お一人様は闇を往く
賊を取り押さえて憲兵に突き出し、その報酬を受け取りに斡旋所を訪れた二人、だが二人を待っていたのは美味しい飲み物で警戒心を解かせる悪どい企みと、愛し合う二人を引き裂く卑劣な罠であった……果たして二人は一体どうなってしまうのか、くそが!」
日が差しているかのように明るい、つやつやとした石造りの広間で、ネフィアはぽつんと一人立っていた。
声のよく響く広間のちょうど中央で、大袈裟に身を振りながら誰に聞かせる訳でもなく、半ば自棄になりながら一人声を荒げている。
「まったくさあ、趣味が悪いよね趣味が。」
「まあ別にこういう遊びもたまにはいいと思うしね、趣向を凝らすっていうの?」
「でも違うよね、わたしたち別に遊びにきた訳じゃないんだからさ、というか人を呼んでおいて罠に嵌めるってどういう神経してるのさ、ねえ?」
ひとしきり思いを吐き出したのか、やれやれと自嘲気味に、大袈裟に手を上に挙げて、わざとらしくため息を吐く。
そして。
「せめて二人一緒にしてよね!静かすぎるとそれはそれで保たないんだからさあ!」
広間を揺るがす程の大声をあげ、はあと肩を落とす。
「あーあ……、結局何すればいいのさ……なに、取り敢えず進めってことなの?そういうゲーム?」
虚空に問い掛けるも、当然のごとく返事は返って来ない。
「……まあいいけれどさ、飽きたらぶち壊せばいいし。」
不満げにぷくりと頬を膨らませた少女は、可愛らしい仕草とは裏腹に物騒な言葉を漏らしながら、眼前の通路を真っ直ぐに進んで行く。
石造りの冷たい雰囲気の通路を少し進むと、腰ほどまでの高さの小さな看板が傍に立てられ、丁寧な装飾の施された木製の扉を視線の先に捉え、ネフィアは足を止める。
看板にはど真ん中にたった一言だけ、「魔法使用禁止」とだけ書かれており、ネフィアは看板を見て眉をひそめる。
「……何これ、やる事なす事全部面倒なんだよ、まったくもう。」
愚痴をこぼしながら、渋々と言った様子で扉を開くネフィア。
扉の先は真っ暗な闇に包まれ、今まで通ってきた通路から差す明かりすら飲み込み、中の様子を伺う事は出来ない。
が、闇の彼方には小さな明かりが見えており、恐らくその先に道が続いているであろう事が伺える。
そんな様子にネフィアは露骨に嫌そうな表情を浮かべながら手のひらを目の前に突き出し、何事も無かったようにはあとため息を吐いて闇の中へと進んで行く。
「……ほんとに出ないし、……落ち着かない暗闇は嫌いなんだよ、もう。」
右手を壁に手を付け左手を前に出しながら、こつこつと硬い地面を叩く音を響かせながら、文字通り手探りでゆっくりと闇の中を進んで行く。
「まったく……どうしてわたしがこんな事しなきゃいけ……。」
其処まで言った所で、少女は勢いよく床を蹴り、後ろへと飛び退く。
そうすると目の前の、先ほどまでネフィアが居た場所を、「何か」が素早く風を切り通り抜けた。
「あっぶな……!」
視認は出来ないが目の前の脅威を感じ取ったネフィアは更に大きく飛び退き、音のした場所から距離をとると、がちゃがちゃという恐らく自分へと近づいて来ている「何か」の音に、小さく舌打ち、冷たい瞳で睨む。
「面倒臭いなあ……、わたし急いでるんだ、だから。」
「じゃあね。」
そう言って右手をすっと目の前に突き出し、そして。
「あっ。」
間の抜けた声を上げると、身を翻し元来た道を、光を目指して一目散に駆け出して行く。
半ば転がり込むように暗闇の部屋の中から飛び出たネフィアは、はああと大きなため息をつき、額を拭った。
「……使用禁止、忘れてた。」
ネフィアを追いかけて来る気配のない、少しずつ遠のいていくがちゃがちゃと言う音に、少女は一体どうしたものかと首を捻るのだった。
主人公はベリアです、一応




