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生まれ変わったら死んでました〜怠惰なゾンビは隠者になりたい〜  作者: かんた
第1章 ゾンビになった日
4/44

なんか助かりました

これまでのあらすじ


ルシルさんに消されるので最終回です。





「……すまない、慎重な動きを心がけてたつもりだったが」





 魔術を補助する触媒である、先の尖った小さな杖。物理的にも凶器になり得るそれを、ケロックのノドに突きつけつつ、ルシルが謝罪を述べる。

 彼女もまた、この突発的な事態に動揺していた。完全に無意識の行動だった。


 それほどまでに【ゾンビ】という害悪のイメージは、この世界で根深い常識として存在していたのだ。



 これでは会話のしようもない、ルシルは自らの行いを恥じつつ、いったん杖を降ろそうとする。




 ケロックは、咄嗟にその手を掴んで止めた。




 その冷たさと力強さにルシルの身体はこわばり、思わず「ヒッ」と小さな悲鳴が漏れる。

 しかし不思議と、彼の手からは強引さを感じなかった。もう同じ轍は踏むまいとノドを鳴らし、ルシルは大人しく観察に徹する。


 ルシルが降ろしかけていた杖の先端を、ケロックが自分の額に持っていく。状況は先程と変わらないように見えるが、その目には小さな不安と強固な意志が宿っているように見えた。




「・・・油断するなと?」


「(コクコク)」



 未だに声の出し方を思い出せないケロックは、首を縦に振る事で返事をした。




 先ほど自分に行った「情報開示」と、ここまでのルシルの反応で、自身の立場はなんとなく理解していた。

 襲い、疫を散らし、仲間を増やす。これらが生物にとって脅威である事は、血の巡らぬ頭でも容易に想像出来た。


 もしかしたら、自分はこの世界に居てはならない存在かもしれない。必要ならば未練もない今の内に、自身の短い生涯を終わらせる事も考えていた。もう死んでるけど。




『あなたのスキルである私も消滅することになりますね。まぁ所詮はスキルですし、生まれたばかりなので同じく未練はありませんが』


(苦労かけるね)


『サポートし足りないのが心残りですが、一連托生ですから』



 そんな心無い2人の心温まる会話? もあって、ケロックの意志は固まっていたのだ。

 そこに「生まれたばかりで何すればいいかよくわかんないし説明すんのもめんどくさいってか喋れない」という妥協などない。ないったらない。

 



 そんな彼の決意という名の開き直りに対し、何故かルシルは涙を流していた。

『長い人生の中で何度も立ち会った、新しい生命の息吹……そんな光が、この少年の瞳に宿っている!』とか考えていた。実際は死んだ魚のような濁った目をしていたので、何かの間違いである。




「くっ……本当に、すまなかった。ここまで意識がはっきりしていて、生まれた瞬間に自分の立場を理解し、自ら消えることを望む。それがどんなに辛い選択か、長く生きてきただけの私には想像もつかない…。

 君がもし、ゾンビという立場の厳しさに脅えようと、それでもなお生きたいと願うならば、出来る限りだが協力を惜しまないことを約束しよう。 

 それが私に出来る、せめてもの贖罪だ」



 

 


(テレレレッテレー! ケロックはパトロンを手に入れた!)


『……もしかして、私の主人はクズなのでしょうか』



 どうやら、我らが主人公は『ヒモ』としての進路を決めたようである。




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