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親友(皇子)との再会


黒い霧。これは六年前、違法なやり方で奴隷にされていたミレイア達を助けた時から全てが始まる。


黒い霧は元々、人工的に『魔族』を作り、世界を征服しよう!!なんてバカな事を考えた天才が『失敗作』として作ってしまった物だ。だが、この研究に目を付けたのが帝国。(後に、俺が滅ぼし皇国の領土となる国だ)帝国は、この黒い霧を作った天才に莫大な資金を与え、“人間のまま、黒い霧を操る事の出来る存在”を作るように命じた。

天才は歓喜する。帝国は軍事に力を入れており、天才が求めていた理想その物の国だったのだ。天才は帝国の言うとおりに研究を進め、後は人体に試してみるだけ。という所まで来ていた。

その時に使われそうになったのがミレイア達だった、という事だ。だが、ミレイア達は数多く捕まえた内の一つ。俺達『勇者パーティー』が研究所を突き止め、全てを無に返した時には人体実験が何度も行われた後だった。女子供でも容赦なく。特に、性行為のできる成人女性は酷かった。生まれてくる子供にも黒い霧が備わっているのか。とか、そんな事を調べる為だと殺した研究員が言っていた。

研究に関わった者は全て皆殺し。帝国も、少し後になるが滅ぼした。俺が帰った後はユリウスが帝国の元貴族や、関わった者も全員処刑をしたそうだ。‥‥‥‥‥‥‥ルーク以外は。

ルークは六年前、俺達が研究所を潰す前に、研究を引き継いでいた。その完成させた力で、俺と殺し合いをしている。

しかし、ルークはその力で一度ハルに敗れた。そんな力をルークがもう一度研究をするなど考えられない。シルの墓の前での戦闘時、ルークが黒い霧を使っていなかったのがいい例だろう。そんな中途半端な力を使っていた五年前とは違い、今は堕天使とルークの命を救った奴等の力を使っていると思う。この前の力は、ただ鍛錬をしただけで得られるような力ではないように思えたのだ。まるで次元が違う。そんな風に思えた。‥‥‥だが同時に、まだ扱いきれていない。という風にも見えたが。


と、こんな理由があり、目の前の黒い霧を纏った存在は完全にイレギュラーだ。ルークを助けた組織が‥‥というのも考えたが、それならルークが使っているだろう。

なら誰が、この力を今になって出してきたのか?という問題が出てくるのだが‥‥‥その前に、この状況をどうにかしなければいけない。



誰にしているのか分からない説明を、頭の中でしているハル。その目の前には、黒い霧とは別の黒い何かを纏ったユリウスと、黒い霧を纏った男の二人がいた。


2対1の筈なのに、何故か三つ巴に感じるのは気のせいだろうか?というか、ユリウスの方が俺に対する殺気が強いのも気のせいだろうか‥‥‥気のせいであって欲しい。


「あの、ユリウスさん?何故に僕にも殺気を向けていらっしゃるのでしょうか?物凄く怖いので辞めてくれるととても嬉しいのですが‥‥」


冗談混じりに変な敬語を使ってみたが、逆効果だったようだ。この空気をどうにかしようとしただけなのに、物凄く睨まれた。黒い霧を纏ってる男(?)も、この雰囲気で何言い出してるんだコイツ?みたいな目で見てくる。


「‥‥冗談を言える立場か?約1カ月間逃げ回っていたお前に、そんな余裕があるのか?あぁ?」


「いえ、無い‥‥‥‥です」


何時もの口調じゃ無くなってる。普段は絶対に「あぁ?」とか言わないのに‥‥何時ものユリウス君はどこに行ってしまったんでしょう?


「だよな?だったら‥‥‥さっきも言ったが、目の前のコレを片付けたらお前の番だ。なんで逃げ出したのか、ゆっくりと教えてもらおう。どこに隠れていたのかも‥‥ゴルドー子爵と一緒に、な?」


うわぁい。バレてるぅ~‥‥‥‥‥‥



「『聖魔融合』ッ!!からの~‥‥‥『終末ラグナロク・極小』」



これ以上此処にいたら不味い。ティナと騎士団長がどこにいるのか分からない以上、戦闘を長引かせるのは良くないだろう。幸い、ゴルドー子爵が関わっているのがバレてるだけみたいだ。このままタイト達に匿ってもらおう。うん、それがいい。


そんな事を考えながら、ある程度の時間使う事ができるようになった『聖魔融合』を使い、黒い霧を纏った男の後ろにいる数万近い魔物を、『終末ラグナロク』を使い塵にする。


終末ラグナロク

これは六年前、初めてこの地に来た時、シル達が捕らえられブチ切れたハルが帝国の兵士に使用したものだ。

わざと聖魔の魔力を暴走させ、その魔力を一気に放出する。と、こんな簡単な魔法です。

まぁ、『勇者の素質』が大きいから聖剣の力も通常の『勇者』以上に解放される。しかも、元のハルの魔力も化け物が化け物と言うぐらいに大きいから、普通の勇者の数十倍の威力になる。


「なっ!?」


六年前、ユリウスはルークに捕らわれており、『終末ラグナロク』を見ておらず、話を聞いていただけだった。しかし、兵士五万を塵にする程の魔法は、帝国の地下牢にまで魔力の余波が伝わっており、どれだけ膨大な魔力を込めているのかは分かっていた。

しかし、今回の『終末ラグナロク』は、話に聞いていた広範囲魔法ではなかった。


「レーザービィィィィムッ!!」


ハルの魔力は、聞いていた広範囲ではなく、人差し指に高密度の魔力が集められ、腕を横凪にすると同時に発射される。

ただでさえ広範囲に広げて被害を分散(それでも周りは焦土となるのだが)しているのに、一点に集中させた『終末ラグナロク』は奥にいた魔物の腹か頭、腕を焼き切っていた。そして、更に奥にあった山も、崩れていく。




「あ、あれ?何故に山が崩れていくんでしょうか?‥‥‥ユリウス、どうしよ?」




「知るかバカ者ッ!!」




     ーーーーーーーーーー




僕は、今まで彼の、『英雄』である『勇者ハル』の実力を少しも理解していなかったのかもしれない‥‥‥


目の前に広がるのは、魔物の軍勢。‥‥‥ではない。魔物の軍勢の、更にその奥に見えていた小さな山が、土埃と共に崩れていく光景だった。その前にいた魔物の軍勢は、殆どが山と一緒に崩れていっていた。寧ろ、山の方がオマケなのだ。魔物を全て殺す為に、あの魔法(?)を放ったのだろう。


「なんだよ、あれ‥‥‥何が起こったんだ?」


「山が、崩れていくぞ‥‥‥」


「人間の仕業なのかよ、これ‥‥‥?」


意識して流した言葉ではないのだろう。誰も、答えを必要としている風ではなかった。ただ、己の中の疑問が垂れ流されているだけに思う。そしてそれは、僕達も同じだった。


「流石ルシウスさんですねぇ。山が崩れて行きますよ」


「ルシウスさんって、こんなに凄かったんだ‥‥‥」


「流石は、元『勇者』。多分、まだ本気じゃない」


「これが、僕達の師匠‥‥‥ッ!!」


僕達の反応は、少し周りと違った。周りの反応は、驚きと恐怖。こういった反応が多いだろう。対して僕達は、驚きもあるが、それ以上に誇りに思った。

これは、この状況を作った少年を知っているからこその感情。何も知らない彼等には、この感情は浮かばないだろう。


僕達の師匠は、こんなにも偉大で、越えたい筈なのに、越えられない。高い壁なのだ。


そんな四人の目を覚ましたのは、本来此処にいては行けない人だった。


「ちょっと、四人共!!ボケーッと突っ立ってないで、私に気付いてッ!!」


ゴルドー子爵の、偽物の奥様。ミレイアだった。




「おっ、奥様ッ!?何故このような「シーッ!!いくら私が『気配遮断』を使ってるからって、限度があるのよ!?少し大人しくしてなさいっ!!」‥‥は、はい」




奥様の方が、声が大きいです。なんて、当然タイト達は言える筈も無く、物凄く目立ちながら後方へと下がっていく。‥‥奥様だけは、隠れているつもりなのかコソコソとしていた。


ある程度後ろまで下がり、呆然としている冒険者達に背を向けてミレイアの言葉を待つ。本来、街の外に出ることも殆どないような人なのだ。そんな人が目の前にいる。意味が分からなかった。子爵様は何をしているのだろう?と、頭を捻る。


「まず最初に、ハルさんの事がバレたわ。ウチの偽バカ亭主がやらかしたお陰でね」


忌々しそうに舌打ちをする奥様からは、普段の優しそうな笑みは消え、子爵の妻になる前、『ミレイア』の顔が見えていた。

そんな事は知らない三人は顔を青くしてミレイアの次の台詞を待っている。


「取りあえず、ティナ皇女殿下と騎士団長様からは何とか逃げ出せたわ。今は、ギルドの近くでゴルドー達は縮こまってる。私達も向かうわよ。ハルさんが 『G級冒険者ルシウス』でいられないような『何か』が現れた。此処に私たちがいたら、ハルさんは本気で闘えないわ」


確かに、ユリウス殿下達から逃げることを最優先に考えていたハルが正体を晒して前に出たのには理由があるのだろう。そして、先ほどの有り得ないような魔力砲。どう考えても普通ではなかった。

ミレイアの変わりようには驚いたが、タイト達も冒険者。すぐに立ち直り他の冒険者を押しのけて門へと走る。すると直後、二度の爆発と爆風が中心にいた冒険者達を襲うのが見えた。


あぁ、この日、この時、この場に居れた事を僕は生涯誇りに思うだろう。


なぜなら、六年前『悪魔』『殺戮者』『死神』と世間から呼ばれていた『勇者』の、本当の恐ろしさをこの目で見る事ができたのだから。























「さて、逃げるか!!」




当の本人は、にこやかな笑顔でそう呟いていた。


『勇者』捕獲まで、あと二時間


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