↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鮎川編  作者: 麦果
2/7

第1話 撃沈

「鮎川ぁーっ!!」

 2013年3月5日の朝、昇降口に明依亜と芽李の怒号が放たれた。

「なっ、なにさ!?」

「あゆさんじゃないよぉ」

 史衣、明神と摩麗の登場で話が勝手に進む。

 耳を傾けた所、史衣のブランケットがなくなっていたらしく、鮎川の他にも体育会系グループ全員を疑っていたが「陸部のとこ」で見つかった事で犯人は流留だと断定したそうだ。

「——じゃ、流留詰めっか。鮎川ごめ〜ん!」

 明依亜が走り去った。この後、流留が否認した事で彼女と同じ陸上競技部のありす、史衣らを嫌っている女子3人、流留と特に親しい双葉や伊吹、鮎川にも再び懐疑的な眼差しが向けられた。


 次の日。鮎川が教室に足を踏み入れると、体育会系グループとチームしいきゃらが睨み合っていた。

「今度はどうした!?」

「あゆさん、あのね」

「聞いてよあゆさん!! 史衣達さぁ——」

 流留を差し置いて大平(おおひら)とその同郷の2人が言うには、教卓に流留のジャージと『チームしいきゃらが捨ててました』と書かれたノートの切れ端が置かれていたようだ。

「——なのに、やってないって言うんだよ!?」

「大平、もういいって」

「良くないっ!!」

 大平達は興奮したままだが、流留はチームしいきゃらの仕業であるとみんなが分かれば大丈夫だそうだ。

「……もう嫌」

 そう呟いて席を離れたのは、いつも1人で居る湊だった。続いてクラス委員の灯華も立ち上がる。

「もう分かったから散って……鮎川さんも座りなよ」

「お、おう」

 鮎川は席に着いた。湊は始業後早退したらしく、翌日も学校に来なかった。


「あゆさん!」

 明くる日の朝、鮎川は青ざめた顔をした双葉に呼び止められた。

「流留のメール見た!?」

「メール? ……え」

 鮎川からも血の気が引いた。流留らしきアドレスから、

『部室の前にしいの膝掛け投げたの、あんた達の誰かでしょ? あんた達のせいで疑われたんだけど』

 というメールが届いていた。一斉送信先は鮎川と双葉、内田(うちだ)、大平、ありす、新堤(しんつつみ)、伊吹になっている。

「あっ、ちょっ、流留」

「和希!! お前、志栄(しえ)達疑ってんのか!?」

 大森(おおもり)が鮎川の声をかき消した。その間に流留は黙ったまま自分の席に腰を下ろす。

「え、なに? 俺は誰も」

「だったらなんだよ、これ!!」

 大森が和希にスマートフォンを突き付けた。

「俺のメアド? いや、でも」

「だからぁ!! 送ってないってばぁ!!」

 今度は彩加が史衣になんらかの無実を訴えるが、完全に無視されていた。混沌とした中、予鈴が鳴る。


 11日の昼休みまでには〝元〟二大派閥になにが起きていたのかが把握出来た。

 流留と和希に加え、彩加と史衣もメールで仲間割れをさせていたらしく、友人のほとんどが彼女達から離れた。鮎川と双葉もその一部である。

「——てか、和希君って謹慎だってね! そこ停学じゃないんだ〜」

「それ言っちゃあ流留としいとあやきゃらもじゃね?」

 鮎川は双葉に同調した。

「確かに! あ、でも、あやきゃら読モ休ませられてるよ。SNSに載ってた」

「ほーん」

 相槌を打ちながら横目で彩加の席を見やると、彼女の姿はなかった。流留は陸上競技の雑誌に夢中で、史衣には明神、明依亜と芽李が寄り添っている。


 放課後、鮎川は空手着姿で廊下を歩いていた。

(居た居た)

 同じ空手道部の南境(みなみざかい)は、2年4組の教室で狐崎(きつねざき)に捕まっていた。彼のお喋りが長い事は、双葉が時々ぼやいていたので知っている。

(しゃーないな)

 鮎川はその場で南境を待つ事にした。そうしている間にチャイムが鳴り、1組の生徒達が教室から出てきた。

 その1組と思しき女子2人が鮎川の近くで足を止め、小声で話していた時だった。

「なんなんだよ……人の命はおもちゃじゃねぇんだぞ、分かんねぇのかよ?」

 南境の声だ。彼女によると、誰かが流留と史衣を自殺させようとしているらしい。

「マジな話なら、そいつシメねぇと……奇数クラスおかしくなってんのも、そいつだったりしてな」

「南境っ!!」

 考える間もなく、鮎川は南境に駆け寄った。女子2人も付いてくる。

「3組あんなんなったの、誰かがやったって!?」

 鮎川は南境に問うた。恐らく1組の、三つ編みの女子も「カイちゃん」の事を尋ねていた。

「……あぁ。祖志継家とかいう、大バカ野郎の仕業かもしれねぇんだ。そこんとこ詳しい奴らは頼れねぇから……なぁ、みんな!」

 南境が鮎川も見知った顔——元1年3組の蛇田(へびた)と汐里(せり)、中埣(なかぞね)、埣寺(ぞねでら)とその友人、狐崎らサッカー部員を見回した。

「今、浦見台(ここ)で起こってる事、浦見台生(俺達)で解決しよう」

「おう!!」

 鮎川も、中埣達と口を揃えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。