を二発ずつ落としてくる。
治は間隔の合間に反撃を開始した。
まず手元にあるブロックを高倉の足元に投げつける。
パーンッ!
それを高倉が避ける方向に合わせて2撃目
パパーンッ
そのままバス停の立て看板を右手に持ち、高倉の方向にまっしぐらに進んだ。
あと2〜3歩で治の攻撃距離に入る。
『気絶くらいはさせておくか・・・』
そう思い、軽く右手の武器?を振り抜こうとして瞬間目の前が真っ白になった。
ドドーンッ!!
一瞬記憶が飛んだが・・・・すぐに現状把握。さっき近づいていた距離が、また10メートル程離れて、治は尻もちを付いている。どうやら目の前で炎の玉を炸裂させられたらしい。自分の服があちこち焦げていた。
「ふん・・・・・ナマジッカ丈夫に出来ていると、あとで長く苦しむだけだ。一瞬で焼きつくしてやる。」
そういうと、高倉は両手を振り上げて前に付きだした。
ボボーウッ!!!
治のまわりに炎の壁が綺麗な円を描いて出来上がった。
『ァッチー・・・・誰だよ!組織に潜り込むチャンス!とか何とか・・・・』
『今そんな事を言っている場合か?!とにかくこの場から離れなければ骨まで灰にされるぞ!』
アースとの会話を脳で交わしながら、治はなんとか高倉の繰り出す炎から逃れるすべを探していた。
とにかく、この場所から移動しなければ、炎に冗談ではなく綺麗に焼かれてしまう!!
『手の内見せたくないんだけどなぁ・・・・』
治は限定解除して、止まった炎の上をジャンプで越え、そのまま高倉のいるところまで移動、首に両手を添えて軽く締め・・・・通常加速に戻す。
「ここまでだ。」
後ろから首を掴んでいるので、表情は読み取れないが・・・・
「・・・っく・・・何だ・・・今のは?」
驚いているのは確かなようだ。
「まあ黙って話を聞いてくれ。」
「・・・・・」
「俺は、あの化け物が出現した場合の為にあんたと共闘したい。そういいに来た。あんたを不意打ちで殺すつもりなんかないって事をまず言っておく。手を・・・・離すぞ・・・暴れるなよ」
ゆっくりと拘束を解く。
首をなでながら、高倉は喋り出す。
「・・・・やはり存在したんだな・・・特殊能力が・・・」
「ああ、まあそんな事よりも・・・・あれって、やっぱり統治者が作ってるんじゃないのか?」
治は単刀直入に尋ねる。
「・・・・わからん。あれから統治者にも重力マスターの少年にも連絡が取れない。」
「・・・・じゃあ、今組織は?」
「ほとんどがあの二人からの連絡で我々は動いていた。だから、どんな活動をしているのか?それさえ俺には判らん。」
以外な言葉だった。高倉とさえ接触できれば、組織の事が解るとふんでいた治からすると信じられない事態である。
「・・・・じゃ、じゃあ・・・・また出るかもしれないってのか?あんなのが・・・・」
「我々組織からの物ならば・・・な。」
「統治者が噛んでいるのは間違いないぞ。」
「ふん・・・どうだかわからんがな、その可能性がある。と言うだけの事だ。」
「そうか・・・・あんたはどうするつもりだ?」
「決まってる。あんなものを使って世界を狂わせるなんて話は聞いていない!あれに関しては、排除するのみ。」
「裏切るって事か?」
「勘違いするな!あれにかんしては・・・だ。元々の計画にあんなものはなかった。」
「計画?詳しく教えてくれないか?」
「統治者がなにをやるのか・・・・そしてお前の、イレギュラーの役割は何なのか・・・お前は知っているのだろう・・・・・それを実現させるのが俺の仕事だ。」
「・・・・そうか、やっぱりそれが目的なのか・・・・」
治はこの先に最悪の物語が待っている事を知る。
やはり統治者は『終焉の魂』を使って世界を破滅させるつもりのようだ・・・・
どうやってそれを防ぐのか?または?・・・・・
更新遅くなりました。これからは何とか週一ペースぐらいに・・・・・できるかな・・・・