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星の大河 -漆黒が誘う白銀への道標-  作者: アレの様な何か
第2章:Imperial Codex  太古の掟と宙ノ僕
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第11節 蟻と象

まぁ文は荒いんですけれど

それより、SF考証の方が荒いのが悩ましいです…

流体金属にすれば、もっと矛盾を感じずに済んだのに…


プリメーラは無人航宙艇を自爆させた後、

およそ15秒程度をかけて

クライドの居る『概念艦長席』に戻って来た。


プリメーラの圧倒的な空間支配能力を目の当たりにして

ただ呆然と、銀河帝国皇帝を迎えるクライド。

思わず、無意識に恭しく頭を垂れていた。


『さて、相手の主戦力も壊滅させた事ですし…

 どうしましょうかね?』


そう言ってクライドに微笑むプリメーラ。


『えっと、どうって言われても…

 俺、頭悪いんで、こういう時にどうすればいいのか…』


プリメーラに次の行動を催促されたものの、

そもそも指令系統の直接指揮をする様な上に

立った事のないクライドである。

この様な状況下に陥って、何をするべきなのか?

その基本的な事さえ分からなかった。


これが士官学校にでも行っていれば、

士官としての指揮の常識的思考が出来たのだろうが

哀しいかなクライドは下士官で軍隊に入り

戦時中の臨時階級昇格によって『准尉』が与えられた

叩き上げなのである。

元々、艦長職などと言う中佐級、大佐級がする仕事など

出来るわけがなかった。


『勉学を努力で獲得しないのは、確かに怠慢ではありますけれど

 それを言い出したら、私達S級人類なんて、

 複素結晶に知識データベースをダウンロードするだけで

 知識を得る事が出来る、B級人類からすれば、

 究極の怠けで、勉学のインチキが出来る存在なんです。

 そういう知識獲得の形態を構築している存在からすれば

 自分が知識と知恵を持っていないのなら、

 持っている存在に助力を仰ぐのも、

 1つの勇気であり、努力でもあるのですよ?』


クライドの迷いに、そう囁いて助言するプリメーラ。


『…えっと、な、なるほど…

 分からないなら、誰かに教えて貰えと…

 な、なら、えっと、陛下…

 こういう時は、どうすればいいのでしょうか?』


プリメーラの助言を得て、

戸惑いをそのまま問いに変えて尋ねるクライド。


『あー、そういう時は、陛下じゃなくて、

 まず私の方に頼って欲しいですね……

 複素結晶というのは、主人をサポートする存在であり

 陛下の言うように、データーベースでもあるのですから…』


と、クライドがプリメーラに尋ねた言葉に

シードがそう横槍を入れてきた。


『お、そ、そうか…

 じゃぁ銀河帝国皇帝陛下に知恵を仰ぐのも不敬だし

 シード、教えてくれ…

 こういう時は、どうすればいいんだ?』


シードの言い分に直ぐに納得し、今度は相手を変えてそれを問うクライド。

そんなクライドの狼狽えている姿を見て、プリメーラは楽しそうに笑った。


『敵の主戦力も壊滅させましたし、

 今の原則としては、敵対行為は即時殲滅が原則ですけれど…

 ここは王者の風格を見せて、降伏勧告でしょうね…

 圧倒的な戦力差を見せつけての降伏勧告。

 これが強者の礼節というモノですよ…』


と、シードは常識論を語る。


『な、なるほどな…降伏勧告か…

 この前みたいに、問答無用で殲滅とかよりは

 確かに遙かにマシだな…

 じゃ、それでお願いする…』


シードのそんな助言に納得し、

なれば、とその方針をクライドは要求する。


『いやいや、そこは艦長がやって下さいよ…

 まがりなりにも人間と人間の会話なんですから

 何でもかんでも、複素結晶がやってたらマズイでしょう?』


『は!? 俺がやんの!?』


そんなクライドの言葉に、逆に実行者を指名するシード。

指名されて驚くクライド。


『だって、貴方、私の艦長ですよ?

 なら、こういう事は、艦長がやるのが筋でしょう?

 艦の代表者という意味で、艦長なんですし…

 最高責任者は確かにプリメーラ様ですけれど

 プリメーラ様が顔を出して映像記録を残すのは

 今の段階では憚られますからねぇ…』


と、シードは一応のクライドの立場というモノを説明した。


『ああ、そういう問題もあるのか…』


シードの言葉で、何故プリメーラが表立って言葉を発しないのか

何となく理解したクライド。

しかし、となると、今のクライドに要求されている責任は

あまりにも重いモノでもあった。


『いや、でも、これって、今、

 形的には、華帝国の特務艦隊とクリークス帝国の戦争って

 (かた)りに近い状況になってんだろ?

 そこで、俺みたいに華帝国の人間でも何でもない奴が

 顔出して降伏勧告って、マズくないか?』


そうクライドは、今の騙りとも本当とも言えないグレーな状況で、

自分が顔出しして降伏勧告をするというのは、

如何なモノかと抗議してみる。


『いやー、姫の方と結婚されてるんで、

 書類上は華帝国とは親類関係になってますし、

 何より、汎銀河帝国皇家の直系親族扱いですからねぇ…

 華帝国の人間でもない…

 汎銀河帝国の人間でもない…

 …とは、本当は言えませんけれど…

 確かに、華帝国本土からしてみれば、

 クライド艦長は「アイツ誰だ?」状態ですからねぇ…

 降伏勧告の通信が華帝国に傍受されて渡れば、

 華帝国が混乱するのは必至ですし

 そんじゃ、顔をマスクで隠して降伏勧告とか

 そういうのでどうですか?』


そんなクライドの言葉を受けて、

妥協案を提案してくるシード。


『ふーむ…顔を隠すってのは、俺的には有り難いが…

 それでも華帝国からすれば

 不審者以上の何者でもないよなぁ…

 それでいいのかねぇ?』


シードの言葉に腕を組んで首を捻るクライド。


『良いんですよ…

 どうせこれからの流れは見えているんで、

 こっちとしては、連邦憲章の掟に従って、

 最低限やる事だけやって、礼節をつくせば…

 というわけで、はい…』


と、シードは光子の空間で、まるで物質があるかのように

光子のマスクを作ってそれをクライドに渡した。


『何だ、このマスク…

 これ、どうみても悪い人の被るマスクなんですけど…』


そのシードが渡したマスクというか仮面を見て、

あまりにおどろおどろしい仮面に、眉をひそめるクライド。


『こういうのは、ドスが効いてるかどうかなんですってば…

 なんか、怖そうな帝国が凄い戦力見せて、

 怖そうな格好で脅せば

 それで”普通”なら終戦ですよ…

 それも、殲滅するんじゃなくて、降伏勧告ですよ?

 どんだけ心広い、悪の帝国の提督なんです?』


とクライドの言葉をシードは笑う。


『そんなモンかなぁ…』


とシードの説得に難色を示し、ともかくそのマスクを被るクライド。

少なくとも、それでクライドの素顔は隠せるのは確かだった。

ただ、どー見ても悪い人が、これから脅します、

という雰囲気になるのは否めないのではあったが…。


『マスクの中に映像で、降伏勧告用の定型台詞を表示しますんで

 ”っぽく”、喋って下さいね…』


と語りかけるシード。


『おう…』


シードの言われるがままに、その指示に従うクライド。

クライドの心も含めての準備が出来たと判断すると

シードは重力波変調電波通信を使って

15光秒程度、向こうに居る相手に通信チャンネルを確立した。


その通信チャンネルに沿って

敵艦隊の指揮艦橋スクリーンに、怪しい仮面の男が映る。


『えっと…、

 わ、我はぁ、華帝国特務部隊…最高指揮官…

 任務秘匿性のぉ…為ぇ、仮称であるが…

 エグザン…クライデネル…と申す者ぉなりぃ…

 き、貴国の敵対行為…にぃ…対してぇ…

 相応の…報復を…、実行させて、貰ったぁ…

 れ、連邦憲章に…従えば…、これらの行為だけで…

 貴軍等の…即時殲滅は、容認されるものでぇあるぅ…

 し、しかし、華帝国の…寛大なる…慈悲心によって…

 弱小なる軍力…の…尽くを、殲滅するを…良しとせず…

 よって…貴軍等に…、降伏を…勧告する…

 我等にぃ、降伏せよ…

 またぁ…、貴軍等を、逐次、武装解除…するのは…、

 特務部隊の…我々には…煩雑であるので…

 我々のぉ…降伏勧告を…受諾するのなら、

 この戦闘宙域より…、撤退する事を要求する…

 撤退してぇ、逃げるのならばぁ、追撃はしない…

 い、以上だ!!』


と、クライドはシードが仮面の中に映した

台詞の台本を棒読みしながら、相手に降伏勧告を行った。


『ヘタクソですねぇ…』


シードはクライドの棒読みの台詞にそう言って呆れるシード。

厳つい仮面を被らせて、圧迫通信を試みてみても

台詞がこうも辿々しかったら、不信感しか生まれないだろう。

それにシードは閉口するしかなかった。


『うっさいよ!!

 降伏勧告なんて、された事はあっても、

 やった事が無い奴に、いきなり難易度高い事を要求すんなよ!!』


と、シードの毒舌に粟立つクライド。

自分でも余りの台詞のヘタクソさ加減に苛つくレベルだったのだ。

しかし、ともかく、滑舌は悪かろうが、内容は伝わっただろうし

戦力差を見せての降伏勧告、そして降伏の承諾条件は

宙域からの撤退、等という要求なら、交渉の内容的には悪く無い。

攻めて来た相手の主戦力である無人攻撃機を破壊しての、

相手への撤退要求とは、何とも横綱相撲の交渉ではないか…。

こんな事、クライドの母国のハルト共和国では絶対に出来ないし

出来たとしてもしないだろう。

それを思って、クライドは『超帝国の態度』という奴の

在り方を知って、純粋にそれを賞賛した。

なるほど、これなら王者の風格であった。


しかし、そう思ったクライドとは対称的に

プリメーラは険しい表情のままであった。

10数分間の僅かな時間が過ぎた。

そしてシードが声を上げる。


『相手側からの返信、来ました…

 スクリーンに映します…』


そう言って、シードは概念空間のスクリーンに

おそらくはクリークス帝国の提督であろう

初老の男の映像を映したのであった。


「顔を隠す無礼を働き、素人の様な喋りでの降伏勧告とは痛み入る…

 礼節という言葉を知るなれば、華帝国と僭称する貴軍らの所行は、

 尽くが無礼の塊なり…

 されど、謎の戦力を以て我等の攻撃艇を

 撃退したのは紛れもない事実。

 戦力の圧倒的差は、貴軍等の言葉通りである。

 しかし、我等は、貴軍らが要求する降伏勧告を

 受け入れる事を良しと出来ず…

 もし、撤退などしようモノなれば、

 背信の徒として、我等の軍から包囲殲滅されるであろう!

 この期に及んでは、貴軍等の戦力の実情を暴くべく

 全軍突撃の元に、クリークス帝国の繁栄の礎となる所存である!

 クリークス帝国、万歳!!」


と、物凄く悲壮な表情で彼は叫んだのであった。


『え?』


その返信を聞いて、ポカンと口を開けるクライド。

無用な殺しはしないので、逃げろ、と言ってやったのに

玉砕覚悟で、全軍突撃してくる、とか返信してきたのである。

流石にその内容にクライドは呆然となった。


『やっぱり、こう来ましたか…

 まー、予想通りですけれど…』


とシードもプリメーラも溜息をつく。


『ちょ、どうしてこういう判断になるの!?アイツ等!?

 全軍突撃!? どうして!?』


クライドは二人が奇妙な納得をしている前で

慌ててこの状況を問いかける。


『それは、むしろ、

 クライド艦長の方が良く分かってるんじゃないんですか?

 こういう手合いと、ずっと戦って来たんでしょう?

 なら、こういうパターンになると思いませんでした?』


と、シードは呆れたような口調でそう返した。

何年もこんな奴等と戦って来たのはクライドのハズだ。

なら、こうなるのは予想出来るはずなのだが…。


『いや、ちょっとはこういう事も考えたけど!!

 でも、700以上の無人攻撃艇が一瞬に壊滅したんだぞ!!

 そんな滅茶苦茶な戦力持ってる相手に、突撃とか、

 死ぬだけだって、誰だって分かるだろ!?

 アホか!? アイツ等は!!』


シードの言葉を受けたクライドは、

相手が狂信的な軍事国家だという事は骨身に染みて理解していたが

圧倒的戦力差を見て、逃げる事さえしない様な

トンデモ無い馬鹿だとは思っていなかった。

だが実際には、そんな馬鹿だった事が分かって、更に粟立つ。


『まぁ、これが洗脳教育という奴ですね…

 色連邦帝国に加盟しない国にありがちなパターンです…

 国力の向上と、人民の思想方向性を一方向に向けるために

 教育構造から軍事主義にして、撤退を背徳と思わせるのです。

 相変わらず、支配者には、とても都合の良い教育ね…』


そう言ってプリメーラは何かを思い出しては苦そうに笑った。


『いや、でも、死ぬのが分かってて突撃なんて!!』


とクライドは、判断の天秤が狂っている事を口にした。


『相手の提督が、言っていたではないですか…

 撤退などしようものなら、背信の徒として自軍から殲滅されると…

 撤退したら軍法会議で処刑とか言われているのでしょう?

 処置無しですね…』


そう返してプリメーラは、肩を上げて溜息をつく。


『そんな!!

 行くも地獄、引くも地獄なんて、どうすれば!?』


プリメーラの解説を受けて、

クライドは相手側の頭のネジがぶっ飛んでいる理論に絶句した。

いや、その「頭のネジ」をぶっ飛ばす事こそが、

洗脳教育という事なのではあるが…。

それが理性では分かっても、感情の方で理解できなかった。


『まぁ、そうですねぇ…軍事組織というのは、

 司令官の性格で、組織の性格が決まる面もありますんで…

 こういう時の対応としては、司令官だけを各個撃破していって

 それで、体制がどう変化していくか?

 …ってのを観察するしか無いですかねぇ…』


そう、玉砕戦法で突撃してくる相手に、

シードは妥当に考えられる対処法を口にしてみる。


『旗艦だけを特定して撃破するって事か!』


シードの言葉を受けて、

最小犠牲による状態の打開の可能性を感じたクライドは

少しだけ、表情が明るくなった。

総特攻はあの司令官の独断かもしれないのである。

ならば、指揮系統を潰せば…。


『ま、一般論ですけれどね…

 これが、司令官だけを倒しても、次に司令部が移動して

 同じ様に突撃命令が繰り返されたら、

 本当に殲滅するまで戦い続けるしかないんで、

 そうなったら泥沼ですなぁ…』


と、シードは自分の言った方法論に1つの懸念も同時に口にする。

そこまで相手が、『ニンゲン』としての判断能力を失っていて

ロボットみたいになっている等と思いたくはないが

遺伝子爆弾を使うわ、熱核兵器で母星を攻撃するわ、

古代の星間国家が繰り返しては、

凄惨な戦争の歴史の傷跡を残してきた事を

こんな時代に、同じ様にやっている連中である。

ならばそういう「最悪」の可能性も考えねばならなかった。


『まぁ、もう相手の言っている事が、ニンゲンのそれじゃなく

 ロボットの理論になってますからね…

 ここから先は、同じロボットの私の領域でしょうかね…

 ブーミル級を出します…

 ブーミル級で旗艦を特定して、単艦殲滅をしますので

 それで、様子見ですな…』


言っては、シードは呆れて、

ブーミル級の三隻を、その場から発進させたのだった。


シードの命令を受けて、制限を開放されたブーミル級汎用巡航艦は

帰りのエネルギーを完全に放棄して、

光速の5%を出して敵艦隊に突撃を始めた。




ブーミル級汎用巡航艦の三隻は、自身の前面を守っていた氷を

周囲に配位させていた複素結晶の端末を用いて、溶解させ始める。

マグネトロンによるマイクロ波加熱で氷を蒸気化させると

配位していた複素結晶は、艦から離れ、互いのポジションに付き

レーザー光電力通信網を張り巡らして「場生成」の挙動を始めるのだった。

それらのエネルギーを供給するため、本体のブーミル級からも

レーザー光によるエネルギー供給が開始される。


複素結晶は、球状に内向き超高磁場を形成し

反磁性体の蒸気水を閉じ込め「高圧場」を形成していった。

マイクロ波加熱で、内部エネルギーが上昇した蒸気水は

磁場が作りだした高圧力によって相図空間の相転移変化を起こし始め、

蒸気と流体の間を変位する「液相」となっていく。


挿絵(By みてみん)


しかし、複素結晶の作り出す磁場圧力はより高圧下し

1気圧を超えて220気圧付近まで変化して、蒸気圧曲線を変えた。

そして超臨界流体寸前の350度付近まで高温化し、

屈折率の急落を阻止した亜臨界状態となる。

その高温液相になった段階で、次に亜臨界水は波紋流動を始めた。


挿絵(By みてみん)


『あれは何だ?』


そんなスクリーンに映っていたブーミル級の変化に

疑問を投げかけるクライド。


『戦闘空間時における、水を使ったバリア展開ですね。

 波動波紋によっての光学兵器の複雑屈折による光路変更、

 荷電粒子系の亜光速イオン粒子の磁場と水物質での捕縛

 電気中性粒子…いわゆる質量弾の

 水流体摩擦ブレーキと亜臨界活性熱水による融解作用等々、

 線状系攻撃からシールドする『盾』です』


とシードが解説する。


『ほへー、何だあれ? あんなシールドなんて

 見た事ないぞ…

 これが、汎銀河帝国のシールド技術なのか?』


とクライドはシードに解説された『(シールド)』に閉口する。


『ブーミル級は、一万隻とか二万積とか作るのを前提に

 安く作ってますからなぁ…

 あれは、とても安いシールドの部類ですね…

 もっと真面目にやるなら、色帝と同じ様にシールド艦を作りますし

 本気で戦うんなら『太陽動力炉(サン・イーター)』を搭載して

 二階偏微分系の粒子運動は全部捕縛エネルギーとして吸収できる

 空間エネルギー池を搭載しますんで…

 まぁ、こんな6000年前付近の技術で頑張ってる相手への

 手加減を考えるなら、あれぐらいの超過技術で十分ですかね…』


『これでも手加減なんだ!?』


『スターゲートという恒星間跳躍が成立する技術から見れば

 あの程度の事が出来なければ、話にならないんですけど…』


『マジで!?』


と、クライドは技術尺度のスケーリングを聞かされ驚く。

この宇宙では、当たり前の様に恒星間恒星間に敷設されている

恒星間跳躍用の扉『スターゲート』

それは、あんな見た事もないシールド技術が

楽に作れる技術が無いと実現不能という…


スターゲートは、ネルフィン連合が持っているという

スターゲート製造装置『DSTE』で作れるとは聞いた事があるが

それは装置的にはブラックボックスであり、

挙げ句にスターゲートを全自動で作ってくれるので

ある一種のOパーツ的な存在とも同時に聞いていた。

その為、スターゲートその物の技術構造も、

実際には「謎」だったのだが…


しかし、あまりにもスターゲートはありふれて存在しているので、

製造装置があって、出来てしまうのならそれでいいか…的に

みんなが流してしまうのである。


宇宙生活技術の基本を

古代技術遺産に全面依存しているという観点では、

スターゲートもまた古代帝国の遺産兵器と同じレベルで

Oパーツだったのだが…。


と会話している間に、

ブーミル級は後方に3翼の赤い光の翼を生み出した。


挿絵(By みてみん)


『今度は何だ?』


スクリーンに映る姿に、また疑問を投げるクライド。


光翼推進フォトンブースターの起動ですね…

 多重多体γ線相互作用で、光エネルギーを

 陽子反陽子質量に変えて、運動量を生み出す推進器です。

 亜光速運動中に運動軌跡を曲げる為の推進法ですな…

 空間歪曲推進器(グラップルリアクター)に比べたら

 運動制御が弱いですけれど、ま、亜光速で運動しない相手なら

 あの程度の装置でもいいかなと…』


と、また淡々と語るシード。


『亜光速運動を制御だって?

 えーっと、もう何からツッコンでいいのか…』


クライドは次から次へとシードの口から出てくる

超越技術解説に、呆然となるしかなかった。


ともあれ、光速の5%で飛び込んだブーミル級達は

相対距離15光秒の間を、300秒の時間をかけて

「間」を詰めていった。


そんな亜光速接近物に精神恐慌に陥ったのは、

当然、全軍突撃を敢行したクリークス帝国であった。

レーダーで測定できる反射波から、

亜光速の5%で大きな構造物が接近していると逆算され、

たったそれだけの事で艦隊はパニックに陥っていた。


だが、それでも軍人の本能がそうさせるのか、即座に迎撃態勢に入る。

その未知の物体に、敵艦隊は最も早く着弾する高出力レーザー兵器で

迎撃を開始したのだった。


だが、それらの果敢に行われた赤外線レーザー攻撃は、

ウォーターシールドの波面に屈折、あるいはフレネル反射させられて、

完全に曲げられ、ブーミル級本体に当たる事すら無かった。


挿絵(By みてみん)


他、硬X線レーザーやγ線レーザーを用いての

物質直接変化を引き起こすレーザー攻撃は、

水の分子に受け止められ、光電効果での水素結合破壊を

起こす程度の事しか出来なかった。

周囲がプラズマ寸前の亜臨界流体なので、

ラジカル化して一部が電離プラズマ流体に変わるだけであった。


当然、恐慌化した艦隊は、見境無く

核ミサイルも、反物質ミサイルも迎撃用に発射する。


が、それらの範囲攻撃系ミサイルを探知系で自動認識したブーミル級は、

展開している水バリアの一部をプラズマ化し

シールドから切り離して、複素結晶で空間加速器を形成して

それを亜光速で加速発射して水荷電粒子砲として迎撃した。


そのブーミル級が発射した水荷電粒子の亜光速迎撃弾に貫かれ、

光や荷電粒子砲に比べて圧倒的に足の遅い高速ミサイルは

道半ばで爆発する。


敵艦隊の近傍で、沢山の大型爆発の閃光が広がった。


そんな、自分達の艦隊の近接場で、

核爆発なり、反物質γ線バーストが起きた事で、

クリークス艦隊の動揺は極限にまで達した。


大慌てで、後方推進ビーム放射半径以上の艦間距離を取るように

スラスターを吹かせては艦隊全てが球状に大きく広がり、

範囲爆発系のダメージ距離から遠ざかる。

その回避行動をしたが故に、艦間の密度は更に薄くなった。


互いの艦の距離が離れすぎた艦隊に対し

ブーミル級は足を止めずに内部に突撃していく。


攻撃担当艦の1隻のブーミル級を左右から挟撃されないよう

2隻のブーミル級が側面を守りながら、艦隊の艦間密度が薄くなり

スカスカになった艦列の中を悠々自適に進む。

そして旗艦と特定していた航宙母艦の前に

躍り出る攻撃担当の1隻のブーミル級。


そこで、光翼推進器を全力で作動させ、亜光速5%に緊急制動をかけ

互いが静止しあっているかの様な相対速度に調整して、

攻撃担当艦の1艦が敵艦隊の旗艦に肉薄した。


旗艦である航宙母艦に備えられていた光学兵器が

なけなしの攻撃抵抗をするものの、波動波面化を止めた水バリアの前に、

空しくレーザー兵器は屈折をさせられ、反らさせられる。


挿絵(By みてみん)


その光景で、クリークス帝国の艦隊の者達は

向かってきた、たった3隻の迎撃艦ですら

「手に終えない相手」だと理解するしかないのだった。


そうやって、相手旗艦と対峙した状態を作っては、

シードは最後通帳を突き付けた。


『御覧の通り、貴国の軍事力と、色帝の持つ軍事力には、

 歴然とした差が存在している。

 この戦力差を認識して、尚、全軍突撃を続けるのなら

 宣言通り、殲滅をするもやむなしであるが…

 これが、最後通帳である。

 停戦要求を受け入れ、この戦闘区域から撤退する判断は

 未だに不可能か?』


そうシードは機械口調で問いかけた。

しかしその問いかけに対しての返事は、やはり偏狭なモノであった。


「くどい!!

 我等、クリークス帝国の軍人に、命を惜しむ惰弱な者は存在せぬ!!

 総玉砕を以て、我等、帝国軍人の意気を示すのみ!!

 クリークス帝国、万歳っ!!

 クリークス帝国、万歳っ!!

 目の前のこやつに、反物質ミサイルを発射せよ!!

 この距離なら、奴等も避けられぬわ!!

 我等と共に、道連れにしてくれるっ!!」


と、この艦隊を預かる初老の提督は叫び返したのであった。


『貴君と貴艦は、敬意に値する危険と判断した。

 故に、処刑を即断即決し、実行する。』


敵提督の言葉を受けて、思考空間で眩暈を覚え、

そうシードが言い放った瞬間、

ブーミル級の先端の3つの異様な形の突起から光の牙が生まれ

その光の牙はクリークス帝国の航宙母艦を突き刺し、貫いた。


挿絵(By みてみん)


異様な光の牙に貫かれ、

またそれが、物質達に猛烈な熱運動を与えていき、

敵航宙母艦は一瞬の間の後には、その場で爆発する。


敵艦隊のど真ん中で、激しい閃光が煌めいた。


しかしその爆発ですら、ブーミル級の水シールドは

爆発粒子流を受け流して防ぎきり、

何事も無かったかのように、その場に留まっていたのだった。


『さて、貴艦隊の旗艦、及び、司令官は

 今、名誉の戦死をなされたが…

 貴軍等には、まだ、司令官と(こころざし)を同じくして

 我々と戦って玉砕する覚悟はあるか?

 次の臨時司令部を早急に設定せよ。

 貴軍等の臨時司令部の設立まで、我々は待機する事を約束する。

 また、その臨時司令部が、前司令を続行し、玉砕攻撃を敢行するならば

 その新設旗艦のみを破壊して、司令部の再設定を要求する。

 我々の全軍撤退の要求が呑まれないかぎりは

 これを繰り返し、貴軍等の将兵が完全殲滅されるまで

 撤退要求を続ける事とする』


そうシードは敵クリークス艦隊に伝えた。

それが決め手になった。


停戦と撤退を要求し続け、呑まれなければ

新設司令部のみを破壊し続ける…

―それも今見せた圧倒的な戦力差による攻撃で―

と、言われて、それでも戦意維持が出来れば、

もうそれは人間ではなく完全なロボットか何かであろう。


その点では、まだクリークス帝国の軍人達は

辛うじて「ニンゲン」であった。


臨時の司令部を設置し、臨時司令部が現場判断での撤退を決定すれば

撤退後の自軍基地での軍法裁判によるペナルティは生まれるだろう。

だが、それでも、目の前に突き付けられた猛然とした死、

それも瞬間殲滅ではなく、逐次殲滅されるのが分かってしまえば

目の前にある死の方が恐ろしい。

人間とはそういう精神の天秤が働いて、

少しでも存命出来る時間を伸ばそうとする生き物だった。


その脅迫交渉により、急遽新設された臨時司令部は、

シードの要求を呑み、カタパルト基地に全軍撤退を申し出て、

言葉通り全軍撤退を始めたのだった。



その有様をポカンと見つめるクライド。



シードが想定した、最小限犠牲によっての

クリークス帝国艦隊との迎撃戦。

それは、それで終わった。


犠牲者の圧倒的に少ない、何とも見事な横綱相撲であった。


『まぁ、正直、彼等の洗脳教育が

 まだ人間性を保っていて助かりましたよ…

 こういう譲歩案を出しても、戦力の全てが消えるまで戦い続ける、

 完全ロボット化洗脳という戦闘事例も過去にはありましたからね…

 まだ、彼等も人間だった…って所ですかね…』


そう、プリメーラはその様子を見て、とても哀しそうに笑うのだった。



いやー、この作品を書いて1つだけ良かった事は

この歳になって、めっちゃ色々な事が勉強できる事でしょうか…


いや、今更、勉強したからって何だっていうんだ?って言われたらそれまでですが…


しかし、今まで「曖昧」だった、宇宙真空での挙動

「気圧0なのに、何で金属は瞬時に蒸気化しないんだ?」

という、曖昧だった事…

真空蒸着法とかで、アルミ蒸着してる話とか、

学会の研究報告で聞いていたのに、その温度に疑問を持たなかった自分


そんでもって、水と金属を同じ様なモノと勝手に思い込んで

「水の宇宙挙動(真空挙動)って、こうなるよな…

 あれ? こうなるって事は、金属だったらおかしくね?」

とか、連鎖的に矛盾が発生して、ギブス条件とか、見るのも懐かしい話に遭遇して

物質物性毎に、三相の相転移のあり方が違うという

理論物理学者が聞いたら、

「ハギャー!美しくないんじゃ!そんな個別に起きる物理現象は!!」

という、材料工学系の、対応物質毎に見える、個別特性と泥臭さ…


この話を書くまでに、なんか現役の頃に論文読んでたのと似たノリで

大学系論文を読まないといけないハメになって

(そもそも超臨界流動なんて現在進行系で研究されてるテーマだし…)


「いやいや、適当に考えたアイデアモデルなのに

 これを真剣に実現する方法まで考えて、どうすんのよ!?

 っていうか、こんな変なモノ作ったら、

 実際には超臨界流動は何を起こしてくれるんやろ?」


とか、実実験データが欲しくなったり


「いやー、こんな複雑な事になるんなら

 金属流体にした方が、扱いが楽だったなぁwww

 水並に軽くないとマズイという、別の方からの要求があるんで

 アルミとか軽元素系金属かーーww

 アルミ流体なぁwww」


とか、もうSFなんだか、本当にサイエンスなんだか

わけわかんない、毎日ですww


いやいや、西暦8000年とかいう、すっ飛んだ時代の話なのに

現実物理を持ち込む方が、駄目なんじゃね? 

って物語構造的な批判が出てくるんですけどねwww




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