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生まれ変わったら死んでました〜怠惰なゾンビは隠者になりたい〜  作者: かんた
第1章 ゾンビになった日

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生き返りました









 その日の彼は、なんだかすっきりしない気分で目を覚ました。

「何が」とか考える前なのに、何かが普通じゃないとわかるのだ。




 寝ても覚めても真っ白。上も下もわからないようなふわふわした世界の中で、彼の意識は明滅しながらも覚醒し、ゆっくりと安定していく。

 痛みはない、不快感もない、でもなんだか怠い。全身に意識を巡らせた彼は、未体験の感覚をもう一度噛み締めた。




「この感じ、なんだろう?」と考えた瞬間。



『パッシブスキル【触覚】を手に入れました』

『パッシブスキル【平衡感覚】を手に入れました』

『パッシブスキル【深部感覚】を手に入れました』



 頭の中で、抑揚の無い中性的な声が響く。

 直後に、ずぅんと身体が重くなった。比喩ではなく、物理的にだ。

 彼がなんとなく感じていた『怠さ』の原因は、今感じたこの『重さ』にあって、【触覚】【平衡感覚】【深部感覚】で初めて感じる事が出来たのだと、本能的に理解する事が出来た。



(はて、そもそも頭に響くこの『声』は何だろう? )



 彼のそういった疑問にも、『声』は律儀に応えてくれた。



『ご誕生おめでとうございます。この世界の女神様の気まぐれによりあなたのサポートをさせていただきます、【天の声】と申します。私自身は既にスキルとして入手済みですので、何かご質問などございましたらお応えいたします』


(女神? スキル? 説明ぷりーず)


『前者は禁則事項に抵触する為、返答出来ません。後者はその限りではありませんが、いずれわかることなので説明を省かせていただきます』



 応えてはくれるけど答えはくれないんだなぁ。そう考えて思考を巡らせるも、彼の頭は上手く働かない。まるで、脳に血が巡っていないかのようだった。

 視界が真っ白なのは、自らの目が光を上手く絞れてないからだと気づく。彼は眉根を寄せる勢いで目を凝らし、一点を見つめる事で光の量を調節しようとした。


 視界を埋め尽くしていた白は少しずつ薄れていき、焦点も定まっていく。やがて、木製の壁や床・天井などを、うっすらと確認する事ができた。


 ここで初めて、目だけじゃなく耳も聞こえない事に気がついた。

【天の声】とかいう話し相手がいるので、精神的な不安もなく、正直このままでも問題ない。ただ、無音のままなのもどうなのかと思い、使えるかわからない耳を澄ましてみた。






 そんな視力と聴力の回復に躍起(やっき)になる彼を、部屋の外からじっと見つめる少女がいた。



 年齢にすると10代に届くか否かというところで、見るからに幼い子供である。

 手には小さな白い花を生けた花瓶を抱き、ちょうど部屋の扉を開けたところで立ち止まっていた。

 その眼は瞳の形がはっきりするほど見開かれ、口は半開きのまま動かない。滑稽(こっけい)に見えるかもしれないが、きっと我を忘れるほどの事情があるのだろう。


 そんな状態が続いていたが、彼の脳内に『パッシブスキル【視覚】と【聴覚】を手に入れました』というアナウンスが流れた瞬間、少年と少女の目が初めて合ったのだ。


 しばしの沈黙。そして―――――






「せ、せんせー! おかーさん! おにーちゃんが生き返った!!!」






 初対面なはずの少女の口から飛び出した言葉には、ここまで冷静だった少年もさすがに面食らってしまったのである。




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