02.私達は分かってる……クラスは大体良くなった!
週末を挟んでも状況は変わらなかった。それどころか体育を一緒に受ける4組にも余波が広がり、おしゃれ系グループと親しい連中からも非難されるようになった。
12日の始業直前、鮎川が教室に入ると紙玉を投げられた。やったのは最初に絡んで来た下っ端だった。
「鮎川ぁ、さっきあんたの友達来たよぉ。あんたの事言っといたからぁ」
鮎川は黙って頷き、投げられたゴミを捨てた。
それ以降何もなく1日が終わると、体育会系グループはそれぞれ部活に向かった。鮎川は空手部の部室で南境に会った。
「3組、大変だな」
「うん。あ、もしかして、朝来たのって南境?」
「あぁ。お前いなくて、ケバいのに訳分かんねぇ事言われたから即帰ったけど」
「そう……言っとくけど、あたしら何もしてないかんね? 流留も双葉も、つるんでる他の子達も」
「分かってる。真犯人は別だよ、あのな――」
南境は今周りで起こっている出来事について鮎川に話した。
「――そっかぁ。何か、大事になりそうな気がする」
「俺もそう思う」
「この話知ってんの南境と、友達と、あたしだけ?」
「いや、関わってる他の奴らにもちょこちょこ話してる。3組には海椰が言うって」
「そうなんだ、良かったぁ」
南境の話を聞いて鮎川は安心した。
「ありがとね。でさ、話変わるけど、南境それ……」
鮎川は南境の髪飾りを指差した。
「作ったの?」
「あぁ」
「すごっ!! 流石だぁ」
「まぁな」
和やかな雰囲気になった。間もなく、いつも通りの練習が始まった。
次の日、鮎川は以前のようにまっすぐ教室に行ってみた。
「わー、鮎川来たー!!」
「何平気な顔してんのぉ?」
下っ端達が野次を飛ばした。
「鮎川さん、あの子達の言う事は気にしないで」
そう言ったのは湊だった。
「誰が何言っても分からないみたいなの。私達は違うから、大丈夫」
「湊、てめぇ……」
「何とでも言えば?」
湊が突っ掛かる下っ端に一言吐き捨てた。
その後、流留達も教室に集まり、各自昨日聞いた話を確かめ合った。湊ら派閥争い不参加者は先日の史衣那への嫌がらせについて、全て仕組んだ者の仕業と考え鮎川達が無実だと信じたが、おしゃれ系グループは普段から反りが合わない事もあって疑ったまま、周りの言う事を一切受け入れていないそうだ。
「そうだ、先生達は?」
鮎川は湊に尋ねた。
「灯華さんと灯樹君が話しに行ってる」
その後朝のSHRが始まり、担任が鮎川達に疑った事を謝罪した。意固地になっているおしゃれ系グループを除いて、クラスの雰囲気は問題が起こる前の物に近付いた。
放課後が始まってすぐ、他のクラスの女子生徒が3組に顔を出した。
「蛇田さん!」
灯華が蛇田を迎え入れた。
「あれから3組どう?」
「ほぼ元通り。あの頑固な子達以外だけどね」
「そっか」
「で、真犯人分かった?」
「まだまだだよー」
「そうなんだぁ……1組の事もあるし、頑張って!」
「うん!」
蛇田が帰った。その後3組はそれぞれに普段通り過ごした。