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生まれ変わったら死んでました〜怠惰なゾンビは隠者になりたい〜  作者: かんた
第1章 ゾンビになった日

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これが家族か・・・・・・・・・・不安だ

前回までのあらすじ


ゾンビよりゾンビみたいな血まみれ父さん登場



 飾りのないベッコベコの兜。おそらくブリキ製。

 傷だらけの皮鎧。古いものから新しいものまで血がべったり。

 木製の盾。不揃いな鉄片が複数枚埋め込まれている。

 大鉈のような分厚い片刃の剣。これだけはよく研がれているが、一番血まみれ。


 面頬で顔は見えないが、言動からケロックの父兄にあたる人物なのは間違いない。しかし、これを自分の家族と呼んで良いものか考えさせられてしまう。

 当然だが、そんな彼をルナリアは厳しく叱る。ケロックを燃やしそうな勢いでなでなでしながらだが。



「ファラン! 仕事着のまま帰ってきたの!? ケロちゃんとフニちゃんが怖がってるじゃない! いい加減騎士団から支給された装備を着けなさいよ!」


「しょうがないだろ!? 冒険者時代からこのスタイルで慣らしてきたんだ、今さらあんなクソ重い鎧なんか着れるか! こんな早く帰れたのもこの軽さあってこそだ!」


「何が早くよ! あなたがちんたら仕事してる間に、ケロちゃん、一回、し、死に……うわぁああああああんケロちゃぁああああああ」


「お、おい泣くなよ大袈裟だな……うおぁケロック!? なんだその生気のない顔! 親の顔が見たいわ!」


「あたしたちでしょ! いい加減に親の自覚持ってくれる!? 顔色悪いのだって、いっかい死んじゃったからに決まってるじゃない! ファランのバカァあああああああ」


「だから泣くなってルナリア! ほら、フニランだってあんな隅で震えて……やめろ、二人とも父さんをそんな目で見るなぁあああああああ!!!!!!」



 こんなのが親だとしたら泣きたい、そう思っても泣けない死人ケロック。

 とりあえずこの無秩序をなんとかしてもらいたいので、フニランと呼ばれた少女の方に目を向ける。あくまで他力を求めるのが本編主人公のクオリティである。

 

 びくりと体を震わせる、母親譲りの茶髪の少女。鋭利な刃物のようにも見える力強い目をしているが、何かに怯えるように、それでいて警戒心を持ちながらこちらを見つめ続けている。



(何に怯えているんだ・・・・・)


『え?まだ気づきません? というより気づかれてません?』


(え、何が?)



 まさかとは思いつつも、【天の声】さんにおそるおそる確認を取る。




『死んだはずの人間が生き返ったら、普通怪しみますよね』


(ですよねー)




 親バカが親バカしすぎて忘れていたが、このしっかり者の妹フニラン、死人の復活という非常識と、生まれた時から一緒にいる血を分けた兄の変容に、しっかりと嫌疑の目をもって観察していたのだ。以前の兄とどう違って、今の兄に何が起きているのか、子供なりに考えてはいるようだった。


 具体的に言えば、



(死んだ人はテンゴクに行くっておかあさん言ってたもん。お兄ちゃんのタマシイはテンゴクに行ったんだもん。きっと、あの中にはお兄ちゃんじゃないアクマかなんかが入ってるんだもん。顔色わるいし無口だし、死んだおさかなさんの目してるから、あれはお兄ちゃんじゃないもん)



 などと、なかば確信をついた予測を立てていた。

 もしかしたら彼女は、この家で最も優秀な人物かもしれない。



『遅かれ早かれ起こっていた事態です。生まれて11年、ずっと成長を見守ってきた両親と、生まれた時からずっと兄を見てきた妹。突然別人になったあなたを見て疑われないわけがありません。』


(・・・・・。)


『もし受け入れられて、家族があなたの味方になったとしても、あなたの身体は成長することはありません。いずれは家族に捨てられるか、近所から気味悪がられて家族ごと追い出されるか』


(・・・・・。)


『なんにせよ、この世界であなたが生きていくということはとても厳しいことだと覚えておいてください。あなたにとっても、家族にとっても……って、聞いてます?』


(……おいで)


『っ!? 待ってください! それは早計過ぎます!』


 

 両親の言い争いも、天の声の忠告も、ケロックは意に介さない。

 彼の体の奥底から、血と肉と心とが望むままに、本能で妹だと認識できる存在をただ慰めるためだけに、ケロックは全くの無表情で妹に手招きをしていたのだ。


 フニランはそんな兄の様子を見て一瞬躊躇したが、あまりにも無防備で敵意のないその姿に、その足はゆっくりと引きずられるように近づいていった。

 距離が縮むごとに足はすくみ脳は危険信号を訴え続けるが、それでも歩みを止めることはできず、ついにケロックの手の届く位置まで来てしまった。こちらの目をじっと見つめてくる少年の死人のような目に身震いし、動いていた足は凍りつくように動かなくなっていた。もう引き返すことすらできない。



 そんな少女の頭に、少年はゆるく伸ばした腕をさらに体ごと伸ばして、自らの手を乗せてみた。



 いきなり強めに押し付けられたその手に、フニランは目を閉じ、体を震わせ硬直させた。しかし、ふと我に返った時に、なぜだかその冷たい死人の手が暖かく感じられるようになっている。



(・・・・・お兄ちゃんの手だ)



 ケロックが妹に対してそうであったように、フニランもまた、目の前の人間が兄であると本能的に認めてしまったのだ。



(ぜったい、お兄ちゃんじゃない。お兄ちゃんはよく笑うもん。お兄ちゃんは体は弱いけど、よくしゃべるもん。でも、こんな、こんなの・・・・・)



 心の奥底から、もう二度と会えないはずだった兄の面影を感じて、何かがあふれ出しそうで止まらなかった。


 そして、その何かは決壊する。





「……う、ひぐっ、うぇえええええええんお兄ぢゃぁあああああああああああ」




(ウワァめんどくさぁ)


『……フフッ、ひどい人ですね』



 何がおかしいのか、スキル【天の声】が少しだけ笑った。




 結局、幼い娘が泣き出したことで両親の喧嘩は収まり、夜になるまで家族の号泣大合唱は続いたのだった。




ケロックも生前は泣き虫でした。遺伝です。

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