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風雲の場所  作者: yunika
第一章
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四十八.希望と疑問と

冬休みが明けて間も無く、ハクアは

草木を霜が飾る土手にやってきていた。

その周りには彼をぐるりと取り囲む

数十人の人影が。

その正体はコートを来た役人数人と

それからジャンパーを着込んだ兵隊数人、

あとは作業着姿の大人が大勢。


土手の傍らではスイレン一の河川、

ヘビ川がうねうねと静かに流れている。

その静けさたるやまるで何かこちらの様子を

聞き耳を立てて伺っているかのようだ。


この日、ハクアの思いついた河川工事が

ついに着工しようとしていたのである。

ハクアは土手に集まった面々を眺め、

懐しさと驚きに矯声をあげた。


なんとそこにはラニッジ鉱山で働いていた

面々がそろっていたのだ。


「ヒムカさん、メリザさん!

 どうしてここに!?」


「鉱山が爆発しちまったからな。

 他の鉱山で働いていたが、どうにも

 景気が悪くなったもんで他の仕事に

 ありつけないかと考えていたのさ」


「そんなときにこのお方が声を

 かけてくだすってね」


そう言い女親方のメリザはハクアの後ろに

立つアジュール中将を示す。


アジュールはニヤリとしたりつつ、

またゴホン、と咳払いし胸を張りつつ。


「今日より我々スイレンの民を悩ませる

 ヘビ川氾濫を防ぐ改修工事に着工する。


 警備、保全は我々にお任せを。それでは

 発起人であるハクア君、一言どうぞ」


「ええっ!? 

 ……えーと。

 まずは鉱山が爆破して色々と大変だった

 方もいると思います。

 あと、ここの水害でも毎年大変な目に

 合われている方も多いと思います。

 大変なことは沢山あるけれど、

 出来ることも沢山ある。

 そういったことを繋げていけば、

 この場所はもっと良くなると思う。


 ……気を付けて頑張って下さい」

 

ハクアはぺこりと頭を下げた。

途端に拍手とともに、やってやるぜ! と

ばかりに拳を、雄叫びを上げる作業員達。


さらにハクアの肩をポンと叩くアジュール。

その後ろにはいつのまにかリオネルと

ヴィヴィアン教授の姉妹が立っていた。


ヴィヴィアンはほほ笑みながら、後ろ手から

薄い茶封筒を取り出しハクアにそっと渡す。


「少し気が早いと思いますが、どうぞ」


続いてリオネルも同じものを、しかし乱雑に

ぽいっと投げてよこし。


中将もまた茶封筒を、豪快にハクアの肩を

叩きながら傍らから。


「なに、君の父上には了承済みだ。

 君に感銘を受けた者同士、それぞれから

 感謝を込めて、高学院への推薦状だ!」


目をパチクリさせるハクアに、

ヴィヴィアンが説明を加える。


「高学院の理事を務めるコノクロ卿に

 暴れん坊だと言われ、高学院への進学に

 眉をひそめられた貴方。しかしこの私達が

 貴方の身を、貴方が聡い少年であることを

 保証します。もちろん対価は問いません」


「通常ならば一枚で十分なところを三枚もの

 推薦状とは、これには理事会も二つ返事で

 了承するしかないだろうな」


アジュールは嬉しそうにうむうむと頷いた。


「しかしコノクロ卿は、そう長くは理事を

 務められないでしょうがね」


リオネルが煙草に火をつけながら話す。


「資金源であるが大損壊な上に、これまでの

 悪評から彼を守る者はいないようですから」


「もう少し待てば、あるいはテンジャク君も

 学院に留まれたかもしれません。

 ……ただタイミングが悪かったとしか」


ヴィヴィアンは哀しげに顔を俯かせる。

だがハクアの頭をするりと撫で、


「彼の分も、頑張ってくださいね」


と柔らかく笑った。

ハクアは嬉しいやら照れるやらで、はにかみ

つつもテンジャクの名を耳にし、ふと先日の

ミードとの会話を思い出し顔を曇らせた。




そのころ王宮内の大会議場では、奥の席に

ハクアの父でありミードやテンジャクの

進学にあたり推薦人を務めたビャッコの姿が。


そこでは彼に向い何やら訝るような、また

憐れめいた表情を見せつつ資料を片手に

淡々と説明を読み上げる役人らしき男の姿が。


「鉱山の爆破事件を蒸し返しますが、

 気になる報告が一つございます。

 鉱山で見つかった爆発物の破片や火薬を

 念入りに調べました所、一部の部品は

 隣国のラキニル製であると判明しました」


高官はさらに話を続ける。


「さらにその部品を製造した工場の大元を

 辿って行きますと、数年前コノクロ卿に

 刃向いこの国を出入り禁止になった人物、

 ヴァッガス・ウェルズ氏に行きつきます。


 貴方は彼の友人であり、彼がコノクロ卿に

 阻まれ追放された後も彼の息子の進学を

 後押しする程のご関係。


 この事案についてどのような見解をお持ち

 でしょうか、ビャッコ大将殿」


――ヴァッガス。ハクアの兄貴分の一人、

 ミードの父親だ。


ビャッコは静まり返る会議場内でただ一人、

顔をしかめるのであった。




河川から一人歩いて帰るハクアの脳裏には

先日のミードの打ち明けが再生される。


「鉱山でさ、俺、コノクロ達の前で大騒ぎ

 しただろ? 奴に名誉毀損だとか散々に

 言われて退学させられそうになったやつ。


 実はあれ、わざとだったんだ。

 テンジャクなら俺を庇うと思ってよ」




そのとき、ハクアは返す言葉に詰まった。

日にちが経った今ですら気持ちを言葉に

することが出来ず、やり場のない苛立ちが

次々とハクアの胸に込み上げてくる。


ハクアは自身で手にした功績の証である

三枚の推薦状を握りしめるも、彼の心は

晴れないままであった。


ミードを庇って退学となったテンジャクは

二年生になる春、国境の街フラウェルへと

引っ越し、その街にある高学院へと編入

していった。

その一年後、ハクアはようやく夢見た

スカイジオ高学院に入学することと

なったのである。

いつもお読み頂き有難うございます。

これにて第一章は完結です。

第二章開始までしばらくお待ちください。


                yunika

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