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助けたギャルが高嶺の花だった  作者: 大豆の神
そして二人は――
112/123

#108 妹は多ければ多いほどいい……?

「ごちそうさまでした」


 食卓に並んだ食器が全て空になり、俺達は満足げな声を漏らす。


「やっぱ飛鳥が作るご飯は世界で一番美味しいな」


「そうですか? えへへ、なんだか照れちゃいますね……」


 小野寺がいるおかげか、今夜の飛鳥はやけに素直だ。抵抗される前に可愛がれるだけ可愛がってしまおう。


「ほら、いい子だな。よしよしよしよし……」


「きゃっ、くすぐったいですよ兄さん」


「ほれほれ、ここがいいのか?」


「やめてくださいって……」


「今日はたくさん頭撫で――」


 ふと、視界の端にいた小野寺が俺の服の裾を掴む。彼女はもの言いたげな目で、俺をじっと見つめていた。


「きゃーっ……どうしたんですか、兄さん?」


 急に俺の動きが静止し、悲鳴を上げていた飛鳥も冷静になる。

 飛鳥は俺の視線を辿り、状況を察したのか口を噤んだ。


「光君」


「はい……」


「……私のお弁当も、美味しいよね?」


 そう問う小野寺は、今にも泣き出しそうに目元を潤わせている。


 ど、どうしたんだ小野寺……! 俺、なんかまずいことでもしちゃったか? ……と、とりあえずここは正直に答えよう。


「もちろん。最近はあの弁当がないと午後の授業に身が入らないくらいだ」


「そ、そうなんだ……!」


 一瞬、パッと明るい表情を見せた小野寺だったが、「あっ」と思い出したようにジト目を俺に向け直した。


「……じゃあ、私のご飯は世界で何番目に美味しい?」


 そうくるかぁぁぁ!! どうする? さっき飛鳥に『世界で一番』って言ったこと気にしてるってことだよな?

 ……俺も迂闊だった。いつも弁当を作ってくれてる小野寺の前で、あんな失礼なことを言ってしまうなんて。


「小野寺のご飯も、すごい美味しいよ」


「でも、飛鳥ちゃんのご飯の方が美味しいんだよね……」


「いやー、さっきはああ言ったけど、僅差で小野寺の方が上かもしれないなー……」


 すまない飛鳥! ここは俺のピンチを救うと思って、二番の称号を甘んじて受け入れてくれ!

 情けなさ全開の胸中で、助けを求めるように飛鳥に目線を送る。すると、飛鳥は口を尖らせふくれっ面を浮かべてこう言った。


「へぇ、兄さんは私のご飯より小野寺さんのご飯を選ぶんですね……」


 こんなんどないせいっちゅうねん! ……おっと、感情が荒ぶるあまりエセ関西弁が出てしまった。こんなの関西出身の人に聞かれたら「いてこますぞ!」と怒られてしまう。

 それはさておき、妹(本物)と妹(みたいな同級生)を前にどう答えるのが正解か、俺は頭を悩ませていた。


「光君、どっちのご飯の方が美味しいかちゃんと答えて……?」


「そうですよ兄さん、これは私達にとって死活問題なんです!」


「ちょ、ちょっと待ってくれ……」


 床に手をつき前のめりになって迫る二人は、俺の瞳の奥から答えを探ろうとしているようだった。

 二人に熱視線を注がれ、俺もいよいよ逃げることはできなくなっていた。


 ――分かった。そこまで熱心に答えを求めるなら、俺も腹を括ろう。がっかりされても構わない、俺の本心を伝えるんだ。


「俺は、二人の作るご飯が好きだ。けど、それはどっちが良くてどっちが悪いとか優劣をつけられるものじゃない。俺は飛鳥の作るご飯が好きだし、小野寺の作るご飯も大好きなんだ。だから二人とも、いや二人が一番だと思ってる」


 二択を迫られた場面でどっちつかずな回答をする。これがラブコメのワンシーンだったら、俺は間違いなくダメな主人公だ。

 それでも言えなかった、俺が大好きな二人のどちらかが劣っているなんて。


「……これが俺の本心だ。あとは煮るなり焼くなり好きにしてくれ」


「本当に兄さんは卑怯です。……ね、小野寺さん?」


「うん……そんな風に言われたら、私達が恥ずかしいよ……」


 ……あれ? 二人ともどうしたんだ? そこは「この甲斐性なし!」とか言って怒りだすところじゃないのか?

 戸惑う俺と顔を真っ赤に染めた妹達が、リビングに奇妙な温かさをもたらしていた。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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