第三部 第六章 6 ―― 自虐的 ――
第二百三十二話目。
地雷だったかしら。
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私の問いかけは地雷だったのか、男らから感情が奪われていく。気づけば、4人が顔面蒼白になって硬直していた。
横では戸惑っていたアカネも目を点にして固まっている。
私が首を竦めておどけてみると、我に戻ったのか、責めるように眉間をひそめて睨んでいた。
危険を呼び込む問いだったのかもしれないけれど、男らの言動から、ヘオンを避けたがっている気概があり、確かめてみたかった。
私の疑念を目配せで伝えたつもりでいたけれど、察してはくれず、ずっと無言で責められてしまった。
「知っているんだね、僕らのことを」
アカネをどう宥めるか悩んでいると、金髪男が重い口を開き、気まずそうに髪を掻き上げる。
「まあ、いくつかの町を回ったからね。それでいくつかの噂は聞いているわ。もちろん、人を守るための功績もね」
ことを荒立てるわけにもいかず、当たり障りのないことで、横のアカネを伺った。
私が下手に挑発しなかったことに安堵したのか、穏やかな表情に戻り、状況を見守っていた。
「そっか。そうなるね」
「じゃあ、コスモスだってヘオンには多いんじゃないの。あそこは大きい街なんだし」
機嫌が治ったのか、アカネが聞くと、男らは気まずそうに顔を背ける。
「どうやら、痛いところを突かれたみたいね。何かあったのかしら?」
仮にヘオンに不穏な動きがあれば、私たちに危険が及ぶこともあり、ちょっとカマをかけてみた。
「ほんと、痛いところを突くんだね。でも、ヘオン自体に危険はないよ。警備もしっかりとしているしさ。どちらかと言えば、僕たちに問題があるかな。逃げた僕らに」
自虐的に話す金髪男に釣られてか、他の3人も気恥ずかしそうに顔を掻いたりしている。
「逃げたって?」
気がかりなことを言う男らに、アカネが聞く。しばらく金髪男は思案した後、首筋を擦り、
「言葉通りだよ。僕らは戦いから逃げたんだ」
「ヘオンはコスモスの中心と言ってもいい。だからどうしても鬼との戦いも激しくてさ。でも僕たちはそんな力がなかった。力がなければ、コスモスでの存在意義はないからさ。それで逃げたんだ」
言葉を詰まらせる金髪男に、髭男が補足する。やはり自分らを蔑むように暗く。
「それにヘオンに限らず、コスモスにも派閥があってね。それにも疲れたのもあるかな。部隊の本質もそれで消えていく感じだったしね」
諦める様子で金髪男が話を切る。
「派閥? それって、確かルビーとか、ヒラって人のこと?」
話を聞いていたアカネが聞くと、4人が驚く。
「それも知っていたか。まあね。そうだよ。特にヒラ隊長は別格だね。あの人は隊長って言っても、遊撃隊みたいで自由な人だけど、力はすごいよ」
「いいのかしら、そんなことを言って」
「いいだろ。もう関係ないんだしさ」
コスモスの内情を話す金髪男を諫める髭男であったけれど、別の男が宥め、髭男も従って引き下がった。
「あの人は、話をするだけでも怖かったからな。影では鬼を越えた化け物だって揶揄する奴もいたぐらいだしな」
1人の男が暴露すると、男らはケラケラと大笑いする。
しばらくして途中から乾いた笑いに変わっていくと、
「俺らにはそれだけ遠い存在だってことだよ」
笑い声が髭男の一言によって男らの表情は一斉に引き締まり、俯いてしまった。
「――で、あんたらはどの派閥に加わっていたのかしら?」
鎮まるなか私の声が響く。茶化すつもりで明るく振舞ったつもりでいたけれど、思いのほか鋭く突き刺さってしまったらしく、誰も反応しない。
ややあって金髪男が顔を上げ、
「言ったろ。僕らは派閥に入るだけの力がない。派閥に加わるだけの資格すらないさ」
自虐的に話す金髪男に引きつった笑顔を献上された。
そんなものなのかしら、と納得させようとしていると、隣りのアカネが急に一歩踏み出し、男らを睨んだ。
「じゃあ、別の方法を考えたりはしなかったの? 自分らができることを」
どこか叱責する口調に、男らは背筋を伸ばした。
力による、上下関係ってことかしら。




