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風雲の場所  作者: yunika
第一章
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四十七.その後の顛末

その朝ラニッジ鉱山の爆破は国中で大々的に

報じられ、号外まで出る騒ぎとなった。

ビャッコは事の顛末を伝えるべく、

リオネルとヴィヴィアンとともに王宮へと

出向いて行った。


「せっかく従業員達が戻ったところなのにね。

 親方達大丈夫かな」


ハクアは庭でごろりと寝そべる

シルクスの白銀の角をまじまじと眺める。


「なんだ。私の角がそんなに美しいか。

 写真を撮りたいのならこの角度がお勧めだ」


シルクスはのそりと立ち上がり、逆光を避け

目を光らせると角を斜め四十五度に向ける。


「これならば修正なしでも大丈夫」


「修正って何のこと?


 いや、それより教授から聞いたんだ。

 滝の一族は君達みたいな生き物の角を

 酒に漬け込んでるって」


シルクスはやれやれと首を振り、

その場にしゃがみこむ。


「私達みたいな生物じゃない。

 あれは私の友人であり仲間の角だ。

 以前話した通り、私は奴らに追われた。

 この角を狙ってな……!


 ともに追われた仲間は私を庇い、

 角を奪われたのだ。奴らがせっせと

 酒に漬け込んでいるのはその角だ」


まったく愚かな、とシルクスは悪態をついた。

ハクアもシルクスに合わせて座り込む。


「何の力があるの? ……その角」


「お前たちの始祖トージャも得た力さ。

 兎の驚く俊敏力と、あとはそうだな……

 マッチョとハイタッチレベルのパワー、

 それからほんのりピーチの香りなどなど。

 まあ、それ以上は聞くな。嫌なことを思い出す」


そのとき、近くで子ども達の声が聞こえてきた。

道場に手習いに来ている子達だろうか、

シルクスは苦いものを見るような顔つきをした。


「ううむ、またじゃれつかれそうだ。

 よって我は退避する」


そう言うなりシルクスは

山の方へとばさりと飛び去って行った。




やがて高学院が冬休みに入る頃、

ヴィヴィアンは教授として復帰していた。


アンスルが勝手に書いた辞職願は

当然の如く不受理に終わったらしい。

その学院で理事員を務めるコノクロ卿は

大きな資金源を失ったものの、未だ国の

そこらじゅうで権力を奮っているようで、

その影響力は未だ衰えることを知らず。


だが、それも時間の問題だろうという

民衆の声もけして少なくはなかった。


しかしながらコノクロ卿に目をつけられた

テンジャクの退学処分は撤回に至らず、

彼は学ぶ地を移すべく引っ越しの準備やら

編入の手続きやらで忙しくしていた。


冬休みの間にあちこち見回って決めると

言ったものの彼の編入先はすぐに決まった。

国境の街フラウェルにあるアルテ高学院という

場所らしい。この決断にはハクアやミードも

いささか驚きであった。


「芸術系の高学院だろ?

 いいのかな?」


元より彼やミードが通うスカイジオ高学院は

芸術系とはほぼ無縁に政治や経済、科学研究に

特化した学院である。

そして国の主要部で仕事を担う人物となりたい

少年少女が通う場所であり、軍人になりたい

ハクアにとっても、いずれ彼が幹職を志すで

あろうことを見越しての志望校だ。


二人の驚きに対し、テンジャクは


「ラキニルにいる父さんに、たまに

 国境で会えるかもしれないしね」


とだけ、寂しげに笑って答えた。



そんな中、ある日ミードが一人ハクアの家に

やって来てはこたつでミカンを食べていた。


「コノクロの鉱山が爆発したの、

 本当に事故だったのかな」


政府の隠ぺいというべきか、

滝の一族への配慮というべきか。

ラニッジ鉱山の爆破騒ぎは公には

事故扱いということになっていた。


「だけど俺、実はその現場にいたんだよね」


ハクアはふふんと自慢げに語った。

それを聞くなりミードはずずいとハクアに迫る。


「ホントかよ、詳しく話せ」


「真犯人はアンスル助手と滝の一族の奴らだよ。

 俺、奴らと一戦交えたんだ。凄いだろ。

 あ、でもこれ内緒だぞ」


そう言いハクアは人差し指を自身の口に当てる。


「滝の一族……」


ミードがその言葉を繰り返したと思えば

ふとミカンの皮を剥く手を止める。


「そういえばよ……

 俺からもここだけの話なんだけど」


ミードが頭をぽりぽりと、何やら

話し出しにくそうな雰囲気を醸し出す。


「何?」


ハクアはその続きを待った。


「……あのよ、テンジャクには内緒だぞ」


「!?」



その日その頃、王宮内では軍関係者

ならびに外交関係者や役人たちが

鉱山爆破の顛末における会議を開いていた。


リオネルが資料に目を徹しながらぼやく。


「思った通り、黙っていれば向こうから

 見舞金と軍事支援が届きましたね。

 軍事配分は軍部にお任せします」


軍部から出席していたアジュール中将は

うむと頷きつつ、


「金と力はやるから黙っていろ、か。

 そして敵に回せる相手でもなし、か」


と眉根に皺を寄せる。そんな中将に対し、

リオネルの隣にいた若い役人が宥めつつ、


「外交条件を与える隙が出来たと思うしか。

 さて、鉱山の復旧作業はどのように?」


と息撒いて腕組みする。

これに対しリオネルは、あんた馬鹿かと罵り。


「アンスル氏による虚偽発表が為されたものの

 そもそも鉱山は有害レベルの毒があったのを

 お忘れで? 閉山に決まっているでしょうが」


若い役人はそんなリオネルに食いつく。


「しかし、あそこは鉱山の中でも第一級に

 所要な場所。閉山してしまっては国の

 産業に多大な影響を与えかねません。

 その点についてはいかがお考えですか?


 あと従業員の方々も今は他の鉱山にて

 働いておられるようですが、雇い主である

 コノクロ卿の懐は今後狭くなるでしょう。

 ある時点での大量解雇もあり得ますよ」


そのとき、アジュール中将が挙手した。


「雇用口については、私に良い案がございます」

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