↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集 ~一息~  作者: つるめぐみ
PR
53/114

怪獣

 地球にはヒーローが存在する。

 そして、ヒーローは地球の平和を守るため、大暴れする巨大怪獣に戦いを挑むのだ。

 今週も怪獣が現れた。突如、街中で大暴れをはじめた怪獣を前に、人々は成す術もなく逃げ惑うしかない。

 破壊の限りを尽くした怪獣は、今度は都市部に狙いを定めると、足元にある建物に構うことなく闊歩しはじめた。

 まるでドミノ倒しのように倒れていく高層住宅、踏み潰される高級車。電線を体に巻きつけながら進む怪獣は、紫電が飛び散っても痛みを感じない様子だ。

 その時、子供の泣き叫ぶ声がした。親とはぐれて、逃げ場を失ってしまったのだ。持ち上げられた怪獣の巨大な足の影が、子供を覆い尽くす。

 まさに絶体絶命である。

 その瞬間、ヒーローが上空から姿を現して着地。怪獣に攻撃を加えた。

「おおっ、ヒーローがきてくれたぞ。いいぞ、やっちまえ!」

 ヒーローの雄姿を見た人々から、歓喜の声があがる。皆がヒーローの勝利を信じているのだ。

 しかし、怪獣も黙ってはいない。すぐに立ちあがって反撃に転じていた。

 今日の怪獣もなかなかの強敵だが、ヒーローは毎週のように戦い続けてきているのだ。それに人々の応援が背中を押してくれている。

 決着はご想像通りのものだった。制限時間三分前に決着をつけると、ヒーローは最後の攻撃態勢に入った。

 必殺○ペシウ○光線だ!

 その時だった。突如、大きな影がヒーローを覆い尽くしたかと思うと、怪獣が二体、降下してきた。倒した怪獣よりも一回りは大きい二体だ。

 そして倒れていた怪獣が、顔をあげて叫んだ。

「父ちゃん、母ちゃん!」

 叫びが終わるよりも早く、ヒーローを睨んだ母親怪獣が持っている手提げバッグを振りあげる。

「うちの子に何するのよ!」

 強烈な一撃を受けたヒーローは、轟音を立てながら倒れ伏した。人々は倒れたヒーローの姿に何も言えないまま硬直するしかない。

 そんなヒーローと人々の反応に構わず、怪獣の母親が言い放った。

「地球が子供のよい情操教育の場と聞いてきたけど、それは大きな間違いだったわ。うちの子の教育方針は自由と破壊ですの」

 続けて怪獣の父親も口を開いた。

「そうだな。お前のような奴に、我が子は預けられん。うちの子は違う星で自由に育てることにしよう」

 言って怪獣親子は宇宙船を呼び出すと、体を縮小化させて乗りこんで彼方に消えた。

 見事に怪獣を追い返したヒーローに、ちょっとした拍手が送られる。

 ――が、今日だけはヒーローが受けたダメージは大きかった。

「なんで、俺が悪者みたいになってるの」

 民衆の「ありがとう」という慰めに近い言葉が、泣きながら空を飛んだヒーローの背中に優しくかけられていた。

 かくして、地球の平和は守られた。

 来週のヒーローは怪獣をどう打ち倒すのか――。

 時代は変わり続けているので、今後の展開は変わっていくのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。