病室
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しゃりしゃりしゃりしゃり
「いてっ」
…しゃりしゃりしゃり
はっとマフの意識が覚める。
耳にはリンゴを剥く音と聞き覚えのある声が聞こえてくる。
ゆっくり体を起こしてみると、そこは見覚えのない部屋だった。
「あれ。起きた。」
体の左側から、やや低い声が聞こえてくる。
声のした方を向くと、ポカンとした顔のレインがリンゴとナイフを持っていた。
服装は初対面の時とは違って、セーラー服の上から黒いパーカーを羽織っている。
レインの話で聞いたように本当に高校生だったらしい。
「…ここは…」
「病院。昨日倒れたんだよ公園で。覚えてる??」
「…あぁ。そうだっけ…」
よく見渡すと、そこは少し駅から離れた所にある病院だ。
思い返せば昔、来た事がある。
「お見舞い来てくれたんだ」
「ん?うん。」
マフがもう一度レインの方を見るとレインはすでに視線をリンゴに落としていて、真剣にリンゴを剥いている。
しかし、慣れていないのか、リンゴ自体はかなり歪な形になっている。
「仕事の先輩として当たり前ですよ…いてっ」
「ごめん。驚かせたよね」
「あー。それは言うほどかなー。よくある事っていうか…新人が体調崩すのは恒例というか…いてっ。」
レインは力を入れ過ぎているのか、何度も手にナイフが当たっている。
「恒例?」
「まぁ人を殺して平常でいれる人のが少ないわな。」
人を殺した。
そのキーワードが頭の中で児玉するように繰り返し再生される。
また体がどんより重くなる。
自分の手で。生きた人を。殺した。
「…魔法少女って…殺人代行なの?」
マフの質問にレインは
「ん?ちげぇよ?」
と即答する。
レインは相変わらず顔を上げず、言葉を続ける。
「これは逃げないようにするためなんだよ。魔法少女から。」
そう言うレインの顔は少し怒っているように見えた。
その表情が、リンゴが上手く剥けないイライラからくるものなのか、はたまたそれ以外か。
マフにはわからない。
「逃げないように…?」
レインはマフの不安そうな顔をチラッと見ると、リンゴを剥く手を止めて語り出す。
「魔法少女の勧誘の時、お願い事叶えてもらったろ?魔法動物に。あれでまず懐に漬け込む。その後犯罪を犯させてヒヨって逃げないようにする。巧妙だよなー。魔法少女には国も関わってるから、ちゃんと働けばその犯罪を隠蔽してくれる。逃げれば捕まる。別に仕事自体はこんな人殺しまくるのじゃねぇから。」
レインは話終わると、またリンゴを剥き始める。
マフは何も言えなくなってしまった。
しばらくの間、しゃりしゃりと、リンゴを剥く音だけが、病室に響いていた。
マフはしばらく、俯いて黙っていた。
しばらくすると、「はい。完成。」と言ってレインが皿に乗ったリンゴをマフに差し出してくる。
レインがしばらく剥くのに葛藤していたからか、すでにリンゴは薄らと変色している。
「じゃ、また元気になったら仕事でな。」
そういって、レインは座っていたイスから立ち上がる。
すると、同時にガラガラと音がして、病室のドアが開いた。
「あれ…?レイン…?なんでいんの…?」
「え…」
「ん?」
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