月の者 ~近未来Ver.~
現代から未来へ――。
人類繁栄のために、まずは戦争をやめて兵器開発をやめること。
各国で資源開発や研究に取り組み、作物生産や漁業の発展を協力し合うこと。
皆共通に労働力を社会のために提供し、人類の発展成長に貢献すること。
そんな全人類の繁栄を第一目標に掲げた世界は、一気に科学発展の道を進んでいった。
まずは究極とされる交通手段が開発された。
コンピューター管理された車両専用道路。
これにより事故は一件もおきず、コンピューター管理された車で、誰でも地球の裏側に行けるようになった。
更に食料をも自ら生み出して満腹感を得る、食供給システムを完成させた。世界から食糧危機という不安がこれにより消えた。
子を生み出す行為も管理され、試験管から生まれた新世代の子供たちも誕生した。
そんな科学社会の中で、ある事件がおきたと騒ぎがおこる。
なんと光る木の中に子供がいたというのだ。発見したのは竹という木の節の中。
はるか昔に全滅した物を甦らせる。科学班がプロジェクトを進行していた最中の出来事であった。
管理された施設で科学班員に見守られながら子供は成長していった。しかも、研究中の竹から黄金が発見されるという奇妙な出来事も多発するようになった。
これはもしや、竹から生まれた女子がおこした奇跡なのでは?
科学者の数人は疑問を感じ、彼女と交流を強く望みたいという者も現れた。
交流を望む五人の男たちは毎日、彼女のもとを訪れては猛アピールする。これに閉口したのか、女性はある望みを語りはじめた。
「仏の御石の鉢、東の海にある蓬莱の玉の枝、唐土の火鼠の皮衣、龍の首の珠、燕が産んだ子安貝。いずれかをお持ちした方とならば、お付き合いいたします」
聞いた科学者の五人は彼女の発言に目を丸くした。
「いずれかということは、持ってきたら全員と付き合ってもらえるということか?」
「いや、全てを持ってきた者が勝ちということではないか?」
「時間勝負ということかな。どれも空間移動装置を使えば簡単に手に入れることが可能だ」
「彼女は研究対象になる。俺のものだ!」
「なにを言っている。研究対象ではない観察対象だ!」
過去では不可能と思われていたことも今では簡単にできるようになっていた。科学の発展は夢を現実にし、その夢は飽くなき好奇心を育てるのだ。
すると彼女は慌てたように答えた。
「私は月の都の者です。あの国から迎えがじきにきます。長い間、ここで過ごさせていただきましたが、すぐにお別れをいうことになります」
科学者五人は目を合わせた。そして、女性に「そうなのですか」と静かに返事をする。
「月に移住した者は一億人になっているんでしたっけ。それにしても月とは近い。あなたが不思議な存在なので、銀河の果てとか死の世界というような場所からきたのかと思いました。寂しいと言っていただければ、わたしは一時間もかからずに迎えに参ります」
「いや、俺が発明した移動装置は、もっとはやいですよ。あなたを寂しいと思わせるようなことはいたしません」
五人の男たちの中で争いがはじまった。
自分の発明のほうが優れている。彼女にふさわしいのは自分だと言い争いはじめる。
竹から生まれた彼女は悩むばかり。この男たちは、無理難題を簡単に可能にしてしまう男たち。
彼女はとうと息を吐く。そう、この物語は「今は昔~」から語られる物語ではなく、「今は未来~」からはじまる物語だ。
たった数時間で月面に到着し、簡単に宇宙旅行ができるようになった未来で、果たして月からの使者はくるのだろうかと彼女は不安になる。
「私、生まれる時代を間違えたかしら……」
朽ちた物語の台本を取り出した、かぐや姫は羽衣を纏う自分の姿を想像していた。




