閑話休題 ネフィアの夏
夏なので番外編です、アイスのステマ
馬鹿みたいに明るく晴れ渡った、見渡す限りどこまでも続く青空の下。
海上に建てられた一軒の、小さくて年季の入った「だがしや」という看板が打ち付けられたお店に、わたしはいる。
店先の木を打ち付けて作られた足場に腰を下ろし、足先を海へと投げ出しぱちゃぱちゃと冷たくて心地良い水の感触を楽しむ。
眼前に広がる海は空の色を映して青々と輝いて、時たま訪れる少し大きめの波が、生き物みたいに飛沫をあげて、わたしの脚をぱしゃりと濡らす。
「わひゃっ、つめたーい。」
お店の屋根で陽射しは遮られているとは言え、暑さで溶け始めてきた淡い黄色の氷菓子をひと思いに口へと咥え、しゃくしゃくと舌で圧し潰す様に口内で弄び、ほんのりと香るレモンの酸味と。
「う。」
きいんと頭へ響いてくる冷たさに顔をしかめる。
……そういえばこの「アイス」ってお菓子は、ゆっくり食べろって言われた気がする。
「あっはっは、せっかちな嬢ちゃんだねえ。」
そんなわたしのちょっと恥ずかしい様子はしっかりと見られてしまっていたようで、お店の中から腰の曲がった老婆が顔を出し、からからと楽しそうに笑っている。
この人はこの「だがしや」の主人で、夏の期間だけこの店に色んな商品を持ち込んで、気ままに一夏を過ごしているらしい。
しわくちゃの、だけれど健康的に焼けた小麦色の手で差し出す2本目の「アイス」を受け取り、淡い水色の角を削るように歯を立てる。
「あははー……、このアイスだっけ、冷たくて美味しいけれど……、痛いね。」
「そんなに急いで食べるからだよ、次のはゆっくりお食べよ。」
「はーい、いただきます!」
視線の彼方でゆらゆらと揺らめく陽炎や、じりじりとした陽射し。
この夏っていう季節は暑いし明るいし、わたしは大嫌い、だけど。
「こういうのは、いいなぁ……。」
ちゃぷちゃぷと、足先を濡らす冷たい水の感触を楽しみながら、さくりとアイスをかじる。
「おばーちゃんアイスもう一本ちょうだい!」
こういう夏なら、たまにはいいかもしれない。




