七夕祭
「はい、これ。あなたの衣装ね。」
七夕祭も終盤。俺らは学園の施設をいくつか巡り、用意されていたヒントを持っている生徒のお題に応えて答えを求め続けた。
ここまで見てきていたギャラリーも誰が織姫と彦星かと推測をしている。
生徒会長から七夕祭の出し物の主役の打診を受けたとき、マチルダはかなり渋っていた。
遠山 さくに関わることなのだろうと彼女が答えを出すまで待っていた。
だから、すんなり承諾したと聞いて内心驚いていた。
「…って。なんじゃこりゃ。」
明らかにどう見ても渡された衣装は織姫の、女物の衣装。
一抹の不安はあるものの、取り敢えず着替えて外に出る。
あら、よく似合うじゃない?クスクスと笑いながら支度が終わったのであろう彦星の衣装を着たマチルダが待ち構えていた。
「知ってたな…。いや、むしろマチルダが発案者か?」
苦悶を抱える俺のつぶやきに発案者はあたし。と声が上がる。
俺らより10ほど年上だろうか、軽やかに笑う彼女はしかし、マチルダの不敵な笑みとそっくりで。
まるで姉妹のようだなと勝手に思っているうちに椅子に座らされてる。
「あたしの腕によりをかけてあなたを美女にしてみせるわよ。」
メイクもされるがまま、指示を受けるままに顔を動かし。
名前もわからないものを顔や首に縦横無尽に塗りたくられて…。
「素材が良かったから、美女に化けられたわよ。」
手鏡を渡されて写してみれば、俺の顔面の上に中華風な美女が出来上がっていた。
これ、どうやったんですか?
前のめりに聞いちゃうくらいには驚きが隠せなくて。
これなら、観客もびっくりするんじゃないかと安心感得られる仕上がりに。
「皆さま、お待たせいたしました。
本年度の織姫と彦星は…。」
織姫が生徒会部員朝倉 ルー君、彦星が生徒会部員朝倉 マチルダさん夫妻だ。
生徒会長の煽りたっぷりの文句に観客、知らされていない一部の生徒会役員たちはざわめき立つ。
男女逆転してる、なんて言われないとわからないくらいに完璧な織姫と彦星姿。
「後夜祭のダンスまでが私たちのお仕事だから。」
手を差し伸べるマチルダにエスコートされて生まれて初めて、高等教育都市では習っていたけど女性パートのダンスに苦戦しながら。
織姫と彦星みたいに期間限定のこの生活。
Projectが終わったとしても彼女らと過ごした日々に思いを馳せて楽しかったと言える思い出がまた一つ出来上がった。
いったい、Projectが終わるまでにどれくらい多くの思い出が増えることになるのだろうか?
流れ星を見つけてはお願い事を繰り返す彼女の横顔を見つめる___。




