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 ソフィア様と僕は似た境遇を過ごしてきた。そのことがきっかけで、僕たちは会話に花を咲かせていた。


「それでキャヴァリアントに襲われそうになったので、空に逃げたんです」


「ハルト様は空をご自由にお飛びになることができるんですか?」


「いえ、ドラゴンの背中に乗せてもらったんです。ラビットドラゴンっていう、うさぎに似たドラゴンなんですけど」


「うさぎのドラゴンもいるのですね!」


 彼女にせがまれて、僕はあの時の騒動のことを話していた。ソフィア様は僕の話に興味津々といった様子で、食い入るように耳を傾けていた。


「上空からの眺めはとても綺麗でした。ねぇ、リサさん」


「え……そうだったね」


 時たまリサさんにも会話を振るのだが、生返事しか返ってこなかった。彼女は未だにソフィア様相手に緊張しているようだ。スタツの街を出発してから、かれこれ数時間は経っているのだが、まだ解れないようだ。


 リサさんの心配をしていると、馬車がゆっくりとスピードを落としていることに気が付いた。最終的に馬車はその場に完全に停止する。


「昼食の時間になったようです。お二人とも馬車を降りて頂けますか?」


 指示通りに僕とリサさんは馬車から降りる。目の前にはどこまでも続く平原が広がっていた。上空には青空が広がっている。


 僕たちが通ってきた道以外は、緑が一面に広がっている。名も知らない背の低い草が、風に靡かれて、ゆらゆらと揺れている。

 

 雄大な景色を前に、僕は肺いっぱいに空気を吸い込んだ。心が落ち着く優しい香りが体に溢れてくる。


「綺麗な景色ですね……」


「ハルト様の目には、私たちが見慣れた景色も輝いて見えるのですね」


 ソフィア様が僕に向かって穏やかな笑みを浮かべていた。


「昔はベッドの上だけが僕の世界でしたから。他の人にとっては何気ない光景かもしれませんけど、僕にとっては真新しい景色なんです」


 やっと自由に動かせる体を手に入れたんだ。僕はこれからも、こんな美しい光景を目に焼き付けていきたい。その為に、この世界を旅して周りたい。


「ソフィア様も似たような経験はありませんか?」


「……そうですね」


 暗い顔を浮かべ、顔を背けてしまうソフィア様。似た境遇の彼女なら、同意を得れると思って質問してみたのだが、反応は悪かった。


 もしかしたら、苦しいときのことを思い出させてしまったのかも知れない。


「すみません……嫌なこと思い出させてしまったようで」


「いえ、ハルト様のせいではありません……」


 ソフィア様は苦虫を潰したような顔を浮かべる。怒っているような、悲しんでいるような、複雑な表情だった。


「ソフィア様、昼食の用意が整いました」


 護衛の騎士の一人が、ソフィア様に声を掛ける。その声を聞いた彼女は普段通りの、柔和な顔つきに戻った。


「ハルト様もご一緒に昼食はいかがでしょうか?」


 ソフィア様の視線の先には、いつの間にかテーブルとイスが並べられていた。簡易的なものではなく、しっかりとした造りのものだが、一体どこから取り出してきたんだ。


「お言葉に甘えて――」


 言葉の途中で、左手首をリサさんに鷲掴みにされた。振り返って彼女の顔を見ると、左右に首を振っていた。どうやら、ソフィア様の昼食の誘いは遠慮したいようだ。


「護衛ということだったので、自分たちの分は用意してきました。ですので、今回はご遠慮させていただきます」


「わかりました。昼食の間はごゆるりとお過ごし下さいませ」


 ソフィア様はリサさんの方に軽くお辞儀をすると、騎士たちが用意したテーブルの方に向かった。


「これでやっと一息つける……」


 リサさんは口からため息を漏らし安堵の表情を浮かべる。


「そんなにソフィア様といるのが嫌だったんですか?」


「嫌じゃないけど……相手は王族だよ? 普通に接しているハルトの方が、私は不思議で仕方ないよ……」


 リサさんは舗装された道から外れて、平原の方に移動する。


 マジックポーチから、レジャーシート代わりの布を取り出して、地面に敷いた。その上に今日買ったばかりのサンドイッチを並べていく。


 僕も用意された場所に移動し、座ってからサンドイッチに手を付け始めた。


「外で食べる食事って、美味しいですよね」


 レタスのような野菜も、心なしかシャキシャキしているような気がする。なんで外で食べる料理って美味しく感じるのだろうか。


「そうかな? 私は室内でゆっくり食べる料理の方が美味しいと思うな。街の中だと魔物に襲われる心配もないし」


 冒険者として、外で食べることに慣れているリサさんは真逆の意見だ。確かに、魔物が出没する場所では呑気に食事をしている余裕などないだろう。


「ふぅ、美味しかった」


「えっ、もう食べたんですか?」


 呑気に食事している余裕はないとはいえ、いくらなんでも早すぎるだろう。食事を始めてから、まだ数分も経ってない。


「ちょっと物足りないな」


 自分の昼食を食べ終えたリサさんは、僕の手元のサンドイッチを睨みつけていた。物足りなかったとはいえ、僕のご飯を狙うのは辞めて欲しい。


 最近気が付いたことだが、リサさんが見た目に反して食べる。あれだけ食べているのに、スラっとしているのは不思議で仕方がない。


 そんな大食いのリサさんは、サンドイッチだけではお腹が空いているようだ。


「だったら、アレを試してみますか」


「何なに? 何か美味しいものがあるの?」


 彼女は両目を輝かせて僕に近寄ってくる。食べ物のことになるとキャラが代わりすぎではないだろうか。


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