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話せば長い経緯

前回までのあらすじ


外堀がこれ以上なく埋められてた


 候補ではなく、正式な婚約者であると宣言されてしまったケロック。

 真相については、ケロックが目覚める数分前に遡る。



「ルシル先生、あれからもう二日も経つが、ケロック君の容態は」


「以前も言いましたが、彼は()()()()()()。ゾンビとしてはありえない事かもしれませんが、本当にただ寝てるだけですし、命に別条はありません。一応別の部屋に移したのでじきに目を覚ますでしょう」


霧々(むむ)ぅ、頼みます先生。ウチのルイをここまで回復させたのは、他でもない彼なのだから」


 そう言って不安そうに体を揺らすのは、坊主頭にカイゼル髭の大男、バルディアス・バルガ・アイゼンヴァルト。今日も例外なく半裸だが、赤いふんどしではなく黒光りするブーメランパンツをはいている。だからなんだという話だが。


 彼の視線の先にいるのは、フニランの手を借りてゆっくり歩く彼の愛娘、ルイジアナ・トッカータ・アイゼンヴァルト。

 回復不可能とまで言われていた彼女だが、その身体からは包帯がほとんど外され、傷痕も薄く残る程度まで回復していた。まだ痛みはあるようだが、少しでも筋肉のこわばりを治したいという本人の要望もあり、こうして歩行練習を兼ねたストレッチに励んでいる。



「【竜の因子】でしたかね。竜の血族が持つ特異体質で、こうして発言するのは(まれ)だとか。自動回復に近い能力を得ているので、ルイジアナ嬢の身体も数年は保ちそうです」


「ケロック君には感謝してもしきれない。その上、あれだけの力を持つ事が知れ渡るならば、我の持つ全ての力でもって彼を守らねば。それだけ大きな借りがある」


「しかし、彼はまだ終わらせる気が無いようですが?」


「正直言うともう充分だが、今さら止める理由もない。ケロック君にはやりたいようにやってもらおうと思う」



 本来なら手の施しようのなかった魔力暴走。自力で乗り越える者もいるにはいるが、一般に知られる対処は教会の【神具】による魔力の吸い出しのみ、それすら延命にしかならないのが現状だった。それをケロックという少年だけが救ってくれたのだ。

 しかし、どのような方法であろうと『他人の加護(スキル)の読み取り』と『魔力暴走の治療』を行ったケロックは、それらを専売特許にしていた教会にとって、権威を失墜しかねない危険因子にとなってしまう。

 その上彼は、教会が最も存在を認めてはならないモンスター【ゾンビ】である。最悪の場合、【聖皇国】という国家戦力と全世界の宗教施設を敵に回しかねない。



「お父様、僕はケロックのために戦えるよ? この救われた命で彼に報いたいのもあるけど…あっフニ、もうちょっとゆっくり」


「お兄ちゃんを守るのに近道なし! しょうじんせよ!」


「精進の意味わかってないよね……とにかく、僕が彼のそばにいるためにそうするんだ。誰にも邪魔はさせないよ」


「娘もこう言ってる事だし、家令に言って縁談を進めねば……」


「そういうんじゃないから! まだ決まってないから!!!」



 そう叫びつつも頬を赤らめる娘を見て、バルディアスは満足そうな笑みを浮かべた。



(オルディナにも会えたらしいからな……)



 妻が命がけで産み、育て、そして遺した娘。記憶だけの存在とはいえ、妻の悲願が叶った事が嬉しくてしょうがなかった。ルイやフニランからその話を聞いて、感涙に咽び泣いたほどだ。


 そんな暖かさに包まれた寝室に、静かなノックの音が響いた。



『失礼、旦那様。クリストフでございます』


有無(うむ)? どうした」


『お客様がいらっしゃいまして、それが……』



 扉越しに客人の来訪を知らせるものの、何故か口ごもる執事長のクリストフ。

 その直後、ドカドカと数人ほどの荒々しい足音が廊下から響いた。



『おい、ここなのか?』


『外でお待ちくださいとお伝えしたはずです。恐れ多くも辺境伯家の邸内、そしてここは令嬢の寝室にございます。勝手に入った上でそんなぞろぞろと引き連れて……』


『使用人の分際で、子爵家嫡男でありルイジアナの婚約者でもある私を待たせるな。それにあんなチンチクリン、令嬢とかいう大層なもんでもないだろう』



 扉の向こうから若い男の声が聞こえ、フニランだけはその発言の内容に不快な反応をし、正体を察した残り3名は糞をドブで煮詰めたものを見たような顔をした。



「ヤツめ()おったか! クリストフ!! 追い返せ!!!」


『御意!! 【クリフ烈破(れっぱ)ぁぁあああああ】!!!!!!』


『ぐはぁ蹴りの風圧』 『我らまるで木端(こっぱ)のよう』


『マイク!? スペツナズ!?』


『面倒な。お前ら、その老害を押さえておけ。私は先に行く』


『いや無理ですよこんなのってげぼぉ』


『ゲドモントぉおおおお!?』



 執事長の激しい抵抗により、怒号・悲鳴・破砕音が響き渡る。

 しかし、無情にも扉は勢いよく開かれ、一人の若い青年が姿をあらわした。

 小さな眼鏡に七三分けの髪型。への字に曲がった口から知的かつ厳格な印象を受けるが、その身体は鎧のような筋肉に覆われている。身長はバルディアスよりわずかに低いがそれでも2m超。しかも、上半身だけの筋肉のサイズなら大きく見える。



「お久しぶりです伯父上。私の婚約者の容態が回復したと聞き、見舞いに馳せ参じました」


(フン)! まだ婚約者だと認めておらんわ、見てくれだけのニセ筋小僧が」


「家格や血筋、そしてこの筋肉などを総合的に見れば、他に候補などいらっしゃらないのでは?」


「機能美と造形美を履き違えおって、娘に手首を折られた事を忘れたか」


「機能美? 造形美? 否!! これは怒張美(どちょうび)!!! 限界まで膨れ上がった筋肉こそ至高!!! ここまで仕上がった今の私の肉体なら、ルイジアナにも引けを取らないでしょう!」


「ほとんど薬で手に入れた身体だろう! そんなヤツに我が娘をやるものか! さっさと帰れ!!!」



 ほとんど筋肉の話しかしていないが、会話の前半を(かんが)みるに、このインテリ系筋肉フェチはルイの婚約者候補であるようだった。



「……なるほど。確かにあの痛々しい傷は無くなり、陶磁器のような白い肌に戻りつつある。しかしあまりに貧相!! 筋肉どころか、女らしい脂肪も見られない! 未来の旦那であり次期領主(候補)でもあるこの私のために、女を磨かず何とする! 恥を知れ!!!」


「こちらのセリフだこの痴れ者がァアア!!!!」



 【筋肉魔導師】の名を体現するかのごとく、その腕に魔力を纏い豪腕が振るわれる。父、怒りの鉄拳制裁である。

 しかし、その拳は金属的な音を立てて光のドームに阻まれる。



「やれやれ、無為無策の挑発はおやめくださいな、アーノルド殿」



 そこに立っていたのは、白を基調に金色の刺繍を散りばめた神官服に身を包む6人の男達。その中から、一際小さいが背の高い帽子を被った小太りの男がアーノルドに苦言をこぼしている。



「お前達がいるだろう? 問題ない」


「そんな頼られても……私どもが部屋に入らなきゃギリギリ間に合いませんでしたよ? 領主殿の魔力と腕力相手では6人がかりでようやくですからな」


「ウェルムート! 貴様もかッ! この結界を解けぇえい!!!!!」



 そこに立っていたのは、白を基調に金色の刺繍を散りばめた神官服に身を包む6人の男達。その中から、一際小さいが背の高い帽子を被った小太りの男が愚痴をこぼしている。



「領主殿、貴殿のお力は重々承知しております。これ以上は【聖櫃(アーク)】が保たないので、一度拳を引いて頂けたら…」


「我が娘を中央への人身御供(ひとみごくう)に使おうとするモノグサ坊主のクセして、この恥知らずと手を組んだか!!!」


「人聞きが悪いですな? 私はただ、奇跡的に一命を取り止めた姫君に更なる治療を施したいだけです。それ故に、婚約者であるアーノルド殿の手をお借りしたまででして」


「クリストフっ!! なぜコイツらを入れた!!」


「申し訳ございません旦那様、無抵抗の神職に在る者を蹴るわけには参りませんでした。それ以外の掃除は終わってますが……」



 いつのまにか上裸の肉体美をさらけ出し部屋の中にいるクリストフ。足元には、既に意識を手放したアーノルドの私兵達4名が折り重なっていた。

 なお、あれだけの騒音であったにもかかわらず、廊下は元通り綺麗に掃除されている。有能過ぎる。



「執事殿は敬虔(けいけん)かつ聡明でいらっしゃるようで」


「構わん蹴っとばせ! 我が許す!」


「主人がこんなだと言うのに……って本当に蹴ってる!?」


「なかなか硬いですな」


「我がもう何発かぶん殴るから、絶え間なく蹴りを浴びせろ!」


「御意っ」



 領主がパイルバンカーのごとく拳を振り下ろし、執事が合間にドリルピックのごとく蹴りを叩き込む。

 聖属性の全方位結界である6人がかりの【聖櫃(アーク)】だが、ドーム全体に衝撃が伝わりビリビリと震え出す。



「まっマズい! 【聖櫃(アーク)】二重展開!! もしくは【聖絶(セイクリッド)】か【聖縛(ルナバインド)】に切り替えです!!」


「無理です神官長! 一瞬でも気を抜くと破られます!」


「詠唱妨害の為の連携ですかぁ!?」


「貴様ら全員のし餅にしてウチの馬に食わせてやるわ! 噴怒破(ふんぬば)っ!!」


「彼ならノリノリで踊り食いしてくれるでしょうね! ハァアアアッ!!」


「なんか怖いこと言ってるぅうううう!!??」





「やめましょうよ、みなさん大人げないです」




 嵐のような猛攻にウェルムートが死を覚悟した時、マイペースな、それでいて凛とした声で発言をする者がいた。

 件の中心人物、ルイジアナである。



「とりあえず、話し合ってみませんか? これではまとまるものもまとまらない」


()ぅ、しかし…」


「ですがお嬢様…」


「ボクなら気にしてないからさ。ウェルムート神官長、父と使用人の無礼をお許しいただきたい」


「いえ、ゼェゼェ、我々の方こそ勝手に上がり込んだ上に、ご令嬢には気を遣わせてしまいまして」


「ならお互い様ですね、双方不問にしましょう」


「いやはや、ご立派になられましたな(マジ死ぬかと思った、助かった……)」



 一触即発どころか死人が出そうになるなど、この場で冷静になれる者がいない中で、ルイだけが大人な対応を見せた。父親と従者は不満げだったが。

 あわや風前の灯火(ともしび)かと思われた神官達の命が救われた事により、彼らは一瞬だけ信仰を忘れ、「この世の神を見た」という顔をする。

 そんな一連の流れを眺めていた諸悪の元凶であるアーノルドは、ルイのその様子に感心したように「ほう」と呟いてからルイに声をかける。



「先程までの非礼を詫びよう。見た目はどうあれ、あなたの心の怒張美はムキムキらしい」


「えっと、ありがとうございます?」


「あなたとならアイゼンヴァルト領を共に発展させる事が出来そうだ。ぜひ正式に婚約を結んで欲しい」



 先程まで彼女を散々罵倒していたのが無かったかのように、事務的な態度でサクッと婚約を申し込む。ついでに成り上がりまで黙示的に宣言して。

 領主と執事はアーノルドのあまりの図々しさに歯茎と眼球から血を流していたが、ルイからの叱責が相当効いているのか、その場から動こうとはしなかった。



「認めんぞぉ、領主の座も娘との婚約も、我は絶っっっ対に認めん! 愚怒々々々(ぐぬぬぬぬ)……」


「家庭の無い私にとって、このお屋敷と孫同然のお嬢様、両方を奪うなど言語道断! その血を私の靴墨にしてくれよう……」



 訂正しよう、口は動かすようだ。



「やれやれ、老害達がモーロクしてキャンキャン吠えているようだ」


「「誰が老害だ誰が!!!」」


「だってそうでしょう? 他に婚約者候補がいないのだから」



 自信満々にそう(のたま)うアーノルド。というのも、彼には確かな自信があった。

 アイゼンヴァルト辺境伯は王族とも対等に交渉するような大貴族だというのに、嫡子とすべき男児が授かっていないという問題があった。そのため跡継ぎの条件が、


 ・辺境伯家の婿養子に相応しい家格や実績

 ・婿養子に貰っても家督に影響のない次男坊以下の者

 ・なるべく血縁の近しい者

 

 などなど、求めるハードルが高くなり複雑化していったのだ。



「その点、領主の甥にあたるこの私が跡を継ぎ、実家を含む領内の分家を潰し吸収すれば家督に影響はない! なんなら予備として弟もいるしな!

 なぜ婚約者【候補】などと面倒な取り決めをしたか知らんが、後はあなたの意志だけ! ルイジアナ嬢、私と共にアイゼンヴァルドの輝かしい未来を歩もうではないか!!」


「えっと、お断りいたします」


「ありがとう! では神官長! 早速誓いの祝福を・・・・・今なんと?」



 一世一代のプロポーズをスカしてしまい、サイドチェストのポージングで固まったアーノルド。後方では、「やーいバーカバーカ!」「ザマーミロザマーミロ!」とキャラ崩壊待った無しの汚い野次が飛ぶ。



「領主になりたいのでしたら、お父様に認めてもらって1人でなってください。僕はまだ自らの身の振り方を考えている途中ですし、これらの保留についてもお父様に許可はいただいています」


「…つまり、貴族以外の道も考えている、と?」


「その為の【候補】なんです。僕が貴族の礼を尽くすなら、『僕』から『私』になってドレスを身にまとい、裾をつまんで美しくカーテシーを踏んでみせるべきでしょうけど、あいにくですがそういった展望はありませんから」



 この話は彼女が生まれた時から既に、両親の間で決められていた事だった。

 母の余命は短く、娘と共に歩めぬこと。そしてその娘すらも病弱であること。

 せめてその心は自由であれと、貴族社会のしがらみに縛られないよう、娘の意志を尊重する事にしたのだ。



「本当に立派になったな…せっかく元気になってきたのだからここはひとつ、王都で華々しくお披露目の社交界デビューを……」


「伯父上はあんな事を言っているが?」


「お父様、いったん黙って……」



 今は盛大にブレているようだが。



「とにかく! 残念だったなアーノルド!! 我はお主なんぞに領主の座を明け渡すつもりはないし、()()()()()()()()()()()()()()()()!!!!」


「何、だと…?」


「あっお父様、あえて伏せていた話なのにっ」



 領主の投げつけた爆弾発言から、アーノルドは驚愕に表情を歪ませた。

 嫉妬ではない。あくまで彼の目的は次期領主の座にあり、それに最も有効とされるのがルイジアナという手札だった。ただそれだけだ。

 しかし、アーノルドは焦っていた。その手札を他者が持つとなると話が違ってくるからだ。



「そっ、それはどこのどなたでしょうか? 家格は? 年齢は? そも辺境伯家との縁者でしょうか?」


「騎士爵家の長男であり、亡き妻の妹の子であり、我が叔父ガルド・ローエン卿の孫にあたる。つまり、貴様と同じルイの従兄弟だな!」


「……ああ、ファラン・クロムハーツ殿。そういえば2人の子宝に恵まれたとかお聞きしてました」



 さすがインテリ筋肉。数秒で記憶の隅から情報を引っ張り出してくる。

 しかし、続くセリフがよろしくなかった。ここまでで一切会話に入っては来なかったがゆえに、失念していたのだ。



「しかし騎士爵とはいえ、冒険者あがりで一代爵位の貧乏準貴族でしょう? その子供は平民では?

 そんなどこぞの馬の骨、大貴族の令嬢である彼女に相応しくない!」







「_____今の、お兄ちゃんとお父さんの事?」



 そう、フニランの存在である。



 正直、領主とその娘だけでなく、彼らに仕える執事にとっても、先の物言いはいただけないと感じていた。3人にとってケロックはルイの命の恩人で、彼とその家族を侮辱する事は本来許されるべき事ではない。

 それでも、この場に欲の皮の突っ張った神官長が居座っている限り、ケロックの能力の一部を晒すわけにはいかない。この場はこらえるしかなかったのだ。


 しかしフニランは違った。そもそもここまで尊敬する義姉(候補)が侮辱されてきたことも、黙って耐えていたのだ。自分の存在意義の一つである兄にまで悪意が及ぶのなら、許す道理はない。


 この日、この時、この場の全員が、少女の背後に魔王(ミツアナグマ)の幻覚を見た。「目の前に立たれるとマジで怖い生き物なんだ」と思い知らされた瞬間である。



「・・・・・きっ、君は?」


「あなたが馬のクソだの何だのとさんざっぱら罵倒したクロムハーツ家の娘ですが」


「フニ、クソは言ってないと思うよ」


「お貴族様の話だからと黙って聞いてれば、ルイねーちゃんのが貧相だのあなたが婿になるだの領主になるだの好き放題言いやがって。

 挙げ句の果てに『そんな馬のクソにも劣る死んだ魚の目のゲリ野郎、あなたの婚約者にふさわしくアァリマセーン』って?

 上等(ジョト)だクラァ! てめーなんぞお兄ちゃんの足元にもおよばねーよ! おとつい来やがれくださいゲリ野郎!!」


「死んだ魚の目も言ってないと思う」


「それに、ルイねーちゃんの病気に何も出来なかったクセに、今さらノコノコしゃしゃりでないでよ!!! 少しはお兄ちゃんの爪のアカでも煎じて飲んだらどーですか!!」


「それ今一番言っちゃダメなやつ!?」



 啖呵を切ると同時に、思わず禁句を吐いてしまうお茶目なフニラン。それをルイが慌てて抑えようとする。

 しかししかし、耳敏いかな神官長。彼は決して聞き逃さなかった。



「おのれ、なんと品性下劣な娘! やはり平民、同じ人間とはとても_____」


「アーノルド殿、少々私めにお時間を。

 フニラン嬢、今の話は本当ですか? 私どもがお手上げだったルイジアナ嬢の容態は、自然回復ではなく、()()()()()()()()()()()()()?」


「だからそう言ってるでしょ!!!・・・・・あっ」



 神官長の言葉に言い返すも、失言に気づきハッとして手で口を覆うフニランだが、時既に遅し。神官長が領主に詰め寄ってくる。



「アイゼンヴァルト卿、これは一体どいうことでしょうか?」


「あーこれはーそのー」


「_____はぁ、もうよしましょう、辺境伯殿」



 返答に窮する領主の前に、今の今まで成り行きを見守っていたルシルが立ち塞がる。



「ウェルムート神官長殿。詳しい説明は省かせていただきますが、彼がルイジアナ嬢をここまで回復させたのは事実です」


「ルシル先生!!?」


「何という事だ……」



 これ以上隠しても不信感を煽るだけだと考えての行動である。決して教会が嫌いでギャフンと言わせたくてやってるわけではない。ないったらない。



「チェルーシル殿。2年前、あなたがウチの【神眼の水晶】を勝手に持ち出した事がありましたね。それに関係すると?」


「持ち出したとは人聞きの悪い。少々拝借しただけです」


「その内容を教えていただく事はできませんかな? 非公式でしょうが、事は【英雄】や【神敵】にも関わる可能性があります」



 教会とは神の教えを説く代行者であり、対外的には人類の中で最も神に近しい存在である。

 そんな彼らですらどうにもならない病を1人の少年が治したとあっては、教会全ての権威が危ぶまれる。

 ウェルムート神官長は、どうにかして件の少年を【英雄】として教会に引き入れるか、【神敵】として誅伐する等の対応が必要だった。

 

 ただ、これに対し盛大に悪ノリする人物がいた。



「ほう、神敵! その話が本当ならこの私任せたまえ!! 必ず討伐してしんぜよう!!!

 伯父上! この討伐が成功した(あかつき)には、彼女との結婚を認めていただきたい!!!」




「「「「はあ!?誰がお前なんかを!!!!!」」」」


「ちょっ、アーノルド殿!?」




 この言葉にはフニランだけでなく、その場の全員が許容できなかったようだ。











 コンコンガチャ「失礼しまーす」



「婚約者はもう決まっておる! そこのケロック君だ!!!」


「そうです! 僕は彼と、ってうぇええ!? ケロック起きたの!!??」



「・・・・・」キィー…パタン。











「……何あれ」


『さあ?』

・ミツアナグマ

 ダブついた分厚い毛皮を持つイタチ科の哺乳類。通称ラーテル。

 その皮は蜂の毒針どころか、ライオンなどの猛獣の爪や牙すらも凌ぐ。

 神経毒に耐性があり、コブラ毒で麻痺しても復活する。

 特筆すべきはその攻撃性であり、上記含め水牛や人間さえも捕食対象として執拗に追うことから『世界一怖いもの知らずの動物』としてギネスブックに認定されている。

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