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助けたギャルが高嶺の花だった  作者: 大豆の神
そして二人は――
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#84 舞台はここに決する!

「全校生徒の前で弥勒寺先輩に勝って、小野寺のことを諦めさせます」


 その宣言を聞いた二人は、勢いよく席から立ち上がり、俺に詰め寄ってくる。


「全校生徒の前って、間宮君どうするつもり?!」


「そうだよ! 光君が怪我したりしたら……」


「あー、えっと……喧嘩するつもりじゃないからな?」


 そう言うと、小野寺と花森先輩は揃って毒気を抜かれた顔を見せた。


「喧嘩じゃないなら、決闘……とか?」


「それ言い方の問題じゃないか……?」


「小野寺さん、決闘への関与は法律で禁止されてるのよ」


「あ、そうだった……」


 気にするべきはそこじゃないだろ……。

 なんだか肩透かしを食らった気分だが、俺は話の舵を元に戻す。


「殴り合いとかそういう物騒なのじゃなくて、俺は弥勒寺先輩の土俵で戦おうと思ってます」


「土俵……ってことは相撲?」


「それなら合法ね」


 ……ボケてるつもりなのか? それならツッコまないといけないけど、二人とも天然っぽいしな……。

 目の前の問題から大きく逸れたところで、俺は頭を悩ませる羽目になる。


「もしかして、正解だった……?」


 不安げな声で、小野寺は呑気な問いを投げかけてくる。


「いや、もちろん不正解だ」


 こんなところで悩んでいる場合じゃない。俺は再び、大きく話の舵を取った。


「花森先輩、この学校は十二月にマラソン大会がありますよね」


「え、ええ……」


「そこで弥勒寺先輩と勝負します」


 マラソン大会で一騎打ち(順位争い)をして、俺が勝ったら小野寺を諦めてもらう。全校生徒が見ている行事だからこそできる、正々堂々な勝負というわけだ。


「でも、マラソン大会って一年で最も地味な行事だって、前に蓮ちゃんが……」


「花森先輩、もう一つお願いです。マラソン大会を、生徒会主催のイベントにしてもらえませんか?」


「生徒会主催の、イベント……」


 花森先輩も、さすがに快諾というわけにはいかないようだ。たしかにイベントを運営するとなると、相当な人員と労力がいる。

 ここはもう一押し、何かがないと……。


「もちろん俺も手伝います。できることがあったら、なんでも声かけてください」


「……うん。とても面白そうな試みだと思うわ。けど、イベントをやるとなったら、責任者が必要よ。主催の生徒会以外で、誰か目立つ人を――」


「それなら! 心当たりがあります……!」


 小野寺はそう言って、俺の顔を見つめる。多分……だけど、俺達の頭に浮かんでいるのは同じ人物だった。


「本当? それって誰かしら?」


「最上先輩です」


 俺と小野寺は、一人の先輩の名前を同時に口にする。


 ……やっぱり、行事といったらこの人だよな。まだ聞いてすらいないけど、即決してくれるという期待があった。


「最上先輩……たしかに、彼ならマラソン大会でも盛り上げてくれそうね」


 おまけに花森先輩からのお墨つきももらった。あとは本人に頼み込むだけ――


「話は聞かせてもらったよ!」


「うわっ、びっくりした! ……最上先輩、なんでここに?」


 噂をすれば、にしてはあまりにも絶妙なタイミングで、最上先輩が生徒会室の扉を開く。


「廊下を歩いていたら、何やら声が聞こえてね。そしたらなんと! 僕の話をしているじゃあないか! 堪らず僕は、この生徒会室の門をくぐったというわけさ!」


「ちょうどよかった。最上先輩、イベントにご興味は?」


「あるに決まってる!」


 花森先輩の質問に、最上先輩は食い気味で返事をする。


 ……この人の会話のペースにも身体を慣らしておかないとだな。

 リハビリ気分で、俺は最上先輩に話を振る。


「十二月のマラソン大会、生徒会主催でイベントをやることになったんです。その責任者を、最上先輩にぜひやってもらいたいなって」


「間宮君、それは君が提案してくれたのかい?」


「そう、ですね……」


 どうしよう、本当は弥勒寺先輩と戦う為だって言わない方がいいよな……。


「素晴らしい! やはり君は素晴らしいよ! 今まで光が当たらなかった、あのマラソン大会まで盛り上げようとしてくれるなんて! 僕は今、感動に震えているよ……!」


 本当に体を震わせて、最上先輩は膝から崩れ落ちる。

 声をかけようかと迷ったが、それよりも一瞬早く最上先輩が体を起こす。


「僕を指名してもらったのなら、その使命を僕は全うしよう! 必ずや、最高のマラソン大会にすると約束するよ!」


「では、生徒会と最上先輩を中心に、放課後の時間を使って会議を行います。……ところで最上先輩、失礼ですが大学の方は……」


「問題ない! すでに推薦での入学が決まっているからね! 大学の教授が僕の舞台を観劇していたみたいで、ぜひと呼んでいただいたのさ!」


 変わった人ではあるが、こうして人の目を奪う才能もある。だからこそ、俺は最上先輩にマラソン大会の責任者になってもらいたかった。このイベントを注目の場にする為に。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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