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最弱は、終わることすら許されない。  作者: セト


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5話 壁

俺たちは街の門を抜け、東へと続く街道を歩いていた。


目的は、行方不明になった元仲間を探すこと。


最後に別れた場所は、東にある森の中だ。


とはいえ、いきなり森に向かうつもりはない。


あの森は視界が悪く、下手に入り込めば道に迷う可能性がある。


まずは近くの街で情報を集めることにした。


「アルトさん。少し、聞いてもいいですか?」


「ん?どうした?」


「探している人って、どんな人なんですか?」


そういえば、ルナには詳しく話していなかったか。


「エルダって言うんだ。特徴は……髪が黒い、ぐらいだな」


「黒髪、ですか……珍しいですね」


今の時代、純粋な黒髪を持つ人間はほとんどいない。


大昔……まだ人類の魔力が弱かった頃はそこそこいたらしいが、魔力が強まるにつれて髪色は12色に分かれた。


赤に近い色ほど魔力が強く、かつて多く存在した黒髪は、今ではほとんど見られなくなったそうだ。


だからこそ、最初にあいつを見た時は驚いた。


それに、あの強さにも……。


「ああ。だから見かければすぐにわかると思う」


「そうですね……あ、街が見えてきました」


ルナが指差した先には、街を囲む壁が見えた。


「それじゃあ、行くか」


門をくぐると、そこには多くの人々が行き交っていた。


商人が荷車を引き、店先では店員が声を張り上げている。冒険者らしき人間もちらほらと見かけた。


「思っていたより賑やかですね」


ルナが辺りを見回しながら言った。


「そうだな。どこで情報を集めるか……」


「ギルドや酒場辺りがいいのではないでしょうか?どちらも冒険者の方が集まる場所なので、情報も得やすいと思います」


「ああ。じゃあ、まずはギルドに行ってみよう」


「はい」


俺たちはギルドに入った。


中には多くの冒険者がいて、受付には何人かの列ができていた。


「結構、人がいるな」


「そうですね。ここなら何か情報が見つかるかもしれません」


「だといいけどな」


俺たちは空いている受付へと向かった。


「すみません。少し聞きたいことがあるんですが」


「はい。どうされましたか?」


受付の女性がこちらを向いた。


「黒髪の男を探しているんですけど、何か情報はありませんか?」


「黒髪の男性、ですか……。申し訳ありませんが、こちらではそのような方の情報は把握しておりません」


「そうですか……」


やっぱり、そう簡単には見つからないか。


「他に何か特徴はありますか?」


「いや、それ以外は特に……最後に別れたのも東の森で、それっきりなんです」


「東の森……。向かうおつもりですか?」


「はい。そのつもりですが……」


「現在、東の森は危険な魔物が出るとのことで立入禁止区域となっております」


「そうなんですか!?」


「はい。依頼などで入れる場合もありますが……探しに行くのは厳しいでしょうね」


「そうですか……。ありがとうございます」


俺たちは受付から離れた。


「手掛かりはなしか……」


「残念ですが、仕方ありませんね」


「次は酒場に行ってみましょう。冒険者の方も多いでしょうし、何か聞けるかもしれません」


「そうだな。行ってみるか」


俺たちはギルドを出て、街の酒場へと向かった。


酒場に入ると、酒を飲みながら話している冒険者たちの姿が目に入った。


昼間だというのに、かなり賑わっている。


「さて、誰に聞いてみるか……」


「とりあえず、あちらの方たちに聞いてみてはどうでしょう?」


ルナが指差した先には、数人の冒険者が座っていた。


「そうだな」


俺たちはその冒険者たちに近づいた。


「あの、すみません。少し聞きたいことがあるんですが」


「ん? なんだ?」


一人の男がこちらを向いた。


「黒髪の男を探しているんですけど、何か知りませんか?」


「黒髪? ああ、それなら聞いたことがあるぜ」


「本当ですか!?」


思わず声が大きくなった。


「お、おう。最近、東の森で魔物を狩ってる黒髪の男がいるらしい。かなり強いって話だぜ」


「東の森……」


最後にエルダと別れた場所も東の森だ。


もしかしたら、あいつかもしれない。


でも……エルダと別れてから5年、なんでずっとそこにいるんだ?


「その男について、ほかに何か知りませんか?」


「いや、俺も噂で聞いただけだからな。詳しいことまでは知らねえよ」


「そうですか……。ありがとうございます」


「おう。見つかるといいな」


俺たちは冒険者たちから離れた。


「東の森で魔物狩り、ですか……」


「ああ。エルダかもしれない」


「まだ本人だと決まったわけではありませんが、確かめる価値はありそうですね」


「そうだな」


ただ、あそこは入れないらしいしな……。


どうするべきか……。


「そういえば、さっきの話だと魔物を狩っているんでしたよね」


「そうだな」


「でしたら、討伐依頼を確認してみるのはどうでしょう?」


「なるほど。それを受注すれば俺たちも森に入れるって訳か」


俺たちは再びギルドへと向かった。


ギルドに戻ると、今度は依頼が貼られている掲示板へと向かった。


「東の森の討伐依頼……」


掲示板に貼られた依頼書を一枚ずつ確認していく。


薬草採取、遺跡攻略、護衛任務……。


どれも違う。


すると、ある依頼書が目に留まった。


「これか……?」


そこには、東の森に出現する強力な魔物の討伐依頼が書かれていた。


「ルナ、これ……」


「東の森での討伐依頼ですね。かなり報酬が高いようですが……」


「高い分には良いだろ」


「いえ……そうではなくて、この依頼……」


ルナは依頼書の下に書かれたランクを指差した。


そして――


「……S級?」


思わず声が漏れた。


S級。


冒険者の中でも、ほんの一握りしか関わることのできない依頼だ。


当然、E級の俺たちが受けられるようなものではない。


「……はぁ」


せっかく手掛かりが見つかったと思ったのに、これか。


「アルトさん……」


ルナが心配そうにこちらを見ていた。


「いや、なんでもない。別の方法を考えるしかないな」


そう言いながら、俺はもう一度依頼書を見た。


東の森で魔物を狩る黒髪の男。


それがエルダなのかは、まだわからない。


けど、確かめるためには森に入る必要がある。


なのに、俺たちにはその方法がなかった……。


俺はダメ元で、受付に聞いてみた。


「すみません。E級パーティでこの依頼を受けたいのですが」


受付嬢は、依頼書を確認すると、一瞬驚いた表情を見せた。


「申し訳ありません。こちらはS級依頼ですので、現在のパーティランクでは受注できません」


「……ですよね」


分かりきっていたことだ。


依頼はパーティランクの上下一段階しか受けられない。


つまり、俺たちが受けられるのはF級・E級・D級の依頼だけ。


S級の依頼など、受けられるはずもない。


「何か方法はありませんか?どうしても東の森に入りたいんです」


「規定上、ランクが足りない場合は受注できません。受注可能なランクまで昇級していただく必要があります」


「昇級……か」


受付を離れ、俺はルナの元に戻った。


「E級からD級に上がるだけでも、かなり大変なのになぁ……」


「どれぐらい大変なんですか?」


「一般的に、D級に昇格するためには、D級の依頼を百回受ける必要があるらしい」


「百回……ですか。それだったら……」


ルナは何かを言いかけて、口を閉じた。


そのまま、しばらく考え込んでいた。


D級に上がるだけで百回もこなしていたら、A級に上がるのは一体いつになることやら……。


どうすればいいのだろうか。


「……アルトさん。一つ、秘密にしていたことがあるのですが」


ルナは、いつにも増して真面目な顔で言った。


「秘密?」


「はい。実は……」


ルナは少しだけ言いづらそうに視線を落とした。


そして、意を決したように顔を上げる。


「私、A級なんです」


「…………え?」


一瞬、何を言われたのか分からなかった。

【昇級目安】

F級→E級 約200回

E級→D級 約100回

D級→C級 約50回

C級→B級 約25回

B級→A級 約12回

A級→S級 約6回


(依頼内容にもよる)

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