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助けたギャルが高嶺の花だった  作者: 大豆の神
そして二人は――
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#74 蓮の打倒お見合い術 その2

ユニークPV7000突破しました。ありがとうございます。

最終章も走り抜けていくので、ぜひお付き合いください。

 思いがけない気絶騒ぎを経て、秘技の伝授は翌日に持ち越された。

 各々のスケジュールの都合上、全員が集まれるのはこの昼休みの時間だけだ。


「いや……本当に申し訳ない……」


 期限は今週末だっていうのに、下らないことで時間を無駄にしてしまった。

 俺は中庭にいる面々に頭を下げる。


「まさか、あんたがあそこまで打たれ弱かったとはね」


「光、気にしすぎないことが大事だよ。……今日は大丈夫そうかい?」


「あぁ、心配かけたな」


「本当に大丈夫……?」


「……任せてくれ」


 不安げな小野寺を鼓舞しようと、俺は力強く親指を立てる。

 ……正直なところ、心配ではあった。俺の生死は、ロールプレイの内容によるといっても過言ではない。


 蓮、頼むぞ……。

 この場を取り仕切る蓮に向かって、俺は人知れず念を送っていた。


「それじゃあ、先生! 二つ目の秘技はなんでしょうか?」


 えらくノリノリな矢野に促され、蓮は昨日と同じように胸を張って言った。


「――二つ目は、”度肝を抜く自己紹介”よ」


 またしても怪しげな技じゃないか……。

 ……ただ、昨日の挨拶しかり、これも第一印象を悪くするという企みがあるのだろう。小野寺からどんなユーモアが飛び出すか、少し楽しみではあった。


「渚、いけそうかしら?」


「度肝って、どうやって抜けば……」


「仕方ないわね……」


 そう言って蓮は、小野寺に耳打ちで助太刀を入れる。しかし、それを聞いた小野寺は、途端に顔を赤らめる。


「れ、蓮ちゃん?!」


「何よ」


「ほ、本気、なの……?」


「当たり前でしょ」


「う……分かったよ……」


 おいおい、一体何を吹き込まれたっていうんだ……? 小野寺があんな赤面するなんて、怒らせたんじゃないだろうな……。


 小野寺は再び俺の前に立つと、目線を彷徨わせながら口を開いた。


「はじめまして、小野寺渚です。えっと……私には、す、すす好きな人がいます……」


「ぐはっ……!!」


 昨日の二の舞を演じるように、またしても俺は膝から崩れ落ちる。


 小野寺に……好きな人、だと……! 信じたくはないが、信じるほかないのだろう……。だって俺は今、目の前で小野寺からそう告げられたのだから!


「はぁ……。光、これがロールプレイだってこと忘れてない?」


「はっ……!」


 呆れた調子の蓮に諭され、なんとか意識を留めることに成功する。


「そう、だよな……。そうだよな! 練習だもんな! 誰も本当のことだなんて言ってないもんな!」


「まぁ、嘘だとも言ってないけどね」


「ごはぁっ……!!」


 翔太からの追い打ちに、俺は三度衝撃を味わうことになる。このままじゃ、俺の身体が持たない……。心が……心臓が……。


「ちょっと翔くん……?」


「はは、ごめんごめん。打てば響くから、つい僕も参加したくなっちゃって……」


「光君のHPは、もうゼロだよ……!」


「……けど、おかげで秘技の威力は証明されたんじゃないか……? こうして俺が、ボロボロになってるわけだし……」


「間宮君、大丈夫……?」


 俺は小野寺に支えられ、まるで敵キャラの爆発に巻き込まれた戦士みたいな気分で立ち上がる。俺の評価に、蓮は鼻高々といった様子だ。


「分かってもらえて何よりだわ」


「これが二つ目ってことだけど、あと何個あるの?」


 たしかに、それは確認しておきたかった。残弾数によっては、本当に俺の身体が限界を迎えるかもしれない。


「”質問を雑に返す”とか、”食事はだらしなく取る”とか、”社交辞令にも本音で返す”とか色々あるけど……全部やったら光が持たなさそうよね」


 俺がした質問をおざなりにされたり、社交辞令で誘ったとしても断られたりすることを想像して、このロールプレイが続行しなくて良かったと心から思っていた。


「他の二つはいいとしても、食事の秘技に関しては、やるべきかどうか考えるべきだろうね。……もしかして蓮、やったことがあるのかい?」


「……お恥ずかしながら。けど! 昔の話だから! 若かった頃の話!」


 今も十分若いだろ……。

 そんな調子で盛り上がりを見せる中庭に、小野寺の笑みが零れる。


「ふふっ」


「どうしたんだ?」


「私、皆に相談して良かった。あんなに先が真っ暗だと思ってたのに、今はなんとかなりそうって気がするの。……ありがとね」


「それは前払いか?」


「……ううん。これは、ロールプレイのお礼。だからお願い、私を助けてね」


 念を押された約束に応える為、俺は小野寺を見つめ返し、大きく頷いた。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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