表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/17

閑話休題 ネフィアの夏

夏なので番外編です、アイスのステマ

馬鹿みたいに明るく晴れ渡った、見渡す限りどこまでも続く青空の下。

海上に建てられた一軒の、小さくて年季の入った「だがしや」という看板が打ち付けられたお店に、わたしはいる。

店先の木を打ち付けて作られた足場に腰を下ろし、足先を海へと投げ出しぱちゃぱちゃと冷たくて心地良い水の感触を楽しむ。

眼前に広がる海は空の色を映して青々と輝いて、時たま訪れる少し大きめの波が、生き物みたいに飛沫をあげて、わたしの脚をぱしゃりと濡らす。


「わひゃっ、つめたーい。」


お店の屋根で陽射しは遮られているとは言え、暑さで溶け始めてきた淡い黄色の氷菓子をひと思いに口へと咥え、しゃくしゃくと舌で圧し潰す様に口内で弄び、ほんのりと香るレモンの酸味と。


「う。」


きいんと頭へ響いてくる冷たさに顔をしかめる。

……そういえばこの「アイス」ってお菓子は、ゆっくり食べろって言われた気がする。


「あっはっは、せっかちな嬢ちゃんだねえ。」


そんなわたしのちょっと恥ずかしい様子はしっかりと見られてしまっていたようで、お店の中から腰の曲がった老婆が顔を出し、からからと楽しそうに笑っている。

この人はこの「だがしや」の主人で、夏の期間だけこの店に色んな商品を持ち込んで、気ままに一夏を過ごしているらしい。

しわくちゃの、だけれど健康的に焼けた小麦色の手で差し出す2本目の「アイス」を受け取り、淡い水色の角を削るように歯を立てる。


「あははー……、このアイスだっけ、冷たくて美味しいけれど……、痛いね。」

「そんなに急いで食べるからだよ、次のはゆっくりお食べよ。」

「はーい、いただきます!」


視線の彼方でゆらゆらと揺らめく陽炎や、じりじりとした陽射し。

この夏っていう季節は暑いし明るいし、わたしは大嫌い、だけど。


「こういうのは、いいなぁ……。」


ちゃぷちゃぷと、足先を濡らす冷たい水の感触を楽しみながら、さくりとアイスをかじる。


「おばーちゃんアイスもう一本ちょうだい!」


こういう夏なら、たまにはいいかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ